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日記hibi/ 2019/2/25〜3/2

2019年2月25日(月)
 まず打ち合わせがあって。それからはだいたいメールを返していたら一日が終わる、という感じで、一日が終わる。月末で、ただでさえ作業が多い感じで多い、多い感じ、多い、ooooooooooooooooooooo…………..

 相方が調子が悪いというので早めに家に帰ることにした。家でやれる作業は家でやる、ということが可能になるものだけを後ろ倒しで残していく。振込振込。

2019年2月26日(火)
 相方が調子が悪いなりにしかし今日は朝早くしごとがあるようで出かけていったので、残って家で洗濯をするなどして、それから出荷。店に行って出荷、出荷、出荷。日本にいるうちにできることをやりきっておかないといけない感覚が強い。正味15分くらいしか店にはいなかったのだけれど、この時間に奇跡的に荷物が届く。もうひとつ届く。なんだろうか、しばらくぼくは荷物を受け取れなくなるから、なにか特殊な采配が働いているんだろうか。夜に電気ついてたんで来てみました、ということはあったなというか、そういう機微やら配慮やらを配達員の方々は、見かけだけではなく第六感も働かせてくださっているのかもしれない。素直に幸運に感謝して、しかしダンボールはそのまま開封されず、荷物を作ったらすぐに店を出る。銀行に行って、ATMatmエーティーエム。それで月末月末月末getum

 体調が悪い。ふつうに風邪っぽくこのままいくと風邪である、という状況で明日からの台湾が不安視される。

2019年2月27日(水)
 朝から昨日までにいただいた受注を投函し終える。ぼくが今月にできる出荷はここまでだ。風邪味が強い。
 新刊用の写真撮影の立ち会いということで目黒に向かい、時間まで蔦屋書店で過ごしてコーヒーを飲みながら本を読んでいるのだけれど、席がガッツリ本屋スペースに食い込んでいて落ち着かない。どうにも、パーソナルな読書と店の本の境界が曖昧になってしまう。ぼくは本は所有してから読みたいという方なので、店の本に、ぼくのものでない本に囲まれながらだと、どうにも落ち着かなくなってしまう、ということを今更ながらに発見している。この前の台湾のイベントを経て、『本の未来を探す旅 台北』を読んでいるのだけれど、この本はしかして、本当にぼくの本なのだろうか。この別段カバーをしていない素の状態の本は、店の売り物である本と外見は変わらないのだけれど、ぼくがこの風邪味の中で酩酊して店の本を読み出しているという可能性はないのだろうか。記憶がないことは、起こっていないということの証明にはならない。いらぬことばかりに気を回してしまう。
 時間が無いのに、本屋にだけは寄ってしまいたくて撮影のあと中目黒ブックセンターに向かって、一周して、『ヒョンナムオッパへ』(このタイトルは未だに正しく覚えられず、いま最後の「へ」は「ヘ」(カタカナ)ではなく「へ」(ひらがな)ということを認識して衝撃を受けている)などを手に取り、『上野さんは不器用』なども手に取り、ペラペラ見ながら楽しむ。事務所に戻って事務事務したのち、再び蔵前の店で台湾に持っていくための荷物をピックアップして、そういうことをしていたら既に21時で、ご飯をたべてお風呂に入ったら、23時の電車で羽田空港に向かった。

2019年2月28日(木)
 空港に向かうと、わりとその場で待機している方が多くおり、ベンチはフリーの睡眠スペースとなっていた。卒業旅行なのだろうか。大学生くらいの男女のメンバーがドイツにいくからヨーロピアンブレンドを頼んだんだよははははははhh……。という会話をこなしているすぐとなりのテーブルで、男性3人、早朝の飛行機の出発まで待つことになる。

 すぐ近くに本屋、閉まっていたけれども本屋があって、閉まったガラス扉の向こう側からレイアウト(奥まった先のコーナーのデザインと什器がちょっと特殊ですねー)、商品構成(洋書かぁ。やっぱ日本文化とかコーナーあるねぇ)といった観察を楽しんで、それで改造社は出版社もやっている老舗だよね、なぜか長野とか地方にぽつんとあるよね、銀座にもお店あるよね、というところに会話が進み、ひとしきり、改造社の銀座のビルの成り立ち、その右と左でつながっているのに全く別のデザインとなっているそのビルがなぜそうなっているのか、について三人で延々と調べたのだけれど、なにもわからず、関連書籍を、それはもうぼくも含めてこの三人は本を探す能力には長けているので、WikipediaとAmazonから日本の古本屋からスーパー源氏、国会図書館検索まで調べたのだけれど、いまいちわからず謎に包まれる深夜。

