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通信制大学生が院試対策のために勉強会を開いてみた|臨床心理学
※2024年9月に院試を終えた社会人通信制大学生の記録です
院試の情報を収集しているときに、東大の院生さんから「勉強会」の存在を聞いたのがことのはじめでした。
曰く、大学院を受験する学生で集まって、『よくわかる臨床心理学』の中から担当ページを決めて発表しあう。それで、院試に頻出のこの本の理解をお互いに高め合うのだ、と。
また、学芸大の院生さんも「勉強会」について聞かせてくれました。
曰く、院試に必ず出る「研究計画」の問題については、5人くらいのグループで同じ問題に取り組み、それぞれが自分の考えた答案(=研究計画)を持ち寄る。その根拠や方法を発表しあって、いいところを吸収しあったり、より的確に答案が作成できるように検討し合った、と。
これ以外にも、いろいろな場所で「学部生同士の勉強会」「みんなで院試対策」という話を聞き、私は自分でも勉強会を開きました。
この記事では、私が主催となった勉強会ではどんなことを取り扱っていたか、勉強会のメリット・デメリットは何かを示します。
はじめに
ここでは私が主体となって開催を決めていた勉強会の概要についてだけを扱います。
勉強会には勉強仲間がいます。仲間となってくださった方々には足を向けて寝られないほどの感謝と愛を抱いております。それゆえ、仲間とのやりとりについてはこの記事では触れません。記事を読んでくださる方は、もしかしたら「具体的にどうなったの?」「人間的な往還が欠けているな」と感じられるかもしれません。その部分が、私にとって仲間との時間であり、共有不可能なものであるとご理解くだされば幸いです。
あと、多少の記憶違いがあって、回数とか時期とかが違うかもしれません。仲間がこの記事を見てくださったら、不正確さを笑われるような気がします。大雑把にお示しすることをお許しください。
1、生勉強会
2023年10月|勉強会のテーマ3つ
私は偶然近所に住んでいることがわかった通信制大学のお友達とお会いしました。食事をご一緒する中で、院試に向けての勉強をはじめたが仲間がいない…という話になり、そこで思い出したのが東大の院生さんが言っていた「『よくわかる臨床心理学』を発表しあう」という勉強会でした。
その場で「勉強会をご一緒したい」と提案すると、快くOKをいただきました。本当に懐の深いお方で…
勉強会の内容についてはその場で
1)よくわかる臨床心理学から自分でテーマを選んで発表しあう
2)X大学大学院の心理学問題(確か2〜3問)を解いてきて、答えを見せあいながら解答を検討する
3)X大学大学院の英語の問題(1年分)を解いてきて、いい感じの答案を検討する
と決め、1ヶ月後にまたお会いして1)〜3)をおこなうとお約束をしました。
勉強会の場所は、地区センターみたいなところでした。確か1、2回目はレストランで昼食をとった流れでそのまま勉強会に入り、3回目以降は広い談話室の1座席を使って、おやつをつまみながら勉強会をしていました。
自分での準備
それからお約束の日まで、私はいろいろな書籍をあさって
1)の資料(パワポとレジュメ)を作成し、
2)の答案を作成しました。
今思い返すと、2)はかなりキツくて、放り出しそうになりながら問題を解いていました。1)は結構好きな作業だったように思います。どちらにしても、勉強仲間と共有できることが嬉しく、力を入れてレジュメにまとめました。『よくわかる臨床心理学』は、どの大学の学習の基礎にもなり得るので、発表会形式で突っ込まれても答えられるくらい深く理解しておいて損はないだろうと私は思います。
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3)は……英語がとても…好きではないので…非常に苦しんで解きました。最初の和訳は今でも覚えているんですが、ひどかったです。院試直前期に解き直したときに、「あーレベルアップしたな」と思うのに一役買ってくれました。
2回目の勉強会
勉強会2回目(確か…)では、各自1)、2)、3)を順番に発表しながら、あーでもないこーでもない、むずかしいねーなどと話し、1ヶ月の間に得た院試情報などを共有しました。
