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「会社更生となった場合、契約解除」の条項は無効とした判例
事実の概要
X社は、597万の機械を、30分割毎月払いローンでD社に販売した。契約には以下記載があった。
手形不渡り、会社更生の申立の原因となるべき事実が発生したときは、催告なく契約を解除することができる。
D社は379万円支払ったところで、経営不振となり、自ら会社再生の申立を裁判所に行った。
裁判所はD社に一切の債務の弁済を禁止する保全処分を命じたうえで、更生手続の開始を決定した。この結果、X社がD社からすでに渡されていた約束手形も、支払拒絶され換金できなかった。
X社は契約に基づき契約を解除すると通知して、D社の管財人に機械の引き渡しを求めて訴えた。
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関連条文
民法第540条(解除権の行使)
契約又は法律の規定により当事者の一方が解除権を有するときは、その解除は、相手方に対する意思表示によってする。
民法第541条(催告による解除)
当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。
会社更生法(目的)
第一条 この法律は、窮境にある株式会社について、更生計画の策定及びその遂行に関する手続を定めること等により、債権者、株主その他の利害関係人の利害を適切に調整し、もって当該株式会社の事業の維持更生を図ることを目的とする。
裁判所の判断
会社更生の場合契約を解除するとの条項は、会社再生の目的から考えて無効。
本件のように、更生手続開始の申立があった会社で、裁判所から債務弁済禁止の保全処分を命じられたときは、会社は債務を弁済してはならないとの拘束を受けている。
この場合、履行が遅れること理由として契約を解除することはできない。
また「会社更生の場合契約を解除する」条文は、会社更生の目的である、関係者の利害を調整しながら、事業の維持更生を図ることを害するものであり、効力を肯定できない。
感想
会社更生だけでなく、「破産で解除」も同種の理由で無効と考えられています。「民事再生で解除」は別判例(最判平成20年12月16日)で無効とされています。
では何のために「破産、会社再生の場合解除」と契約書に書くのか?
よくわかりません。調べた範囲では以下のような意見も見られました。
実務上の確立した考えがあるわけではないし、解除を主張した場合裁判にならないで受け入れられることもあるかもしれず、一定効果がある。
特に理由なく書かれているものなので、今後は削除したほうがよい。
最判昭57年3月30日 裁判所HP