 眠気が強すぎるし風邪味も強すぎるのでしばらく散歩をしようとぶらぶらと。深夜の羽田空港は、自転車を持って寝袋など持参しているグループの方々がそのまま床で寝ているなど、これはこれで、趣のある雰囲気で、しかし彼らは飛行機に乗るのだろうか? 飛行機、のち、自転車なのだろうか。
 楽しげに散策したのち、ふたたび同行するメンバーと合流して、「長いねー」などといいながら時間を過ごしている。一昨日からの体調不良がそのまま継続しており、これは間違いなく寝ないと風邪をひく。しかしわりとチケットを発券したり、荷物を預けたり、一時間おきくらいになんだかんだとやることがあり、動いている間に夜がふけていって、体調は悪化していって、夜も開けようかという早朝、気がついたら飛行機の中で、そうやって飛び立ったかどうか、あやふやなまま眠っていた。

 断続的に、起きる瞬間があり、その中で飛行機の窓から見る空は、漆黒から曇り、白い雲、と変わっていった。雲の上に居る、眠い。

 起きると国境は超えていたようで、着陸の案内が行われていた。まだ半分眠りながら外を見ていると、田園風景からどんどん町中になっていき、住宅が密集するようになってきた。こんな、こんな町中に急に空港とか大丈夫なんだろうか、といらぬ心配をしている間に飛行機は着陸した。

 眠い、つらい、ねむい、nemui。てきめんダメでずっと目が痛いのだけれども、知らぬ街、知らぬ国で、ずっと目を開けている。その必要にかられる。それはもうあたりまえといえばあたりまえで、そこに知らない場所があるからで、はー、ほー、といいながら建物の写真を撮ったりしていた。旅行客だなぁと思う。蔵前にも観光の方は多いのだけれども、いまぼくは、ぼくが蔵前で見る観光客の方そのものに見えているのだろうなというそういう動きで、観光客を満喫している。緑が多い。本屋に行くというのがこの旅の目的だし、僕が遠出する目的で、それで誠品書店、というか誠品のストリート的なもの、わりとふつう、朋丁、一階の本やカフェ三階のギャラリーはわかるのだけれど二階はなににつかっているのだろうか、青鳥Bleu&Book、本棚の隙間にカフェスペースを配置するの斬新、小日子のオフィシャルショップ、オフィシャル感あるー、に赴き、その途中にある本っぽいスポットももれなく赴いた。なんだか、だんだん、日本で旅行しているときと同じ感じなのではないかと思い始め、それはまさにその通りで、そうなると俄然勢いづいて来たので、どんどん本をみてどんどん買った。金銭感覚が曖昧にしかわからないというか、だいたい日本円にしていくら、というところはわかるのだけれどそれが積み重なるとよくわからなくなってくる。1元3.5円みたいな認識でいるが、計算がめんどくさいのでだいたい四倍にして端数を切り捨てる、くらいの感覚で見ている。が、台湾の本は安め、という印象を受けているから尚更かもしれない。日本での旅行でも本への出費は気にしないところがあるので、一万円か二万円かよくわからないけれどそのくらい使っているがそんなに変でもないだろうという気もしていて、そもそも本以外に買いたいものもない。恐ろしいほどに本以外への物欲がない。とそうやって自分を納得させながらどんどん買っている。

 ねむいつらいねむい。なんだろうこれ、ちゃんと夜寝ない、ということがこんなに辛かっただろうかというくらい、ひとしきり本屋を回ってしまうとそれでもう、どうしようもなく疲れてしまい、フラフラとしている中で新幹線にのり、台中に向かう。新幹線ではコーヒーとお菓子がもらえ、ありがたいありがたいと思うながらそれは全く手を付けないまま、就寝。

