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映画「どうすればよかったか?」
※ネタバレあり
映画「どうすればよかったか?」を神戸の元町映画館で観てきました。
スゴい映画で、最初から最後まで衝撃的でした。 統合失調症の娘を抱えた家族の長い年月のドキュメンタリーですが、藤野知明・監督の伝え方もスゴいと思いました。 久しぶりに心の響くいい映画を観ました。
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私が当事者である成人後の虐待の後遺症である複雑性PTSDと、この映画との関連性についても深く考えさせられました。
複雑性PTSDの急性期が、いかに滅茶苦茶で、重度の病かなんて、他人に説明しても、見たことがない人には、伝わらないのです。
5年前に以下の書籍「わたし、虐待サバイバー(ブックマン社 2019)」を出版した後、多くのマスコミの方に取り上げて頂き、テレビでのドキュメンタリー番組の依頼もいくつか受けました。だけど、精神疾患の当事者のドキュメンタリー番組は、ある程度、病気が回復期に入り、他の同じ当事者と繋がって活動をしたり、講演会をしたりする回復期のドキュメンタリーは撮影できても、複雑性PTSDが急性期で、病気で滅茶苦茶な日々になっていても本人は病識すら持てず、精神科の閉鎖病棟に隔離され、大声を出して喚き散らし、大暴れしている急性期のドキュメンタリーは撮影できないのです。
でも、映画「どうすればよかったか?」は、完全でなくても、今まさに、急性期の統合失調症の方や、その方に関わる家族の心理状態、逼迫している生活環境を撮影し記録として残していることが「稀有」な作品なのです。
複雑性PTSDの急性期の状態を映像化して世間に見せたい。そうでなければ虐待の後遺症など問題意識すらもってもらえない。そう思った映画でした。
少し話は変わりますが、作家・メアリー・シェリー(虐待サバイバー)のフランケンシュタインという世界的な名作が世界中で受け入れられているように人間は大差ないから、同じような環境で育つと同じような人間になってしまうのだと思います。フランケンシュタインは、NHKの100分de名著を観て頂けますと、解りやすく解説されているので、新たな発見があるかと思います。
人間とは、無限の多様性がある一方で、普遍性もあるのだと思います。映画「どうすればよかったか?」を観た時、統合失調症の家庭と虐待家庭という違い(多様性)はあれ、共通点も大きいと感じました。虐待親や虐待サバイバーが、「愛憎」になるように、映画「どうすればよかったか?」の当事者たちも家族や親、統合失調症になってしまったわが子に対し、愛憎になっていると感じました。
弟である藤野監督が統合失調症のお姉さんに「両親が憎いよね?でも、憎しみだけじゃないよね?育ててくれたもんね?」と話しかけている場面があるように、息子も娘さんも、両親に対し、愛もあれば憎しみもあるという状態だったのだと思います。
また、親が子どもに愛情があっても、崩壊していく「どうすればよかったか?」は虐待親にも通じるもので、世間が誤解しているように虐待親も常に子どもを虐待しているわけではなく子どもに愛情も確かにある。そういう、家族という他者に対する感情の一貫性のなさが虐待家庭も、「どうすればよかったか?」も、普遍性のあるテーマだと感じました。
愛があっても崩壊する家族というのは、どの人間も内包している「脆弱性」ではないかと思います。そこが、世間の幸せな家庭でも共通している点だと思うのです。誰しもが愛という強さを持ちながらも、脆弱性も内包している。人間として、愛と脆弱性は、誰しももっている普遍性だと感じました。
統合失調症の場合、大抵は投薬で症状が落ち着きますから、虐待サバイバー(複雑性PTSD)との大きな違いと言えば、精神科に繋がれば症状が劇的に改善したことでしょう。 だけど、映画「どうすればよかったか?」は統合失調症の激しさも実際の映像だから衝撃的でしたが、医師である両親が統合失調症だと頭では理解ているはずなのに、娘の病気を20年以上も認めない認知の方が恐ろしかったです。とにかく映画館で観てください。スゴイ作品でした!
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