【H.A.B出版部・新刊】『山學ノオト』(青木真兵・海青子)
H.A.Bの出版部(出版社の登録名称はエイチアンドエスカンパニー。理由は聞かないで……)より、2017年10月以来の三年ぶりに新刊を刊行します。
“自分としては、ただ生産性のない日々を生活しているだけなのです”
奈良県東吉野村。人口一七〇〇人の村の山あいの、道から離れその先の、川にかかる橋を渡った石碑の隣。ひっそりとたたずむ一軒家、人文系私設図書館「ルチャ・リブロ」。
自宅を開放して図書館を運営する夫婦がその生活を綴った一年間の日記に、書き下ろしエッセイと、山地での生活を考察した草稿「研究ノオト」を追加収録。
「生産性のない日々」「土着」「生活のおすそ分け」……。
イヴァン・イリイチ/網野善彦/マルクス/宮本常一/木ノ戸昌幸/富士正晴/中井久夫/柳宗民(ノオト……!)……。
「突然だが、現代社会は「みんなのため」にできている。(中略)ただこの「みんな」に含まれなかった人たちや含まれないと感じてしまった僕たちのような人間が、もう一度「やり直す」ための場所が必要ではないか」(真)
「ていねいな暮らしと、ていねいじゃない暮らしがある、という分け方じゃなくても良い気もする。それに、どこに居たって、日常というか暮らしはそこにあると思っています。」(海)
流れる日日と、変わらない源流とを往還するような記録集です。
▶特設サイトへのリンクはこちら。販売店情報などまとまっています◀
本の概要
山學ノオト
著:青木真兵 海青子
装丁:武田晋一
出版:エイチアンドエスカンパニー(H.A.B)
本体:1800円+税
判型:四六版変形(120☓170mm)
デザイン:並製・雁垂れ・表紙箔押し・“小口”アンカット
ISBN:9784990759636 Cコード:0095
発売:2020年10月上旬
流通:取次流通あり。直取引あり。
*注文情報・取り扱い書店はページ末尾にまとめております。
青木 真兵(あおき・しんぺい)
一九八三年埼玉県生まれ。人文系私設図書館Lucha Libro(ルチャ・リブロ)キュレーター。古代地中海史(フェニキア・カルタゴ)研究者。障害者の就労支援を行いつつ、大学等で講師を務めている。オムライスラヂオの配信をライフワークとしている(https://omeradi.org/)。
青木 海青子(あおき・みあこ)
一九八五年兵庫県生まれ。七年間、大学図書館司書として勤務後、東吉野へ。現在は私設図書館を営みながら、お針で手間賃をもらう。
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H.A.Bからのコメント
当店の名ばかりだった出版部より、3年ぶりの新刊を刊行することとなりました。いや、でも名ばかりというと語弊があるというか、事実だし、言ったのはぼくなのですけれど、それは、なんというか、本づくりはめっちゃしていたな〜、というものでありまして、H.A.B出版の歴史を振り返りますと……。
2014年2月 『HAB 新潟』刊行
2016年6月 『HAB 本と流通』刊行
2017年10月 『ずこうことばでかんがえる』(きだにやすのり)刊行
となるのですけれど、実際は
2017年12月 『ししししvol.1』(双子のライオン堂)・編集協力
2018年5月 『本屋の本の本(壱)』(BBB製作委員会)・デザイン/執筆
2019年1月 『ししししvol.2』(双子のライオン堂)・編集協力
2019年2月より 『H.A.Bノ冊子』刊行開始。四半期ごとに刊行し、2020年8月現在最新6号まで刊行
2019年12月 『りぶろ・れびゅう』(ルチャ・リブロ)・編集/デザイン
2020年2月 『hibi/ーーどこにいても本屋』(HABZINE)・企画/編集/デザイン
2020年4月 『ししししvol.3』(双子のライオン堂)・編集協力(←この号は本当にちょっとしか協力してない)
ということで、めっちゃ、本作ってますがな、という感じでわいわい作ってはおりました。特に、2019年からちょっとおかしいですね。
そういうおかしな日々の中で一生懸命やっていた、『H.A.Bノ冊子』の連載「山學日誌」に大量の書き下ろしを加えて一冊にまとめたのが本書です。
前置きが長い。
この本は概要のとおり、奈良県東吉野村で「人文系私設図書館 ルチャ・リブロ」を営む青木夫妻の日記をまとめたもの。なんで日記って依頼したんだったかな?
