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「ふでばこ」 はっち

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Photo by Ramakant Sharda on Unsplash

小学生の頃、唯一個性をだすことができるアイテムがふでばこだった。服や靴やバッグや、あるいは自分の部屋の家具もすべて、大なり小なり親の意見が反映される。「小学生としてふさわしいか」「長く使えるか」「女の子らしいか」など、多分なんらかの基準があったと思うが、ふでばこだけは、「好きなものを選んでいいよ」と完全に任されていた。だから、どれにしようかと随分悩んだり、汚れたりしないようマメに手入れをしていた。

はじめに選んだふでばこは、仕切りがついていて、消しゴムや鉛筆を収める場所が決まっている箱型のものだった。鉛筆削りや鉛筆のキャップが備え付けられている、機能過多なふでばこだ。今もあるかもしれないが、そういうふでばこが流行っていたのだ。だが、それは大きくて重く、何かのボタンを押すと何かが飛び出てくるような仕掛けもすぐに飽きた。

次に選んだのは、金属でできたケースだ。水色のコンパクトなふでばこで、サンリオの何かのキャラクターが中央にあるだけの、割とシンプルなデザインだった。それまで、持ち物といえば赤とかピンクとかばかりだった私にとって、水色のものは目新しく、大人になった気がした。

小学校の高学年になると、蛍光マーカーを何色も揃えてノートをいかに綺麗に彩るか、ということに注力するようになった。そうすると、これまでのペンケースには入りきらないので、布状のポーチのようなふでばこ(もはや箱ではないが)になった。

これ以外にも、そろばん教室に行く時のふでばこや、習字教室に持っていくふでばこなど、いろいろあったような気がするが、どれも自分で選んだ。洋服もそうだが、自分が一生懸命選んだものは全て、30年以上経っても憶えている。

大人になった今となっては些細なことだし、「ふでばこなんてなんでもいいよ」と言えるが、子どもの時に「何か」を選ぶ経験ができたことは、今ずいぶんと役に立っていると思う。

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