ミケとみかん


小学5年生の夏。
もうすぐ秋に近づく頃の夏。
夕日がいつもよりも凄く赤くて、周りはオレンジ色に染まっていた。
僕は小さな命を自転車のカゴに入れて、家の目の前の坂道を登っていた。
小さな命は目をうるうるにさせて、僕を見つめる。
ただじっと。僕を見つめて、目が合うと「ニャー」と可愛く鳴くのだ。
それが愛おしくてたまらなかった。

学校帰りの姉に偶然出会い、僕の自転車のカゴにある小さな命を見つると、「一緒に飼ってもらえるか、お母さんに言おう」そう言ってくれた。
姉は、少しだけ困った顔をさせたがすぐにそう言ってくれた。
僕は嬉しくてたまらなかった。

元々、僕の家には猫を一匹飼っていた。
名前は「ミケ」。
三毛猫だから「ミケ」。
気難しい性格のミケは初めて二匹目を飼おうとお試しでやってきた別の猫に喧嘩をしかけた。
幸い、その猫は怪我などを負う前に僕が仲介に入ったけれど。
それからは、ミケがいるなら二匹猫を飼うなんて無理ね。という話になった。
正直、その飼おうとしていた猫を僕は凄く可愛いと思っていたから残念だった。
それに、僕自身、ミケに嫌われているから構ってもらえない。
そんなこんなで、僕はもう一匹動物を飼いたかったのだ。

家に着くと、僕はそっとカゴから小さな命を抱きしめた。
小さいのに、あったかくて、夏の夕方には暑すぎるほどだった。
きっと、家族が良いと言ったとしても、ミケはダメだと言うだろうな。
お姉ちゃんも、僕もそう思っていた。
お母さんに相談をしたら、「ミケ次第ね」と言われた。
初めての御対面をした。
ミケは知らないフリをしてじっと猫座りをしてる。
そのコはうろうろ周りを見渡したあとに、ミケに気づく。
そろりそろり、小さいそのコはゆっくりと、ミケに近づく。
僕とお姉ちゃんは身構えた。
こんな小さい子、ミケが本気でパンチしたら一たまりもない。

そのコはミケの匂いをフンフンと嗅いだ後、ポスっとミケの背中に身を寄せた。
ミケは、本当に何事もなかったかのようにそのままだ。

「これは・・・。成功したってこと???」

お姉ちゃんと僕は目を合わせた。

初めてミケが自分以外の猫を許したのだ。
とても不思議な気持ちになった。
その後は、そのコのために病院に行く事にした。
病院に行くとそのコの名前は何かと、看護師の人に言われた。
僕は元気に「みかんです。」そう言った。


ーーー

ずっと書いてみたかった小説を少しずつ連載していこうかなと思います。
気ままに書くので悪しからず。
まずは、出会い編でした。



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