 奇跡的に、台中駅につく直前で起床。台中駅からタクシーで15分くらい。今回の目的地である「本日制作社」が見えてくる。ここにB&Bのポップアップショップを開くことになっていて、その設営とかのついでにぼくは台湾に来ていた。どうにも、広い空間で手前にお庭、そこから1階がゆったりとしたセレクトショップ、二階にも店舗があるようだった。それでよく日本からのゲストを招いてポップアップをよくやってもらっているようで、普段から置いている商品や本も日本のものが多くあった。店でかかっているBGMが、どこかで聞いたことあるよなー、と思ってずっと考えていると、お店ににCDが置いてあり、それは harukanakamura で、これぼくの蔵前の店でもかけるなぁ、音楽は国境を超えるなぁとのんきなことを考えていた。無事にポップアップは完成し、あとはイベントの様子を見るだけで今日は終了、という中で、設営の間にも着々と病状は悪化し、これはもうはたから見ても調子が悪いですね、という状況になったので早めにホテルで休憩することにして、徒歩10分という触れ込みのホテルに向かうと、それは徒歩30分くらいかかるもので、へとへととあるきながらホテルに向かう。台北でも、台中でも、基本的に台湾は歩行用の通路を大きく確保しないというスタイルのようで、車道の隅を、そして建物ごとに地面の高さが違うというか、常に段差! 数歩歩くと段差! という町並みで、それをよいしょ、よいしょしながらホテルに向かった。日本のバリアフリーってまだまだだけど、こちらに比べるとそこそこなんだなということがよく実感されながらホテルにイン。ひとしきり寝ると多少元気になったので、夕食にみんなで向かい、地場の点心などをいただいた。点心ではアルコールというか、水分が提供されない。みんな食事だけで生計をたてているんだろうか、健全だなと思いながら、口寂しくなったので勢いで、ビールを飲みに向かい、体調が悪いのにも関わらず二杯飲み、ホテルにもどって溶けるように就寝。

2019年3月1日(金)
 もうコーヒーが飲みたい、という全体の意見は一致し、それでコーヒーを求めて朝から歩くことになる。川沿い、という感じの場所にお店がありそうだったので向かうと、その川、はなんだか用水路みたいなところだった。それでもなけなしの、という感じでテラス席で、出てきた量の多いプレートをもぐもぐしていると、隣のビルのベランダから猫がこちらを見下ろしていた。わりとリアルな声真似で「にゃー」と言ってみたが、こちらの猫にも「にゃー」で通じるのだろうか。数秒凝視されたあと、猫は行ってしまった。

 ホテルに戻って準備をするとすでに車が来ており、今日はこのまま新竹にあるという取次の倉庫を案内してもらえるとこになっていて、わくわくしながら乗り込んだ。一時間ほどで着いそこは、住宅街の中の細い路地に入った一軒家で、なんだかこういうところ見たことがあるなと思って記憶を探ると、中学生のころによく行った友だちの家の佇まいに立地も周囲の雰囲気もそっくりだった。小高い山に、最低限車一台通れるスペースを残して、一軒家がたくさん立っている。一軒家の中はしかし事務所で、中央にみんなのデスク、左右に入荷した本、出荷する本を整理する棚があった。出版社から本が入荷したら左の棚に仕分けて、それで書店の注文ごとに右の棚に入れて溜まったら出荷します、と事務所の人は言った。それが取次でなくて何なのであろうか。一階のほかの部屋と二階はほぼ在庫スペースになっていた。わくわくしながらいろいろ見せていただいていると、みなさんがばたばたとしだして何かと思うと、もうお昼だから、店予約してあるから、と近く、というには原付きや車で移動したのだけれど、近隣のお店で歓待を受ける。恐ろしいほどの歓待ぐあいとホスピタリティ。なんだかいろんな料理が出てくる。ありがたい。おいしい。よくわからない肉などがある。
 ぼくはてっきりそこで終わりかと思っていたら、一日時間をとってくださっていたようで、そのままその取次を使っている書店を順繰りに案内していただくことになる。塾と書店をやっているところ。このあたりは英語塾ばかりだけど国語が大事だと思うから。本屋の雑誌を買う。ライブスペースとカフェとドミトリーに本屋がくっついているところ。この方法だとだれでも美味しくコーヒーが淹れられるし紙フィルターを使わないからエコなんだ。『來田捕手』という書名が目について、なんだろう野球の本かな台湾は野球も盛んだからな、と手に取ると『ライ麦畑でつかまえて』で笑った。買う。地元の寺院を案内してもらう。ギャラリーとイベントスペース、ベジタリアン対応の食堂が併設された大きな書店。メニューは女性や家族連れにも人気です。動物のいる本屋特集みたいな雑誌を買う。最後はタクシーを呼んでくださって、それで僕たちは駅へ、みなさまは原付きと車で颯爽と去っていった。引き際もとても良い。ありがたい。