確か5時間くらい勉強会をしていたと思います。
新たに1)、2)、3)で扱う項目を決めて、3回目の日程のお約束をしておわかれしました。
毎回このようなかたちで、自分たちの準備を出し切り、次回扱う範囲を決めて、日時を決めて…という感じで回数を重ねていきました。
生の勉強会のメリット・デメリット
◯メリット
毎回、5時間前後集中して勉強するのはとても刺激的で充実した時間でした。それに加えて、準備したことは仲間と共有するので、「人に伝える理解を重ねる」という経験はかけがえのないものになりました。
論述問題は、用語の暗記とは異なり、系統だった理解とわかりやすい言葉選びが欠かせません。インプットだけでなくアウトプットが必要だと身にしみて理解し、その練習ができるというのは、生の勉強会の大きなメリットだと思います。
◯デメリット
勉強会仲間とお互いの生活がある中で、生の勉強会のスケジュールを確保するのは一定の工夫が必要です。偶然おうちが近くてお会いすることが叶いましたが、地理上の条件、時間的条件がないと実現できないというのはデメリットであろうと思います。
生の勉強会はその後、いろいろな条件が合いにくくなり、下に書くオンライン勉強会に吸収されました。
2、オンライン勉強会
2024年3月|先輩から勉強会の運用について話を聞く
会計年度が変わり、いよいよ本腰を入れて秋の院試対策をせねば〜と考えていました。
3月のスクーリングでとあるお友達に勉強会をもっと頻繁にやりたいんだよねーと漏らしたところ、4月から大学院に通われるという通信制大学の先輩をご紹介いただきました。
先輩に連絡をとり、「オンライン勉強会」の進行方法などをお尋ねしました。そこでうかがった先輩の勉強会のスタイルは
a)Discordを使う
b)週1回、1〜2時間
c)各自の勉強した内容や過去問への取り組みを15分程度で発表して、他の仲間から質問を受ける
d)英語の長文問題を主催者が準備して制限時間内で解く
というものでした。この項目以上に詳細な内容や進行、勉強会の意義やご信念などもお話しいただき、非常に励まされると同時に、先輩の「本気の取り組み」の片鱗を見せていただいて背筋の伸びる思いでした。
2024年4月|オンライン勉強会を始める
先輩の話から、自分でできる/必要な要素を取り出し、私なりの勉強会の方針を決めました。
a)LINEかZoomを使う
b)週3回
c)うち2回は用語要約の練習を行い、1回は『よくわかる臨床心理学』から任意の項目をまとめて発表する
この勉強会に応じてくださった仲間は一人でしたので、はじめはふたりきりでの勉強会になりました。仲間と相談して
d)朝9時ごろまでに、キーワードを各人2個ずつ出し合い、それを解いたものを画像にしてLINEにあげる。ふたりとも答案を出せたら、LINEの音声通話でポイントを話し合う。音声通話はおおむね40分〜1時間程度で終わり。
e)『よくわかる臨床心理学』の発表時はレジュメを当日朝までにあげておき、Zoomで画面を共有しながら発表しあう
という流れになりました。
また、ふたりの志望校・受験計画を加味して
f)勉強会は8月まで行う
こととしました。
勉強会の変化
その後、仲間が増えて3人になる回もあったり、2人の回が続いたりと、人数は「最大3人」で勉強会がほぼ毎週続きました。
また、内容としては過去問を解く必要性から
・週3のうち1回は大学の過去問を一緒に解く
に変わったり、
・(旧)週3回→(新)週1回用語要約、週1回過去問検討会
となったり、
最終的には週1回の過去問検討会だけになったりしました。
勉強会のメリット・デメリット
◯メリット
過去問検討会のおかげで、手元にあったX大学大学院の過去問5年分はすべて検討し終わることができました。これは本当に大きかったと思います。
過去問の答案を見せ合う時には、自分なりにプロットや根拠となる知識(教科書・論文など)を調べて回答がこうなった理由をできるだけ示すようにしていました。
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そういう「仲間に見てもらうんだ」という気持ちと工夫が、過去問への理解の解像度を爆上げしてくれたと私は感じています。仲間に質問をしてもらって、わからないことを一緒に悩んだり調べたりしたのも、答案作成力を培うには必要な時間だったと思います。
