当店の流通ポリシー、というかAmazonへのスタンスについての覚書。
久しぶりに新刊を出すということもあり、もろもろ周辺が騒がしくなるのもめんどうなので、一度しっかりまとめておきます。
*バナー画像は10年くらい前に取次社員の仲間がけしごむはんこで作ってくれたロゴ。とても気に入っているのです。勝手に使ってすみません。©mizui
第一項 当店の注文システム
自店発行の出版物(H.A.B=エイチアンドエスカンパニー名義でISBNコードを付与している本)については、取次経由での流通ルートを構築しながら、別途直取引にて、「買切」「委託」の2パターンの条件を設定し、出荷します。取次経由については、取次と書店間の条件に左右されるため、当店は関与できませんので、本稿では主に、当店と小売店の直取引、について述べていきます。
第二項 卸売に際してのポリシー
卸売の際には下記のポリシーを遵守しています。取次事業においても同様のポリシーは準拠されます(1については相手出版社の都合もあるので「交渉できる限り」という前提条件が存在します)。
1_「買切」の卸値を可能な限り低く設定する。
*直近三点の新刊では買切60%、委託75%(発注ロットなし)で設定しています。当店の出版物は少部数のため、印税含めた原価率はだいたい35%強となります。送料なども差し引くと、買切卸の場合、企画編集して印刷代を事前に払いなおかつ在庫負担もしているにも関わらず、書店の半分の利益率で事業を行っている、ということなります。正直、かつかつな部分がありますが、当店自身も書店であり、このくらいの掛け率がないと経営は厳しい、という書店側の立場を尊重しています。またこの決定には、出版物が再販商品であり価格決定権は出版社にある、という事実が大きく関係しており、60%の卸でギリギリ成り立つ部数と価格を設定することを企画初期から念頭においてすすめています。書店への卸値が高い、条件が厳しいというのは出版企画の段階から書店を考慮していないからである、というスタンスです(念の為書いておきますが、書店を考慮するかどうかは出版において二次的な要素ですので、考慮していないこと自体は批判にあたりません)。
2_受注には満数で出荷する。
*委託、買切問わず、受注数の調整は行いません。在庫有る限り満数で出荷します。在庫僅少で注文過多の場合はたいてい重版するので(重版待ちでご迷惑はおかけしても)受注の削減はしません。実態としては、重版前と重版後で分割納品をお願いしたことはありますが、その程度です。
3_仕入れ条件はすべて開示し、例外は一切作らない
*公開された条件以外での卸売は一切行いません。また、同様に値下げ交渉には一切応じません(支払い期日についてだけは常識的な範囲で調整することがあります)。すべての小売店が規模の大小に関係なく同様の条件で仕入れられる、ということを第一としています。たとえば、(実績はありませんが)なんらかのボリュームディスカウントが発生した場合(ボリュームディスカウント自体は正当だと思っているので今後新規で発生するかもしれません)、その時点で条件は公開され、それ以降の全ての小売店からの仕入れに適用されます。
*同様に書店としても、「条件が公開されておらず、メーカーからセレクトされた一部書店だけが仕入れ可能なもの」については、ご提案いただいても仕入れておりません。「ブランディングや商品管理のために販売店舗をメーカーが絞ること」自体はまったく否定しませんし、むしろ好意的に捉えていますが、当店のポリシー上、そのような対象に自店舗を含めることはできません(自店舗が自店舗のポリシーに違反できません)。
上記三点すべてにおいて、小売店の自主仕入れを尊重し、そうした意思を示してくださった方には最大限の感謝と、最大限の利益還元を行う、ということを前提にかんがえています。
第三項 Amazonへの対応について
日本最大手のweb書店であり、販売先でもあるAmazonですが、出版社に在庫があっても商品が補充されない、不当に高い条件で中古品が出回っている、などの事実が、さまざまな本で、わりと日常的に、例えばTwitterなどで話題になっております。その理由と対策は、出版業界内においてはそれなりに整理・蓄積されていますが、当店については、これまで書いてきたポリシーに従い、下記のように対応しています。
1_情報提供は通常通り行う