 新幹線で台北まで戻ると、タクシーで宿まで連れて行ってもらうべく、おそるおそる「ここ」とiPhoneの地図を見せると、慣れた手付きでそのままぼくのiPhoneを取りガイドモードにして運転席の脇に置くと、ゆうゆうと迷わずホテルまで一直線に、というか、ぼくのiPhoneのガイドどおりに到着した。着いたらiPhoneは返してもらえた。
 夜中にコンビニに赴き、乾燥フルーツが多い、ビックルみたいな乳飲料が多い、など商品を見ながら遊んで、ビールを買い込んでホテルで飲む。まず一本、シャワーを浴びてからもう一本。

2019年3月2日(土)
 ビールも飲んだし、疲れもあって、けだるげに遅い時間に起きると、もちろんホテルで異国の地、だったがしかし、ぜんぜん異国にいる感じがしない。アジア圏だからなのだろうか。ホテルもきれいで、まったく違和感がない。それで、調べたところ行きたい本屋さんはだいたい午後オープンとのことで、午前中はWi-Fiのあるホテルでゆるりと仕事のメールを返したりしつつこうして日記に向かわれている。普段どおりの日中でしごとも普通に捗る。ここは本当に台湾なのだろうか。印刷の見積もりを確認しようと、グラフィックのサイトを開こうとしたがアクセス出来なかった。台湾からの受注を止めるための措置だろうか。唯一そこだけ、異国情緒があった。

 昼過ぎに地下鉄に中山駅に向かい、休日だからだろうか、中山駅の地下道の一角はダンスの練習をするにはもってこい、という場所のようで多くの人がたむろして踊っていた。いい場面だ。日本だろうが台湾だろうが、そういう日常が、常にいいと思える。
 中山駅の中にある誠品書店はコンコースというか、地下道をそのまま本屋とテナントにしたというような構成で、道沿いに細長くずっと本屋が続いていた。松村さんと、スラントみたいに省スペースでたくさん置けてそれでいて備え付けで平台が一面だけある什器いいですね、とか、モニタが机の下に格納された作業台を見つけて、これいいね、いい、見栄えもいいしモニタが作業スペースを圧迫しないし、最高じゃないですか、導入、日本にも導入不可避、というような妙な感想を抱きながら通り過ぎる。松山文創園区地区まで行きたかったが降りる駅がいまいちわからないというか、ここで降りたいという気持ちはあるが、アナウンスされる駅がそこなのかが判然としない。漢字も繁体字だからちょっと一瞬で理解できないところがあって、大丈夫? ここでOK? と二人で不安がりながら駅で降り、ここからはいったん別行動をとることにしてぼくは文創園区の、ふたたび誠品書店に向かい、というか、地図で書店で検索してでてきたところを可能な限り回る、という日本と同じ行動基準で赴いた先にまず、誠品生活松菸店、広い、でかい、デパート、というか誠品書店ではなく生活で、これはただのデパートと思いながら通過。おのおののコーナーに円形のカウンターがあって、商品のデモンストレーションをしたり説明をしたりしている人がいる。ここあたりは今日は土曜ということもあってかものすごく人がいて、ちびまるこちゃん展がやっていたり、ポッキー展みたいなのもあったり、プリキュアみたいな謎のキャラクターのパネルがあったりした。日本では全く見ないキャラだがあれはなんのアニメなんだろうか。美術館や会員制の図書室みたいなところを覗いて、閲楽書店、ここは和氣くんが以前行ったと言っていたところで、写真は見せてもらっていたけれども、こういうところなんだとイメージと現実が絡み合うようにして認識されていって、普通に居心地が良くてゆっくり休憩などする。本屋が舞台のドラマの撮影地、ということなので本屋本が多いのはわかるとして、文化や歴史のコーナーが充実しているのはなにか店の特色なんだろうか。それとも台湾は歴史人文がよく動くのだろうか。だとしたら喜ばしいことだ、としかしぼくは本屋本を買って、レジで会計をすると、そのレジに「BOOK SHOP LOVER」もステッカーが張ってあって、和氣くんwww とひとしきり面白がる。が、レジの人に「this is my friend」という勇気はそのときのぼくにはなかったので、そのままスルー。和氣くんは声を掛けたということなのだろう。すごい。
 そこから市街地の方まで再び歩いて、蔦屋書店信義店。日本の蔦屋書店となんにも変わらないというか、印象では三分の一くらいが日本の本。価格は二倍〜三倍くらい。日本書の輸入は当然得意なはずだから、そういう強みをだしているんだろうか。デザイン書のコーナーなんかは洋書が多いので、ぱっと見ると本当に日本の棚と変わらない。と思いつつ、隣のビルの誠品生活信義店に。ここが一番大きいっぽい。たまたま本屋のイベントが行われていて、地元の本屋さん? ではないのかな、なにか企画者の方がトークされていた。観客は30人ほどか。たぶんなんだけれどもこの観客みんなに声をかければ台湾の独立系本屋の面白い人や回っている主要なお客さんと一同に知り合うことができる気がする。日本と同じ感じの客層ならば、だけれど、きっとそうだろう。が、声は掛けない。展示では書店の歴史みたいなものとともに、参考文献のリストがQRコードを読み取ると閲覧できる、という方法で共有されていて、これすばらしいから真似しよう、と思う。総じて手が込んでいる。が、店としては既視感がとてもあり、それはつまり蔦屋書店的ということなのだけれど、正確にはその逆で蔦屋書店が誠品書店的なのだけれど、いずれにしても商業化が進みまくっていて、購買意欲がそそられない。日本の蔦屋書店では買うんだけどな、なんでだろうな、と思うのだけれど、このデパートっぽさと、本の品揃えというか雰囲気が日本と違って全然わからない、ということが多分に影響している気がする。でかいところにはあるだとうと狙っていた『ハーモニー』の繁体字版を買う。のだけれど、台湾ではSFは流行っていないんだろうか。繁体字の翻訳SFはとても少なく、誠品だからなのだろうけれども洋書がそのまま売られている本も多い。と思ったが、日本は一時期ブームだったし、逆に特殊なのかもしれない。わからない、が、日本の読書環境にいてよかったという気持ちにはなる。ありがとう早川書房。

