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援農の畑からの景色|茉記

この街に住み始めた頃、これからは畑ができたらいいなと思っていた。
近所の日用品店にふらっと寄ったらイベントが行われていて、週末に地元農家さんの援農を行っているグループが出店していた。グループでも畑を持ち、無肥料無農薬で野菜を育て、収穫した野菜や野菜の加工品をマルシェで販売したりしているとのこと。初心者のわたしでも安心して参加できそうな雰囲気に、援農体験を申し込んだ。

体験の日は、サツマイモの収穫があった。
援農体験で収穫に関われることは、ラッキーらしい。出荷ができるように、サツマイモに傷をつけてはいけない。畑を耕したことも、道具を使ったこともないわたしは、説明を聞きながら緊張していた。
それにサツマイモの収穫は、幼稚園以来だ。
収穫を始めるとすんなりとはいかない。幼稚園での収穫体験は、園児たちが収穫しやすいように農家さんが準備してくださっていたことにも気づかされた。

堀り起こした土の中に、ベランダのプランターに登場しない虫たちが次々に現れた。
土の中に住んでいるからだが長めの虫が、わたしは得意ではないということを忘れていた。
一緒に収穫をしているメンバーは、誰ひとり虫に反応しない。いちいち反応するわけにはいかない雰囲気の中、わたしはひそかに呼吸を整え、なんとか気持ちを切り替えた。
土の中は、この虫さんたちの住まいなのだ。
「こんにちは、おじゃまします」と虫さんたちにテレパシーで伝えながら、虫さんにも収穫にもだんだんと慣れていった。このまま土を掘って行ったら、ひとつの知らない国がありそうなきがした。

援農体験の翌朝は、からだの痛みで起き上がることも大変で、これまで使っていなかった筋肉だけを使ったような感覚だった。
たった半日でも、市場や農家さんの野菜がわたしの元へ届くまでに、どれだけたくさんの存在と、そのチカラが関わっているかをふりかえるにはじゅうぶんだった。
そして週末援農に通い始めることにした。
援農先は少人数やご高齢の農家さんが多く、収穫を終えた畑で次の野菜を育てるための準備で、雑草を刈ったり、マルチ剥がし、ビニールハウスの片付けなど様々な作業をした。
畑で作業をしていると、かわいい鳥が逃げずにずっと後ろからついてきたり、皆が声をあげるほど美しいテントウムシが現れたり、もともと一緒に地球に暮らしているのに意識していなかった存在とのふれあいもたくさんあった。そしてなにより、収穫したての野菜のおいしさを知った。

このエッセイを書いている途中、気分転換にアプリで韓国語の勉強をしたら、例文にはじめて土や虫が登場した。しばらく援農はお休みしているが、この流れで新しい援農先も見つかるかもしれない。

#援農 #畑#野菜#収穫#土の中の虫#リレーエッセイ#8巡目3番目


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HAKKOU(はっこう)/リレーエッセイ
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