見出し画像

ギリシャ旅行記

7月19日、世界中のWindowsが機嫌を損ね、ユーザーがその画面と同じように真っ青になったその日、ギリシャへ飛び立った。

この旅行は、新婚旅行の一環であり、ギリシャを目指した理由は、「ヨーロッパ旅行をするなら、一番近いギリシャ(ないしその近隣国)に降り立ち、LCCで旅をするべきで、これをしない人間は、ただの怠慢であり、コスト意識も低く、きっと会社でも無駄な仕事を生んでは解消して、生産性のない働き方をしているに違いない。」などというどこかのYoutuberの助言があったからで、当初は、目的にすぎなかった。

とはいえ、実際に行くことが決まるとなると、パルテノン神殿は見てみたいし、アテネという町も古き良き風情があるのだろうなどと思ったのも事実。

7月20日15時00分ごろ、東京からドバイを乗り継ぎ、アテネの空港に到着。暑い。信じられないくらい暑い。日本の蒸し暑さとはまた違うベクトルで暑い。中学社会のおぼろげな記憶では、ギリシャは地中海性気候で、地中海性気候は確か「温暖で、晴れが多く、気持ちのいい気候」みたいなこと言っていなかっただろうか。涼しいのではなかったか。

涼しいとは一言も言っていなかった。


あとでちゃんと調べてみると、せいぜい「夏は乾燥しているので、湿度が低く過ごしやすい。」が正確な表現だった。夏は乾燥している、などと言わず、「アホみたいな日差しで脳が溶けそうになります。」くらい書いて欲しいし、「湿度が低いとはいえ、日差しがアホみたいに強いので、それなりに暑いです。」と書いて欲しかった。

一見して超涼しいのかと思っていたので、その落差で余計に暑い。何より日差しが強い。あまりにも強い。入国直後から帰国の検討を視野に入れるくらいに暑い。もちろん検討を視野に入れるだけなので、帰国の検討は実際にはしないし、ホテルには向かう。

市街地までは電車で30分~40分くらいだったと思う。旅先の初日なので、正確な所要時間は覚えていない。この町はいったいどんな景色なんだろうと外を眺めると、だいたい2単語で表現できることに気づく。


「茶」と「落書き」、この2つ。


「茶」については、かの有名な地中海性気候の影響で、老人の手かのごとくとんでもなく乾燥しているため、畑に緑などなく、茶色の地面とおそらくオリーブとみられる樹があるだけで、植生の豊かさは皆無だった。ギリシャにマイナスイオンを求めに旅にきていたら終わっていた。

そして、「落書き」。とにかく落書きが多い。壁という壁に落書きがある。というより、平面。そこに平面があれば、何かが書かれると言っていい。電車の外装、線路沿いの壁、トンネルの中の壁、いたるところに書かれている。アジア人は顔が平たいため、油断していると自分の顔にも何か書かれる可能性があり、街を歩く時は注意が必要なのは言うまでもない。


落書きではない、アートだ。という人もいるのかもしれない。確かに、アーティスティックなものもあった。一方で、いくら何でもそれは酷すぎるだろうというものもあった。その程度のクオリティでは、それはもはや落書きではなく、ただの汚損行為なのでは?と言いたくなったがやめた。落書きはそもそも汚損行為だ。


こうして神と落書きの街アテネに着いた。ホテルはとてもきれいだった。壁に落書き(汚損行為)もなかった。良心的なホテルだった。もちろん、アテネといえど、すべての平面にすべからく落書きがされているわけではなく、きれいな平面もあった。というより、そういう地域があった。

きっとそこは、日本でいうところの、広尾や南青山といったリッチな通りで、そこではどんなに優れたアートであっても汚損行為認定されるのだろう。そのエリアへの落書きはきっと憲法か何かで禁じられており、万が一にも落書きに及べば、神ゼウスの名のもとに、日中、猛暑の中パルテノン神殿に吊るす刑に処される重罰が下される。その他のエリアはたぶん「ごめん。」で許される。

パルテノン神殿は、当然にでかくてかっこよかった。「どうやって作ったんだろう。」という遺跡見学あるある疑問も当然に浮かんだ。ギリシャ人はすごいのだ。しかし、アテネ最大の謎は、紀元前にこんなにでかくて立派なものを作れたのにどうして、現代に地下鉄が3本しかないのかということ。南北線と東西線と半蔵門線だけじゃさすがに不便だろう。紀元前の人間についでに地下鉄くらいは作ってもらえばアテネはきっともっと豊かな都市だったに違いない。


パルテノン神殿含め、周辺の観光地は基本的には歩いて回ることができる(というより地下鉄が多くないので、歩かざるを得ない。)。歩いていると、当然神と落書きの街に恥じぬ量の大量の落書きに触れ、自分の中に眠っている美的感性が感化されることはさておいて、鳩も多い。そして汚い。


泥だらけというわけではなく、けばけばしている。羽がパサパサしている。


その点日本の鳩は、毛並みが整っていてきれいな鳩が多い。仮に日本に、毛並みがパサパサの鳩がいれば、ああかわいそうにと言いながら、鳩を抱きかかえ、ブラシで毛並みを整え、おやつを与えて、少し鳩と世間話した後に、世の中に返すなんてこともまあ、皆さんやっているとは思うが、アテネでそれをやってしまうと、鳩の行列ができてしまうので、できない。ゆえに汚い。

本来は、アテネ市役所鳩課の職員が責任をもって、鳩を捕まえてはブラッシングをしなければいけないところ、そのような生真面目な職員も残念ながらいないのか、鳩たちは今日も汚い毛並みで街並みを歩いている。日本の公務員の地道な働きによって、鳩はきれいな毛並みを整えているのかと思うと、公務員の素晴らしさがよくわかる。鳩課の皆様には感謝したい。

暑く、落書きが多く、鳩も汚い町であったが、ビールはうまかった。それならもう何の文句もない。すべての減点材料をなかったことにしてくれた。

あの暑さの中で飲んだビールは忘れられない。

次回、イタリア編。余裕があれば書きます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?