 と、ここまで歩きづめで、足がもう関節から痛い。松村さんと合流して、それでぼくは中山駅から西側に行ったエリアにある本屋も見たい、と痛む足で無理に主張して、それで見に行くことになる。座ってビールを飲んでいったん休憩するも、足の痛みは全く回復せず。それでもガンガンと向かい、荒花書店、アングラ感のあるたいへんよろしいZINEのセレクト、詩生活、詩集はどこに行ってもデザインがいい、浮光書店、荒廃した感じの一階物件の横にある細い階段を上がると急に現れるオシャレ空間、居心地良さそうだしカフェは通えそう、とここまで行って、今日のタスクは終了。よくやった、よくやったぼくの足。
 それでホテルに戻り、ごろごろして足を休めるとすでに21時。近くの屋台でうどんとわからないなりに頼んだら出てきた謎の赤い肉を食べる。ここでもビールは提供されない、というかみんなそとでごはんは食べているけれどはビールは飲んでいない。ドリンクは持ち込む感じで、それもお酒ではないようだった。原付きで帰るからだろうか。それでコンビニでまたビールを買って、小籠包も買ってホテルで飲み。レシートに文面は何もなく、代わりにQRコードが印刷されていて、アクセスしてみるとビールメーカーのサイトに飛んだ。広告? では商品明細はどこに?

