太古の昔、チケットがなくても会場に行けば、なんとか入れた
今日は行きたいLIVEがあるのだけど、チケットが1次先行販売で完売してしまい、舐めてかかっていた私は、日程的にも行けるかわかんなかったし、1次先行に応募せず、チケットを取ることができなかった。ツイッタランドで、譲って下さるという書き込みにDMを送っているが、なんとなくもう手に入れることはできないなと思う。
今は完全に悪とされているけど、太古の昔にはダフ屋が当たり前にいた。
「チケット買うよ~チケット売るよ~」
と、小声で喋りながらウロウロするおじさんが居た。
興行とは暴力団の資金源でもあった。興行を行うにあたって、みかじめ料として、チケットを暴力団に流さないと興行ができないという過去があったらしい(実際よく知らない)。
だからまあ、そういう変なおじさんたちが何故かチケットをいっぱい持ってて、定価より高い値段でチケットを売るのだ。
太古の昔、チケットが取れてなくても、とりあえず会場に行けば、なんとかなった。
古典的なやり方だが、
「チケット譲ってください!」
と看板を持って、ひたすら立ち続けるのだ。
SNSがなかった時代、それしか方法がなかった。
ダフ屋が居るくらい大きな会場なら、ダフ屋から買った。大体LIVEの1曲目が始まってからが、交渉のスタートだ。ダフ屋としては売らなければただのゴミ。だから、1曲目が始まれば、もう売るチャンスはないと言っていい。だから、定価の半額とか、1000円とか、べらぼうに安い金額で、交渉して、大体定価より安くチケットを手に入れて、少し遅れて会場入りする。
ダフ屋の居ない小さめのLIVEハウスだと、とりあえず会場に行って「チケット譲ってください」の看板を持って半日くらい立ちんぼをする。
そして、譲ってくれる人に恵まれなければ、大体開場して、観客を全員会場に入れた後、LIVEハウスのスタッフさんが、「チケット譲ってください」の看板を持ってる子を入り口に集めるのだ。そして人数を数えて、大体全員定価で入れてくれた。
収容人数とか、今だと法律とかで厳しいのかなぁ?しばらくそういう方法で入場させてもらった事がないので、今現在の常識は正直知らない。太古の昔は、そういうおおらかさがあった。
だからチケットが取れなくても、とりあえず会場に行けば、チケット余ってる人に譲って貰うか、ダフ屋か、LIVEハウスの人に定価で入れて貰うか…。まあ、チケットが取れてなくても、どうしても行きたければ、会場に早めに着いてさえ居れば、なんとかなったのだ。
チケットが余っていても、「チケット譲ってください」の人に譲ればいいから、それもなんとかなる時代だったのだ。
今は転売防止が強く言われて、違法、悪、とされて居るけど、まあ、ちょっと昔はそんな事もなかったんだよ。って話。
まあなんか、べらぼうに高い金額で、正規の値段より、ダフ屋行為をする人が儲かるのはどうなん?って考え方も確かにまあそうなんだけど、LIVE行きたい人にとっては、それでもその金額出してでも行きたいわけだからねえ。
1番最後にダフ屋にお世話になったのは、3年前のはっぴいえんどの武道館に行った時。2daysで、初日に使ったチケットをそのまま2日目も入場に必要だったんだけど、私は物をすぐなくす(切符とか本当になくす、携帯もすぐどっか行く、財布もすぐ行方不明になる、鍵類も訳わかんなくなる)んだけど、2日目入場しようとしたら、昨日使ったチケットがどうしても見つからなくなってしまった。入り口の人に交渉するも、一旦定価の金額(15000円)払って入って、後で本当にチケットを持っていたのか、照会して、手数料を引いて返金するしか方法がないと門前払いされた。
15000円なんて、ぽんと出せるような懐事情ではない。財布にはお札の1枚も入っておらず、小銭だけ。そうこうやり取りしてる間にLIVEは始まり、どんどん進んで行く。
はっぴいえんどは1番最後の出番ではあるけど、高校生の頃掲げた人生で叶えたい三大目標のひとつなのだ。(1.村上春樹を生で見ること。2.宮崎駿を生で見ること。3.はっぴいえんどのLIVEに行くこと)
大滝詠一の訃報を聞いた時、何よりも絶望したのは、もうはっぴいえんどをオリジナルメンバーで観ることは叶わなくなったという事実だった。
1973年のラストLIVEは、まだ私は産まれてすら居ない。1985年のイベントは3歳だ。行けるわけがない。
でも、大滝詠一抜きで「はっぴいえんど」の看板を掲げて演奏をしてくれるのだ。やっと夢が叶うのだ。
昨日観たとはいえ、やはり最終日は観たい。
でも、どこを探しても、昨日使ったチケットが見つからない。会場の人にとりあえず15000円用意してこい。コンビニのATM行ってこい。と言われたので、コンビニのATM行ったっておろすお金がないがないんだよ!と思いながら、泣きながら、武道館からコンビニへ向かっていた。
そしたら、皇居の門の入り口の所に、なんだか昔懐かしい、おじさんの集団が…。ダフ屋だ。
武道館から、人気の全くない道を、泣きながら逆走する、私はもちろん声を掛けられた。「どうしたん?チケットあるよ」と。
私は泣きながら事情を説明した。15000円なんてない。はっぴいえんど観れないって。
そしたらいくらあるのか?と聞かれた。
小銭しかないと、財布からじゃらじゃらと小銭を出した。これしかないと。
数百円だ。
ちょっとボスと相談してくれ、と。
そしたらその集団のボスのおじさんが出てきて、持っていたチケットの束から、多分1番悪い席をその小銭で譲ってくれた。
「そんな泣かないで、行っておいで」「早く行かないとはっぴいえんど始まっちゃうよ」と。
その売れ残ったチケットの束を見て、転売防止が叫ばれるようになって、ダフ屋を当てにして、チケットを持たずに会場に来る人はもう居ないんだなと思った。おじさん達は、はっぴいえんどだから、昔のようにダフ屋を利用する人が居るだろうと、チケットを確保したけど、SNSがある時代。もうその役割はなくなっていた。
ダフ屋のおじさんにお世話になるのは、これが最後かもしれない。
最近はどんなに大きなLIVE会場に行っても、あのおじさんたちは見かけない。
若い子はダフ屋との交渉なんて、知らないのかもしれない。
飛んで火に入る夏の虫、みたいに、大きな会場だったら、必ず居たのにね。
LIVEが始まってからが、交渉のスタートとか、知らないんだろうね。
まあ転売防止もいいけどさ。確かにちゃんと正規ルートでチケット確保するのが、正しいけどさ。2ヶ月前のチケットの発売日に、確実にLIVEに行けると言えない時あるじゃん?急に今日の予定空いちゃっていけるようになった!とかさ。
なんか、そんなおおらかさはある程度あってもいいんじゃない?と思うけど、時代の変化で、常識はなんでも直ぐに変わるから。
今日のチケットは諦めましょう。
昔だったら、迷わず会場行ってなんとか潜り込んでたのにね。
アヒト頑張れー!