イベリアの異邦人

1952年2月生。愛媛県西条市出身。1984年以降スペイン・バルセロナ在住です。妻はスペイン人、一人息子は既に独立しています。公私ともに長きに亘って異なる文化の中に身を置いてきた者の体験談を含むバラエティに富んだ話題を、私なりの文体で提供できれば、と思っています。

イベリアの異邦人

1952年2月生。愛媛県西条市出身。1984年以降スペイン・バルセロナ在住です。妻はスペイン人、一人息子は既に独立しています。公私ともに長きに亘って異なる文化の中に身を置いてきた者の体験談を含むバラエティに富んだ話題を、私なりの文体で提供できれば、と思っています。

最近の記事

セゴビアこぼれ話

 この4月末のセゴビア滞在は、5泊実質5日というゆったりとした日程だった。その期間中一日で、セゴビアの南西約70㎞に位置するアビラ(Ávila)まで足を伸ばし、さらにもう一日を、セゴビアから11㎞ほど南東にあるサン・イルデフォンソ(San Ildefonso、通称ラ・グランハ=La Granja)訪問に充てた。アビラは、11世紀末から12世紀にかけて築かれた約2.5㎞の城壁が残る町として有名だ。後者は知名度こそ劣るが、ベルサイユ宮殿を模して1820年代に建てられたサン・イルデ

    • セゴビア水道橋の考察あるいは水道橋から考察したセゴビア

       私がセゴビア(Segovia)を再訪したのは、この4月の末のことである。1988年に半日ばかり滞在して以来だから、実に34年ぶりの訪問だった。  マドリッド(Madrid)の北87㎞に位置するセゴビアには、ローマ時代に築かれた水道橋が、ほぼ完璧な形で残されている。今回はその水道橋と、たっぷりと時間をかけて対峙することができた。新たに得られた知識や気付き気付かされたことどもがいろいろとあるのは、何度か現場に足を運び、納得いくまでそこに身を置いたからこそである。さらに旅から戻っ

      • 洋楽タイトル考

         もう随分前のことで、ラジオの音楽番組で聞いたのか音楽雑誌で読んだのか記憶が定かではないのだが、そこで語られていたのは、日本のレコード会社の担当者が洋楽のタイトルを日本語に置き換える際、何を拠り所とするか、ということだった。挙げられていたのは、1)原題、2)歌詞、3)曲調、の3点である。僕自身の理解に基づいてこれらの3点を少し説明するなら、次のようになる。  1)は当り前のよう見える。が、ことはさほど単純ではない。多くの場合、原題を直訳したのでは、こなれた日本語にはならない。

        • ガリシア風土記                                     その2:オレオのある風景

          ガリシア風土記                                     その2:オレオのある風景  ガリシアを巡ると、あちこちで目につくのは、屋根が切妻になった高床式の石造りの倉だ。その屋根の三角形の頂点には、建屋の規模とは不釣り合いなやや大きめの十字架が立っている。この倉の大きさはまちまちであるが、平均的には間口が2~3m、奥行きが4~5mと言ったところか。石の壁には、縦方向あるいは横方向いずれかに規則的に隙間が穿たれている。石造と木造の折衷のものは、側壁

          ガリシア風土記 その1:オブラドイロ広場~巡礼の道が終る所

          ガリシア風土記 その1:オブラドイロ広場~巡礼の道が終る所  高さ74mの威容を誇るサンティアゴ大聖堂を仰ぐ、自然石が敷き詰められた広場のあちこちに、3,4人から7,8人の小集団がいくつかできている。帆立て貝の飾りを付けた大きめのリュックを背負ったまま、大聖堂をバックに写真を撮り合う女性4人組。リュックを傍らに置き、足を投げ出したり胡坐をかいたりして座り込んでいる男女のグループ。ほとんどが、ややくたびれたTシャツにジーンズあるいは短パン、そして履きこんだ感のあるスニーカーと

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          クエンカに「宙吊りの家」はない

          イベリア半島のほぼ中心に位置するマドリッド(Madrid)の東南東、 直線距離で170㎞ほどの所に、クエンカ(Cuenca)と言う町がある。地中海岸のバレンシア(Valencia)からは西北西に約190㎞隔たった内陸の町だ。人口は55千、同名の県の県都である。 このクエンカには、”Casas Colgadas” と呼ばれる、他では見られない特殊な家屋群がある。”casas”は“casa”=「家」の複数形、 “colgadas”は過去分詞形容詞 “colgado”の複数女性形で

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