 だいぶ疲れていたからなのか、松村さんと今日買ったくだらないZINEを見せ合ったり、レコード屋さんでの事件を共有しあったりして、馬鹿みたいにげらげら笑って就寝。

2019年3月3日(日)
 再び、コーヒーが飲みたいよね、という気持ちは共有しており、調べるとこの近辺では田園城址が10時からやっていてカフェもあるし本屋もあるし、なにより12時オープンばかりの中で唯一午前中の予定に組み込めそう、という理由で松村さんと二人して向かう。朝から雨が降っており、コンビニで傘を買って緩やかに歩く。着き、入るとカフェは昼過ぎからのようで、コーヒーにはありつけず、たいへんに飢えている。田園城址は日本とのつながりがとっても深いなと思えるような品揃えや展示で、今回の展示も日本のプロダクトだった。本を買い、出、タクシーで台北駅を中心とした地図上では左上となる位置に向かい、たかったが、タクシーのおじさんがびっくりするほど英語と地図がわからない。既にだいぶ歩いているし、ぼくらも説明が楽になるようにあえてまっすぐ進めば着く、という道路まで出てタクシーを捕まえているので、go Straight ですむはずなのだけれど、ごーすとれーと、も、グーグル・マップも伝わらない。あの、一昨日の夜、(ぼくのiPhoneで)グーグル・マップを華麗に使いこなしたタクシーの運転手さんは、台北駅をテリトリーにする観光客向けベテラン、ということなのだろうか。ここも台北駅から車で5分くらいしかはなれていないけれども。しかし伝わらないなりに、とりあえず進んでもらって、もうこちらが地図を見る感じで、このへん、このへんでいいっす、止めてくれれば、と、ただただまっすぐ移動してもらい降りる。降りたあと、おじさんはおじさんで海外の客を乗せて緊張していたのか、車道に戻る際に道路脇に置いてあったコーンを車で引っ掛けて倒してしまい、再びコーンを直しに車を降りてきた。それは僕らのちょうど目の前で、バツの悪そうな顔をしながら、やっちまったよ悪かったね、みたいな顔で僕らを見て、ぼくらはぼくらで、しかたがないよおーけーおーけーここまでありがとうね、という顔で返し、そうやってなんだかやっとこの瞬間に気持ちが通じ合った気がしてそれで別れる。こういうことばかり覚えていく。

 アンティークの雑貨屋さんや、「唄片」というのがレコードCDを指すとわかってきたぼくらは、地図上でたまたま通り道にあった唄片店に向かったらタバコやさんみたいな外見のカセットやさんだったり、飢えていたコーヒー屋さんを見つけて入ったら、そこは自家焙煎のしっかりおいしい豆を提供してくださるところで豊かにすごしたりなどして進む。コーヒーとともに頼んだワッフルが大皿で出てきて、二人分だろうと分けて食べていたらもう一枚あとから出てきてケラケラ笑った。もう一枚のお皿も平等に分けた。

 雨が降っていて、粒が大きく、家屋のトタン屋根に落ちる雨音がコンコン、カンカンと、とてもいい音色を奏でる。細い道を傘を指しながらぽつぽつと歩く。少し、湿気のせいか靄がかかっているようで、目の前の道は左右の建物に挟まれながらパースみたいにずっと先まで続いていた。ちょっと映画みたいで出来すぎている。

 お昼を過ぎてから、台北駅で荷物を預けて、今度は公館駅から大学のある地域に向かって、茉莉二手書店、居心地のいいブックオフ、マンガシック、つまるところギャラリーのあるタコシェ、町中にあるアニメイトみたいなお店、アニメと野球系の雑誌が多い、大学の近くにはもれなくこういうお店があるんだなどこのくにもという気持ちになるし妙な安心感、唐山書店とか、宗教系のお店とか、教科書販売店っぽいお店とかとにかく本屋が多い。フェミニズム系の女書店もある。大学街。すばらしい。台灣的e店、は台湾独立運動のメッカみたいなところで、独立デモグッズのTシャツとかタオルとかの品揃え、というか、ここで作っているんだろうけれどもバリエーションがすごい。伊聖詩私房書櫃、ほぼここは家。台湾本屋の歴史、みたいな本を買うと、きみ本屋好きでしょきっと、団体が作った本屋マップがあるからあげるよ、あ、ただだから気にしないで、というような会話というかほぼアイコンタクトを交わして店を出る。人のやさしさが沁みる。そこからグルっと回って古亭駅まで歩くことにして、雨の中町を散策する、というか町並みを見ながら歩く。こういうのがどこでも楽しい。びっくりするほど、というか、なにか思想的なものすら感じられるくらい、少しでもスペースと土があれば植物を生やそう、庭にもベランダにも! という意思を強固に感じる。植物の楽園を思う。これ、日本でこんなに茂らせたらぜったいに隣の家から苦情がきて切らされるよね、などと話しながら歩く。webで紹介されていた旅人書房は見つからず、どうも閉店してしまったようだった。別の一角に美味しそうなコーヒーやさんがある。台湾は駅から少し歩いたところ、住宅街の一角に急にぽっといい感じのお店があるような気がするが実際はどうなんだろう。みんなお店に来るのだろうか。
 最後に讀字書店に向かうと、ぼくは『本の未来を探す旅 台北』と先日のトークイベントでのイメージで勝手に、ミシマ社っぽい感じだな、とシャーキーさんと逗點文創結社について思っていたのだけれど、この讀字書店も入ったら、大学生っぽいグループが読書会っぽいことをしていて、ミシマ社の本屋さん! と勝手に印象を深めた。実際はぜんぜん違うかもしれない。逗點文創結社が出している詩集でとっても欲しいものがあり探していたのだけれどいままでの本屋にはどこにもなく、ここならあるいは、と思ったのだけれどそれもなく、おそらくもう品切れなのだろう。それで他の本、といってもそれも欲しかったやつ、と買って、それで本日の行脚は終了。足が痛い。