また、勉強仲間のご提案のおかげで他大学大学院の問題も解く機会があり、X大の院試の特徴をより明確に把握できたのも、勉強の効率を上げてくれたように感じます。用語要約の練習なんかがまさにそうですけれど、仲間がいれば自分では目に留まりにくいキーワードも選んで出してくれるのがお互いに良かったんじゃないかなとも思いました。
答案の角度が違うという話で共通するのですけれど、同じ問題を解いていても人が違えばまとめ方や論理の方向性も個性が出るんですよね。
正答・誤答の区別ではなくて、「この部分を〈用語◯◯〉の説明で使う理由」とかを会話の中で突き詰めていって、大学院ごとの特性を考察したり、自分がつい目を向けがちな特性を自覚したり、という時間は、とても貴重でした。
論述/要約の区別なく、自分自身の答案作成における強み・弱みを自分で理解しておくというのは大切です。特に強みを伸ばして、本番の答案は作成されます。
◯デメリット
生の勉強会と同様、予定を合わせることについては「厳密さ」よりも「柔軟さ」が必要です。
私の方の理由で病院実習なんかでまるまる2週間勉強会ができない時は、物足りなさも感じましたし、勉強会仲間には申し訳ないな、とも思っていました。
一方で、家族との時間をないがしろにするわけにはいかないけれど、勉強会を行うとどうしてもそういう「プライベートな時間」と「勉強の時間」の区切りをつけていく感じはあります。オンラインにすることで、よりプライベートな時間に勉強の時間が食い込んでいくことになるので、その点の線引きだったり、仲間同士の感覚の慮りだったりは必要なのかな、と思いました。侵害された・したという話ではなくて、そういう配慮を必要とする勉強デザインが「オンライン勉強会」なのだと思います。
あと、オンラインでは成立しにくい非言語的なコミュニケーションがあるので、「サポーティブなやりとり」かつ「お互いを伸ばしあう検討」のバランスにはたえず気を配る必要があります。
この手のやりとりが私は苦手なので、きっと仲間には負担をかけてしまっただろうと反省する部分です。それを含めて、「気を配る必要がある」し、非常に難しい部分であろうと思います。
サポーティブになりすぎると、明らかな欠点があっても放置することになるし、譲り合いすぎたり勉強会が依存的なものになるとやりとり自体が活発でなくなります。逆に、お互いを伸ばし合おうとしすぎると、揚げ足取りみたいなやり取りになるんじゃないでしょうか。
私は、勉強会の運営自体に悩むほどの余裕がありませんでした。ですので、ちょうどいい塩梅がお互いに(おそらく)わかっている人との勉強会になったことが非常に幸運でした。新規開拓で勉強仲間を探すのは、私には困難だったと思います。
3、勉強会を開いて良かったこと まとめ
勉強会を開いてよかったことを2つにまとめます。
一つは過去問を根拠のある、人に見てもらえるスタイルで検討しあえたことです。ともすれば独りよがりになりがちな過去問検討を、「仲間に見てもらうんだからあと一歩、もっと明確な根拠となる文献を見つけよう」と粘れたのは、大きな力になりました。お互いの力になろうとすることは、巡り巡って自分の論述力になったように思います。
もう一つは、というかこちらが一番大きいんですけれど、週に一回でも院試を志す仲間とおしゃべりできるというその時間が、かけがえなくよかったです。
心理学で考えたこと、日常で気にとまったこと、院試への不安や、分かち合いたいほど良い事柄を実際に仲間と共有できること……勉強会があったからこそ、院試に対するネガティブな感情を持ち続けることなく、切り替えながら取り組めたのだと感じます。
オンライン勉強会について教えてくださった先輩も、院試が間近になると勉強会の集まりで「おしゃべり」が多くなっていたことに言及していました。そういう日常的なつながり、こり固まらないやり取りが、院試受験生の心身を支えてくれるのかもしれないですよね。
以上、勉強会の話でした。
これから2025年度の秋入試の準備をしようとする方、勉強会のはじめどきかもしれません。
2024年度の冬の入試に挑む方、寒くなると過去問検討期に突入しますね。ご自身らしいお取り組みになりますように。心から応援しています。