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「支払停止」の言葉の意味について言及した判例
登場人物
T氏・・・経営が苦しくなり破産した
K氏・・・T氏にお金を貸し、経営難を感じ取り、仮担保を設定した。
S弁護士・・Tから相談を受けた
X弁護士・・・T氏が破産後、財産を管理することになった、破産管財人。
事実の概要
T氏は、建設請負、不動産業を行っていた。
T氏は資金繰りが徐々に苦しくなり、4月ころ、1500万円をK氏から借りた。
9月末頃、T氏はその後ますます経営状況が悪化。知り合いのS弁護士に電話し、債務整理の方針などについて相談したい、と告げた。
2,3日後、K氏はS弁護士に連絡。「T氏が相談しているそうだが、どうする方針か」と質問し、S弁護士からは「相談を受けただけで、具体的な方針は決まっていない」との回答があった。
10/8 T氏はS弁護士と面談し、破産の申し立てをすることで方針を決めた。
10/12 K氏は、T宅を訪問し、T氏同意のうえ、貸している1500万円の担保として、T氏がもっている不動産に、仮登記手続きを行った。
10/14 T氏は自宅に「今後はS弁護士が管理する」との張り紙をして、家を出た。
10/15 S弁護士がT氏の破産を申し立て、10/29T氏は裁判所から破産宣告を受けた。
T氏の破産管財人となったX弁護士は、T氏は10/8時点で破産の方針を決めているから、K氏の仮登記は破産法の「支払の停止」後のものであるとして、K氏の仮登記を否認する登記手続き請求を求めて訴えた。
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関連法令
破産法162条 特定の債権者に対する担保の供与等の否認
次に掲げる行為(既存の債務についてされた担保の供与又は債務の消滅に関する行為に限る。)は、破産手続開始後、破産財団のために否認することができる。
一 破産者が支払不能になった後又は破産手続開始の申立てがあった後にした行為。ただし、債権者が、その行為の当時、次のイ又はロに掲げる区分に応じ、それぞれ当該イ又はロに定める事実を知っていた場合に限る。
イ 当該行為が支払不能になった後にされたものである場合 支払不能であったこと又は支払の停止があったこと。
ロ 当該行為が破産手続開始の申立てがあった後にされたものである場合 破産手続開始の申立てがあったこと。
判例 支払の停止について(大判昭15年9月28日)
債務者が資金欠乏のため債務の支払いができないと考えて、その旨を明示的または黙示的に表示する行為をいうのであり、その資金の欠乏とは、債務者が債務の弁済をなすべき資力がなく、しかも弁済の猶予を受け、または弁済をするに足りるべき融通を他から受ける信用もないことを意味する。
裁判所の判断
仮登記は認められる。K氏が破産について知っていたかは、高裁であらためて精査する。
支払の停止とは、支払いできないことを明示的または黙示的に外部に表示することをいうものと解すべき
Tは、10/8時点では、破産の方針を決めただけで、破産を外部に表示する行為をしたとはいえない。
まとめと感想
「支払停止」とは、支払できないことを明示または黙示で外部に表示すること
明示とは・・・書面または口頭による通知、店頭掲示、広告。
黙示の明示とは・・・・閉店、逃亡、などとのこと
たとえば、売掛金がある業績の悪い取引先が弁護士に相談をしていることを知った場合は・・・
「支払停止」には該当しないので、対応の選択肢がある
「支払停止」には該当しないので、契約書の「支払停止の場合契約を解除する」との文言だけでは、契約解除などをすることはできない‥?
最判昭60年2月14日
(参考文献)金融商事法務1100号82頁