不妊治療中の家庭で、男性ができること。
不妊治療は女性への負担が、精神的にも肉体的にもとても大きいです。
特に体外受精に突入してからは、人工授精までとはのしかかる負荷が比べ物にならないことを身をもって知りました。
心身ともに疲弊してネガティブ発言の増えた私を気遣って、夫がある日、ネットで「不妊治療中に夫がしてあげられること」を調べたそうです。
なんて嬉しい。めちゃくちゃ嬉しい。それで、何て書いてあったの?
夫:「”男にできることは何もない”」
私の心:「・・・ハ?(# ゚Д゚)」
そんなわけあるかい。
と強く強く思ったので、不妊治療に挑んでいる夫婦の妻目線で、夫にやってもらえたら嬉しいこと・嬉しかったことを書いていきます。
①.家事を今までよりも多めにやる。
不妊治療はステップが進むほど、薬漬けになる毎日です。女性は1日のあいだで何回も、何種類も訪れる服薬・投薬スケジュールを着実にこなしていかなければというプレッシャーを、常に頭と心とおなかに抱える毎日になります。
たとえば、体外受精の「移植周期」だとだいたいこんな感じの1日です。
朝:起床すぐに基礎体温を測る。
朝のトイレを済ませたら、膣錠を挿入する。
身支度をしたら、処方された薬(2~3種類)を飲む。
通勤カバンに薬袋一式を入れて出勤。
昼:昼休憩のあいだに、トイレで膣錠を挿入する。
昼休憩のあいだに、処方された薬(2~3種類)を飲む。
夕:退社後、病院に行って採血をする。
夜:食後、処方された薬(2~3種類)を飲む。
入浴前に前々日の貼り薬をはがして入浴。
お風呂からあがり次第、下腹部に新たな貼り薬を貼る。
就寝前に、膣錠を挿入する。
これが体外受精の「採卵周期」になると、服薬がすべて自己注射になるので、負担は4倍(感覚値)ぐらいに膨れ上がります。
この薬漬けスケジュールを常に頭のなかで意識することと、実際に「飲む」「貼る」「挿入する」という行動を何度も何度も繰り返すことは、着実に心の余裕を奪っていきます。
更にこれら薬の副作用として、体がはれたり、腹痛を伴ったり、怠さを引き起こすことも、多々あります。ちなみに私も今、おなかがじんわり痛いです。
そうすると、それまで何の苦労にも感じていなかった「家事」が、苦痛になってくるんです。
男性の皆さんも、お仕事や、妊活のための健康な体づくりなどでお忙しいところとは思います。それでもなお、不妊治療における女性の負担が男性の何十倍も大きいことは、事実です。
洗濯物を干す。
洗濯物をたたむ。
たたんだ洗濯物を、自分でしまう。
床にクイックルワイパーをかける。
食後の洗い物をする。
家じゅうのゴミを集めて、ゴミ出しをする。
お風呂掃除、洗面台掃除をする。
・・・家事って数えきれないほどの種類があります。
何からできるかわからなければ、奥さんに「自分ができる家事、やってほしい家事」を聞くところから、まずは始めてみてください。
②.服薬スケジュールを一緒に管理把握し、声をかけてあげる。
①でも書いたように、不妊治療はステップが進むほど多くの薬を頻繁に服薬・投薬しなければならなくなります。
そのスケジュールを「自分が飲むものではないから」と無関心になることなく、「あれ飲んだ?」「これ貼る日じゃない?」と、一緒に管理共有をしてあげてもらえるだけで、女性の精神的負担はかなりやわらぎます。
また、ひとりぼっちで不妊治療に立ち向かっている悲しい気持ちも、かなり減らすことが出来ると感じます。
③.説明会には一緒に参加する。
私の通院先では、不妊治療のステップごとの説明会において、「夫婦参加」と「女性のみ参加」はだいたい半々の割合だそうです。わが家はありがたいことに夫が「行ける限りは全部行く」と言ってくれているので、ここまでの説明会はすべて一緒に参加してきました。
説明会を受けることで、どんな治療が具体的に始まるのかを男性側も知ることができます。また、夫婦間でいきなり生々しい言葉(膣とか、子宮口とか)を交わすことに最初は私達も抵抗があったのですが、説明会を受けていくなかでこれらが世俗的な下品なニュアンスではなく、治療に向けた客観性をもった医療用語として交わすことが出来るようになりました。
あと個人的に大きかったのは、自己注射の練習に主人が立ち会ってくれたことです。もちろん見ているだけなのですが、私が恐怖と勇気をふりしぼって、半べそをかきながらおなかに針を突き刺す姿は、とても鮮烈なショックを受けたと言っていました。それ以降、今まで以上に「負担をかけてごめんね。ありがとうね」と言ってくれるようになりました。
④.投薬サポートをする。(貼り薬、自己注射)
病院によって処方されるものはもちろん異なると思いますが、なかには私のように貼り薬と飲み薬を併用するところもあると思います。
貼り薬が処方されたら、男性の出番です!(女性が断ったら素直に引き下がってください。笑)
薬を包装から取り出して、女性のお腹か背中に貼るだけです。
私の場合、途中まで自分で貼っていましたが、途中から気分転換に夫に貼ってもらうようにしたら、とても気持ちが軽くなりました。それほどまでに毎日の服薬管理は心と頭を支配していたんだなと実感しました。
また、採卵周期で自己注射になった場合は、アルコール消毒と注射後のテープ貼りを、主人にしてもらいました。
自己注射はしんどいです。毎日何回も、ひとりぼっちでこなすのは苦痛でしかありません。
そして準備物も作業も多い。消毒用アルコールを出して、注射針とシリンジをそれぞれの包装から出して合体させて、場合によっては薬を溶かして混ぜて、吸い取って・・・という作業を伴います。
医療従事者でない多くの人は、これらを慣れぬ手つきで不安を抱えながら、ひとつずつ準備していきます。
アルコールとテープの準備を男性にしてもらえるだけでも、女性側は注射器と薬品の準備に専念できるので、落ち着いて作業できるように思います。
これも、女性側が「何もしないで」と言った場合は、隣で見守るにとどめていいと思いますが、「アルコール消毒と注射後のテープはやるよ」とまずは声をかけてみてあげてもらえたらな、と思います。
⑤.「負担をかけてごめんね、ありがとう」と声をかける。
私が苦しんでいるたびに、夫が言ってくれる言葉です。
とても簡単なことですが、これを言ってもらえるだけで嬉しいし、もう少し頑張ろうと思えます。
不妊治療は長引くほど苦痛が増して、情緒不安定にもなりやすいです。(少し前のニュースで、不妊治療中の女性の約7割は鬱の兆候を抱えると言っていました。)
本来、大切な家族であるはずの夫に対して優しく接することができず、苦しい気持ちに苛まれることが私も何度もありました。
「甘えるな」とお𠮟りを受けそうな気もしますが、大事なパートナーの女性が背負っている不妊治療の負担のぶんだけでも、甘えさせてあげてもらえたら、嬉しいなと感じます。
不妊治療もふくめた日常が、夫婦の生活です。仕事、家庭、育児、いろんな荷物がありますが、どちらか一方が背負いすぎることのないよう、工夫と試行錯誤をかさねながらコミュニケーションを大切にしていくことが肝要なのだろうなと感じています。