 台北駅にもどって休憩したいけれども、どの店にどう入るのがいいのかわからない。ぼくらはまだ今日はワッフルしか食していない。しかしこの店は食事なのか、カフェなのか、何をどのくらいの量や雰囲気で出してくださるのか、がわからない。そうしてふらふら歩いていると、Waiting Roomの近くに着いたのでそこも見、商品は洋服とCDとレコードと本で、商品数が少ないけれどどうやって経営しているのだろう。結局1時間くらいまた無為に歩いて台北駅近くのうどん屋さんに入る。メニューが全くわからない。これは何を指しているのだろうか、読み方もわからない、幸いにも紙に書いて注文するシステムだったようでそれでなんとなくチェックして渡し、料理が出てくる。麺、までしかわからなかったし、出てきたものも、麺、だなというところだけを認識して、食べるとその、麺、はここ数日で一番美味しかった。ただ空腹なだけだったのかもしれない。

 駅戻り、荷物取り、桃園空港に向かって電車乗り、降り、荷物を預けられる時間になるまで座って休憩でも、と思ったが座るところもそんなになく、フードコート的なところも軒並み埋まっていた。というか休憩する施設自体があんまりない、のだけれど、むしろ羽田空港が異常なのかもしれない。ロビー隅っこの、ベンチは開いていなかったので、ベンチではないけれどちょっとした腰掛けみたいに使える角ばったスペース、に陣取り日記を書く。おしりが冷たい。隣のグループはタイだろうか、東南アジア系の人たちでトランクを開けて荷物の整理をしている。妙にお菓子が多い。そちらでは人気なのだろうか。コーラはトランクに入れても大丈夫なのでしたっけ? 入れている。大丈夫なのでしたっけ? 小一時間ほどそうやって待つ。やっと受付の時間になり、それで荷物を預ける。本を買いまくっていたし、トランクの限界に挑戦するレベルで詰めていたので不安視してた重量は13.5キロ/15キロ制限とギリギリクリアでき、なんとか大量の本を輸入することに成功する。入国審査に移り、列に並ぶところで、どこから来ているのだろう、ともにアジア系の2つの家族が抱き合って別れを惜しんでいて、13歳くらいだろうか、女の子同士が名残惜しそうにしかし強い瞳でお互いの健闘を称えるように話し合っていて、それで一方の家族が入国審査の列に入っていって姿が見えなくなると、残された女の子は家族の前で涙をながした。

 格安の航空会社なので仕方がないのだけれど、出発の窓口は空港の端の端で、動く歩道を乗り換え乗り換えしたさいはてに、だだっ広い待合いロビーがあった。飛行機に乗るにはここからさらにバスで移動するらしい。そのロビーにはお菓子とドリンクの自販機しかなく、ロビーの喫茶店でコーヒーでも、と残してあった400元くらいの現金使いみちを見失ってしまった。それで、動く歩道の最後の方、というか、ロビー内の免税店が並ぶ通りの一番最後で、動く歩道の入り口よりも少し奥に入ったところ、つまり大抵の移動者は歩道に乗ってしまうので、入店される可能性が極めて低いおそらくこのロビーで一番家賃の低い立地、に本屋があったことを思い出してそこまで戻り、どうせ日本で売ったりあげたりするから、とすでに数冊確保していた「新活水」の書店特集を余分にもう一冊買って、残ったコインを握りしめて再びさいはてロビーに戻り、ビタミンウォーターとたべっ子どうぶつを買って、二人でつまんだ。
 飛行機に乗るともうすぐに眠たくなってしまったみたいで、離陸するまえにシートベルトを閉めて安心した、そのあとの記憶がない。

#READING 『本の未来を探す旅 台北』(内沼晋太郎、 綾女欣伸 著、朝日出版社)


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