*他の書店と同様、同じように情報提供、新刊案内を送付します。具体的には当店はJPROを通じて書誌データの配信、取次への見本だし及びJPROのデータ更新によって発売通知を。また、状況に応じて、Amazonと取引のある取次の倉庫に補充依頼を出す(営業)、くらいのことまでは行っています。
2_その上でAmazonの在庫有無については静観する
*書店の自主仕入れに最大限応える、というポリシーを準拠し、情報提供は行うが最終判断はAmazonに委ね、その本が仕入れられるかどうかについて過度の営業や手当は行いません(すでに仕入れてくれているお店をサポートするほうが大切だからです)。
3_Amazon直取引(e託)は登録しない
*Amazonが提供する直取引システムには登録しません。
**e託はAmazonが出版社と直取引契約をむすび、それによってシームレスで正確な発注を行うので品切れがなくなります、とAmazon自身が喧伝しているシステムです。それ自体は事実でありe託登録することでサイト上の品切れは高確率でなくなります。
*当店の直取引は、第二項の1で記載したとおりすでにぎりぎりの低価格であり、これ以上は下げられませんし、上げることもしません。また同項3のとおり例外条件も設定しません。ですので、Amazon“が”、当店の直取引条件に従っていただけるならなんの問題もなく可能ですが、当店がAmazon“の”直取引条件に従うことは、例外条件となるためできません。
4_マーケットプレイス出店による高価格販売の防止
*Amazonでの新刊品切れの際に、出版社に在庫があるにも関わらず追加がなされず、中古品、プレミア品が高価格で販売されてしまう現象の対策として、自店でマーケットプレイスにアカウント登録し、定価にて販売することで防止しています。
しかしながらこのような対策は、出版社、読者双方に対して極めてデメリットしかありません。
4-1_販売に際しAmazonに手数料を徴収され、それを差し引くと売値は取次卸でAmazonに出荷した場合の卸値に近くなり、出荷の手間を考えると取次出荷よりも負担が大きい。にも関わらずAmazonはシステム提供しか行っていない(本来行うべき在庫〜出荷作業を負担していない)(出版社)
4-2_購入に際し、送料を支払う必要がある(Amazonに在庫あれば負担なし)。またその送料からも手数料は徴収される(読者)
4-2-1_送料はAmazonに出店者が月額会員登録をすることで読者負担を0円にできますが、送料負担はそのまま出版社にかかること。そもそも、Amazonのシステム不備(後述)が原因であるにも関わらず、Amazonに月額手数料を支払うこと、それ自体が矛盾です。
こうしたことから、なるべく行いたくはありませんが、Amazonになければ品切、とある程度多くの読者が認識している現状を考えると対策は必要です。当店では下記のテキストを明記し、なるべくお互いの不幸がないように配慮しています。
新品
出版元が販売する新品商品です。Amazonでの価格高騰防止のため出品しています。よろしければ公式通販(別サイト・書名+出版社で検索)もご利用ください。
その上でAmazonから注文がある(実際ある)のはもう致し方がなく、「Amazon経由でどうしても決済したかったのだろうな」(それ自体はセキュリティ対策などの面で理解できる)と考えながら出荷しています。
5_明確な批判として
*Amazonもいち小売店である以上、そのルールに従うかどうか、はメーカーである出版社に委ねられ、その経営判断はどちらも正しいものです。しかしながら、Amazonはしばらく前から「在庫切れ商品」に対して、以前は表示されていた定価記載をやめ(定価+品切れ/取り寄せ○日、などの表示)、マーケットプレイスで出店されている主要なアカウントの価格(多くは一番低い出品価格)を記載するように変更しました。この変更により、当該書籍の定価が中古価格であると、ひじょうに勘違いしやすいUIとなりました。
これは新刊を取り扱い、webショップとして多くの人の目に触れるシステムを提供している小売業者として、極めて不誠実な対応です。定価販売への責任感の欠如を感じます。この点について、明確に批判の意思を表明します。これが解消されない限り、Amazonが主体的に発信する施策に当店が関与することはおそらくありません。
以上です。このような流通ポリシーをご理解の上、当店をご利用ください。
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