たしか、お二人の文章がうまくてすごくいいってことは自主刊行されている機関誌『ルッチャ』でもうわかってるし、誰が頼んでもめちゃくちゃいい原稿が出てくる人に、誰でも頼めるテーマでお願いしてもなぁ、うーん、そういえばルチャ・リブロってどういう感じで生活して運営されてるんだろう、他の仕事もあるだろうし、そもそも村の生活ってどんなだろうか、日記、日記かもしれない、日記だ!
みたいな、そういうざっくりとした感じで日記を思いついて依頼したのでした。たぶん。
そうして始まった連載は、とりとめもなく、注釈もなく、極めて読者に不親切な感じで進んでいき(当店が作っている特典冊子なんだからそれでいいのです)、しかし流れで読んでいくことで、日日の考えや、それが発展してく“ゆるやかなつながり”が見えてきて、そうした変化のなかで、ぎゃくに、底の方に底流する、変わらない源泉が見えてきたりして。これはずいぶんといいものだなぁとしみじみ感じる連載になっていったのでした。
今回それをまとめるにあたって、お二人のエッセイをたくさん、それこそ全体の半分くらいの物量で追加しました。
海青子さんからは、まさに「源泉」と言えるような、流れる日常のなかで核となる思いや体験をつづったものを。真兵さんからは、「流れ」たさらにその先の、この一年の日々を通じて進んで、というか分け入ってきた、道の先を垣間見せてくれるような、論文になる前の書き付け、草稿をイメージした「研究ノオト」を、それぞれ寄稿してもらいました。
デザインは、同じく東吉野村に住み、機関誌『ルッチャ』のデザインも担当する武田晋一さん。大正、昭和時代に刊行された本をみんなでためつすがめつしながら、はじめましてなのになぜかずっと連れ添ってきた気がする、そんな装丁に仕上げてくださいました。
印刷はおなじみ藤原印刷さん。なるべく古書っぽい感じで、というざっくりとしたオーダーの紙の選定から、雁垂れで、あと天じゃなくて小口だけアンカットにしたいんですけど、みたいな「たぶんできるけどそれあんまり前例ないんで調べます」というやりとりを何度もかさねてくださいました(重ねていますNOW)。
とてもいい本が出来上がりました(今現在出来上がってないのですけれど、出来上がるはずです)ので、お楽しみください。
試し読み
本文試し読みはこちら。
連載時の第一回原稿はこちらからご覧いただけます。
購入について
特設サイトに順次、販売店が追加されますのでそちらをご覧になって購入ください。ほとんどの本屋さんが仕入れできる方法を採用していますので、お近くの店舗に客注など出していただければ取り寄せしてもらえます。
(わりと切実なお願い)
本って、どうしたって最初に印刷代がかかるじゃないですか。だから大抵は、印刷代を背負ってまずは売上でその金額を返していくぞ! ということになるわけです。ただネックは、販売方法によっては代金の回収に少し時間がかかってしまうことです。長いもので半年後、くらいでしょうか。
それでなんですけれど、こう、ぶっちゃけると、あんまりお金がありません。厳密に言うとこの本の印刷代は払えますけれど、次とか次の次の本の印刷代となると厳しいかもしれない、くらいです。ここでしれっと公開しておきますと、次の本と次の次の本はすでに製作中で予定があります。更にもう一冊、作れそうな企画の気配もあります。つまり、このペースで作ると、(仮に本が売れても)まじでお金ないから制作延期かなぁ、ということになります。切実!
当店にてご予約いただく、あるいはこれから立ち上がってくるであろう、他の、特に個人・小規模店舗でのweb販売や店頭で予約いただくと、比較的ダイレクトかつ短期的な入金サイトで当店にお金が戻ってきます。具体的には10月末くらいに仕入(卸売)代や、web販売分の入金があります。そして、なんとこの本の印刷代は10月末支払い予定なんですね〜。偶然の一致!!
別に、本なんていつ出会って、いつ読んでもいいものなので、無理強いはしないのですけれども、こう、なんというか、このめんどくさいサイトで長文を読んでいただいている方で、もうこれはぜったい買うなぁ、というテンションの方は何らかの方法で予約などしていただけると、たいへん、たいへんにありがたい感じです!
H.A.Bの直販では予約で「冊子」のバックナンバーがついてきます。
仕入れについて
本書の仕入れは、どの小売店(書店じゃなくてもいいです)でも、同一の条件で仕入れてただけます。また、取次経由の発注にも対応しております。仕入れたいという方は、特設サイトに情報をまとめていますので、そちらを参照のうえご発注ください。
以上です。ぼくが一番楽しみにしているフシがありますが、皆様も楽しんでいただけますと幸いです!
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