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一般工具で再現できる製品仕様は「公然と知られていない」といえず、営業秘密にならないとした判例

対象商品

「光通風雨戸」 施錠したままで通風できる。

グーグル画像検索「光通風雨戸

事実の概要

  • Tは、光通風雨戸を開発、販売していた。

  • 代理店は、Tの販売代理店であり、広島地区において、光通風雨戸を販売していた。

  • Tで製造上のトラブルがあり光通風雨戸の納品が遅れた。

  • 代理店は、Tに、光通風雨戸は広島地区では代理店で製造して販売してはどうかと提案した。

  • Tはこれに応じ、共同で光通雨戸の販売を行うこととして、仕様や図面、仕入先の情報を伝えた。また、それらを第三者に開示しないとする秘密保持契約が締結された。

  • その後、代理店が一部の代金を支払わなかったため、共同販売の契約は解除された。

  • その後、代理店はTの部品の金型製作委託先であった工場に金型製作を依頼するなどして、「セキュアガード」という名前で、光通風雨戸と同じ商品の販売を開始した。

  • Tは、営業秘密を不正利用している、として不正競争防止法違反で代理店訴えた。

Tの主張

  • 代理店は、製造に関する情報を秘密にすると合意していたのに、これに違反して営業秘密を不正利用している。

  • 光通風雨戸の部材や部品の形状は、性能の向上のため様々な工夫が施されている。さらに、光通風雨戸の製品から製品の図面を起こそうとすることは多大な労力が必要であり、これは非公知性があるといえる。

関連条文

不正競争防止法2条1項 4号、7号
この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。
四 窃取、詐欺、強迫その他の不正の手段により営業秘密を取得する行為(以下「営業秘密不正取得行為」という。)又は営業秘密不正取得行為により取得した営業秘密を使用し、若しくは開示する行為(秘密を保持しつつ特定の者に示すことを含む。
七 営業秘密を保有する事業者(以下「営業秘密保有者」という。)からその営業秘密を示された場合において、不正の利益を得る目的で、又はその営業秘密保有者に損害を加える目的で、その営業秘密を使用し、又は開示する行為

不正競争防止法 2条6項
この法律において「営業秘密」とは、秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないものをいう。


裁判所の判断

代理店は営業秘密を不正利用していない。

  • 光通風雨戸は精緻なものではあるが、ノギスなど一般的な工具を用いれば製品から再生することが容易なものである。代理店が秘密情報から作ったものではなく、製品から再生したものと考えられる。


ノギス(ウィキペディアより)
  • 市場で流通している製品から容易に取得できる情報は、「公然と知られていない」と言うことができない。

  • 工場はTらに無断で代理店に同製品の金型を納品しているが、Tと工場の秘密保持契約の存在を裏付けるものはない。つまり、金型は「秘密として管理されている」とはいえない。

  • 代理店は営業秘密を持っていたとはいえず、不正競争防止法違反に該当しない。

得られた教訓と感想

  • 一般の工具で図って製品から再現できるものは、営業秘密には該当しない。

  • 仕様等について、下請けときちんと秘密保持契約書を取り交わしておかないと、「秘密管理性」に欠け、営業秘密と認められない。

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail7?id=81539

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