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あだ名 3

この話はあだ名によって深く傷つけられたであろう僕の友人のあの時のあの無念を忘れないよう、心に刻む為に書く。

僕の友人というのは小学1年から仲の良かったブリオだ。そもそもブリオと言うあだ名もどうかと思う。しかし、なぜブリオがブリオになったのかについてはここでは割愛させていただこう。

さて、ブリオである。
ブリオは6年生の時生徒会長をやっていた。
ブリオは責任感が強く、忍耐強い男だ。
その点に於いて皆から一目置かれる存在であった。
だから、生徒会長のついでに我が小学校の世界最弱のサッカーチームのキャプテンを押し付けられてしまった。しかもキーパーまでも。

サッカーをやっていた方でなくても想像はつくと思うが世界最弱のサッカーチームのキーパーはそりゃあ地獄である。だってめちゃくちゃ点を取られるんだもの。

私たちの頃は小学校のサッカーの試合は20分ハーフだった。
我らが世界最弱のサッカーチームはたった40分の間に信じられないような大失点をする。
それこそ5点、6点は当たり前だ。
40分間に5点と言う事は8分に1点だ。
8分に1点取られる試合となるとほぼ全員が自軍ゴール前であたふたするだけで試合は終わるのだ。

それのキーパーである。
大忙しと言うかずっと主役である、しかもずっと虐げられる。

1番の大敗は10-0だった。4分に1点。
対戦チームも点が入っても何も喜びはしないし、僕たちも何もリアクションは無い。

サッカーの試合で4分に1点取られると不思議と慣れてくるものだ。そしてその慣れが更なる追加点を許してしまうのだった。
相手もだんだん思い切ったところからシュートをしたり、普段なら挑戦しないようなトリッキーな技を仕掛けてくる。
そしてそれが面白いように決まっていく…

それから1週間後。
6年生の林間学校があった。

山奥の区の施設で行われる、6年生にとっての修学旅行だ。
みんなで山に登って弁当食べて、BBQして、キャンプファイヤーして最強に楽しい思い出になるハズだったのに…

同じ期間でその施設を利用して林間学校をしていたのは、なんと1週間前に我々から10点をもぎ獲ったあの小学校だったのだ。

言い知れぬ劣等感に包まれる私。いや、きっとチームメイトも同じ気持ちだったと思う。

心なしか自分達のキャンプファイヤーの火が小さく見える。BBQで焼いた肉、あれは魚肉ソーセージだったんじゃないのか。今日登ったあの山も低かったんじゃないのか。
惨めな気持ちが心を覆っていく。

唯一の救いはキャンプファイヤーの灯りの他は夜の闇に紛れている事。

その時だった。

あ!10点キーパーだ!10点キーパーいるんじゃん!10点キーパー!なぁ!10点キーパー!

ブリオが見つかってしまったのだ。

嗚呼!何も言い返せないで立ちすくむブリオのキャンプファイヤーのオレンジの光に照らされた横顔の美しさよ!

私たちはひたすら沈黙するしかなかった。

帰りのバスで。
何も事情を知らない先生が、

おい、S(ブリオの苗字)!
お前、〇〇小学校の生徒に10点キーパーって呼ばれてたけどそんなにキーパー上手くなったのか?良かったな、頑張ってたもんなぁ。

先生、その10点は満点の意味じゃなくって。
もちろん言えなかった。

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