「ガマ口財布」 はっち
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小学校低学年の頃、ビーズ刺繍が施されたピンクのガマ口財布をおばあちゃんにもらった。小鳥だったか、何かの絵柄がかたどられていて、可愛くてお気に入りだった。それまでビニールの財布を使っていたが、なんかちょっとお姉さん気分に浸れる、そんな財布だった。
ところが、そのガマ口が堅くて開かない。新しいせいもあるのだろうが、子どもの力ではびくともしなかった。だから、開けるときは母に開けてもらう。せっかくお姉さん気分になれたのに、自分で開けられないことが悲しかった。いちいち開けてもらわなければいけないのが面倒で、昔のビニール財布に戻し、自分で開けられるようになるまでとっておこう、と箱に入れてしまっておいた。
自分で開けられるようになったのは、小学校を卒業する頃だった。しかし、その頃には小銭だけでなく、紙幣も使うようになっていたので、二つ折りの財布を使っていたと思う。せっかく開けられるようになったので使いたくてたまらなかったが、紙幣を納めるには4つくらいに折らなければならない。二つの財布を使うのも面倒だ。諦め、また箱に入れてしまっておいた。
活躍の場は、大学生の頃にやってきた。自分の車を手に入れたので、有料道路の料金支払いの時にすぐに払えるよう、車においておく小銭入れとして使うことにした(その頃はETCなんてなかった)。ちょっとコンビニに立ち寄ってお茶を買う時にも持ち歩ける。ピンクのビーズも心なしか、つやつやしていた。