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生まれ生まれ生まれ生まれて 生を始める暮らし 死に死に死に死んで 死を終える暮らし


三界の狂人は 狂せることを知らず
四生の盲者は 盲なることを識らず 
生まれ生まれ生まれ生まれて 生の始めに暗く
死に死に死に死んで 死の終わりに冥し

「秘蔵宝鑰」 空海


空海の残した言葉。なんとなく好きな言葉。
はじめて見た時には、神秘的なような、恐ろしいような、おどけたような、掴めるようで掴めないような感じを受けたのを覚えている。噛めば噛むほど旨みが出る、そんな味わいがある。

この世界に生まれて、そして死にゆく、その定めの中を生きている。何度も何度も生まれては、その度に死んでゆく。生まれてきた時には何も見えず暗い。死にゆく時には全てが見えた上で、また冥いのだろうか。ただ、その冥さにはどうも眩しさを感じる。この生涯の終わりには、その眩しさを感じながら、目を瞑りたいものだと思っている。

生まれ生まれ生まれ、死に死に死に、その冥さと眩しさを見つめながら生きていく。それは暮らしの中にあるものだと思った。今ある暮らしの中に生まれと死にを繰り返す。そうする内に、空海の見た世界を共に生きられるのかもしれない。そういう希望を抱いている。


生まれ生まれ生まれ生まれて 生を始める暮らし 死に死に死に死んで 死を終える暮らし



~仏教のうんちく~

三界:欲界・色界・無色界の三つの世界のことであり、衆生が生死を繰り返しながら輪廻する世界をその三つに分けたもの。
四生:胎生・卵生・湿生・化生、あらゆる生き物。

「秘密曼荼羅十住心論」
第一住心:異生羝羊心 - 煩悩にまみれた心

 無知な者は迷って、わが迷いをさとってない。雄羊のように、ただ性と食とのことを思つづけているだけである。
第二住心:愚童持斎心 - 道徳の目覚め・儒教的境地
 他の縁によってたちまちに節食を思う。他の者に与える心が芽ばえるのは、穀物が播かれて発芽するようなものである。
第三住心:嬰童無畏心 - 超俗志向・インド哲学、老荘思想の境地
 天上の世界に生まれてしばらく復活することができる。それは幼な児や子牛が母にしたがうようなもので、一時の安らぎにすぎない。
第四住心:唯蘊無我心 - 小乗仏教のうち声聞の境地
 ただ物のみが実在することを知って固体存在の実在を否定する。教えを聞いてさとる者の説はすべてこのようなものである。
第五住心:抜業因種心 - 小乗仏教のうち縁覚の境地
 一切は因縁よりなることを体得して無知をとりのぞく。このようにして迷いの世界を除いて、ただひとり、さとりの世界を得る。
第六住心:他縁大乗心 - 大乗仏教のうち唯識・法相宗の境地
 一切衆生に対して計らいなき愛の心を起すことによって、大いなる慈愛がはじめて生ずる。すべての物を幻影と観じて、ただ心のはたらきのみが実存であるとする。
第七住心:覚心不生心 - 大乗仏教のうち中観・三論宗の境地
 あらゆる現象の実在を否定することによって、実在に対する迷妄を断ち切り、ひたすら空を観ずれば、心は静まって何らの相なく安楽である。
第八住心:一道無為心(如実知自心・空性無境心) - 大乗仏教のうち天台宗の境地
 現象はわけへだてなく清浄であって、認識における主観も客観もともに合一している。そのような心の本性を知るものを称して、仏(大日如来)というのである。
第九住心:極無自性心 - 大乗仏教のうち華厳宗の境地
 水にはそれ自体の定まった性はない。風にあって波が立つだけである。さとりの世界はこの段階が究極ではないという戒めによって、さらに進む。
第十住心:秘密荘厳心 - 真言密教の境地
 密教以外の一般仏教は塵を払うだけで、真言密教は庫の扉を開く。そこで庫の中の宝はたちまちに現われて、あらゆる価値が実現されるのである。

「秘密曼荼羅十住心論」空海



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はるぽん
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