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「訴訟の合意管轄は〇〇とする」は調停には関係なし、とされた事例
事実の概要
レンタル会社は、建設会社とレンタル契約を締結し、建設機械を貸し出した。
建設会社がレンタル料を支払わなかったので、レンタル会社は簡易裁判所に調停を申立てることとした。
契約書には下記条文があった。
第○条(合意管轄等)
甲乙は、この契約について訴訟の必要が生じたときは、大坂地方裁判所又は茨木簡易裁判所を管轄裁判所とすることに同意します。
レンタル会社は、条文の「訴訟」に調停も含まれると理解して茨木簡易裁判所に調停の申立をした。
建設会社は、条文はあくまで訴訟に関する管轄合意であって、調停に関する管轄合意ではないと主張し、建設会社の本社を管轄する大津簡易裁判所へ調停の移送を申し立てた。
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関連条文
調停事件は、特別の定めがある場合を除いて、相手方の住所、居所、営業所若しくは事務所の所在地を管轄する簡易裁判所又は当事者が合意で定める地方裁判所若しくは簡易裁判所の管轄とする。
裁判所の判断
訴訟の合意管轄は調停には関係なし。調停は大津簡易裁判所で行う。
契約書条文は文言上、訴訟についての管轄を定めるものである事は明らかである。
上記のように解釈すると、希望の場所で調停を行うためには、新たに管轄合意を締結する負担を負うことになるが、合意による紛争解決を図るという調停の目的から考えれば、特段の不都合はない。
(備忘メモ)デフォルトルール
訴訟(民事訴訟法5条)
訴訟提起時の、被告の住所地(住所、居所)が基本
財産上の訴えにおいては、義務の履行地
手形、小切手の支払いの訴えにおいては支払地
業務に関する訴えは、被告側の事務所又は営業所の所在地
不法行為については、不法行為地
不動産に関する訴えは、不動産の所在地
民事調停
申し立てられた側の住所地を管轄する裁判所(民事調停法3条1項)
仲裁
申し立てられた側の住所地を管轄する裁判所(仲裁法5条)
得られた教訓と感想
調停の予定があれば、合意管轄を別に定めておく。
平成29年9月29日決定 平成29年(ソ)第20号
#合意管轄