事業をつくるときの「判断基準」 vol.2
前回、事業をつくるときの「判断基準」を書きましたが、今回はThink Bigの考え方の中でも未来からの逆算について記載します。
価値のある事業や仕事とは何か?
容易にパッと思いつく施策におぼれているときほど、この問いがぐさっと刺さります。今からやろうと考えていることが、「待ってました!」「早くよこせ!」というくらいに、果たして本当にユーザが喜んで使うものなのか?という問いに置き換えても良いかもしれません。
もしこの問いの答えが不明瞭であるならば、何かがまだ紐解けていなかったり、根本が違っていたり、ちょっとしたズレが生じているときです。今までの事業創造を振り返ってみると、そのいずれかがあることに気づかず(検証せず)強引に押し進めていたときは、ほぼ100%上手くいきませんでした。
まず実験してみることと、何も考えないことは同意ではありません。
スピード重視は時間を早めるための作業効率や仕組みを生み出すこと、それに紐づいたあらゆる意思決定のスピードを上げることであり、本質的に必要な要素を省くことではありません。スピードを別の解釈で捉えてしまい、本来もっとも考えるべき最重要なユーザのことを置き去りにして、ただスピード早く行っても、何も意味がありません。
そもそもの事業価値が生まれず、無風で終わります。
そうならないためにも、Think Bigは重要な役割を果たします。そしてThink Bigを起こすためには、何よりもユーザ理解が必要です。アングラーズのバリューの一つに、「釣り人の課題を捉える」を掲げているのもまさにそのためです。
釣り業界の課題は、情報がすぐ見つからないこと
例えば、アングラーズの原点である創業初期に立ち上げた事業「釣果記録アプリ」も、釣り人の課題を深く観察したことにより生まれました。
今でこそ釣果記録アプリは珍しくありませんが、私たちがつくり始めた10年前はまだ世の中に存在していませんでした。ネットでの釣果記録はブログで書いている人がいるくらいで、Instagramも創業したばかりでまだ日本で全然流行っていない頃でした。
アナログでは記録している人がいたり、雑誌で釣果記録をみている人がいたり、釣船サイトに船長が地道に投稿している釣果を見ている釣り人がいたりしている状況でした。
そして当時何より釣り業界の課題だと思ったのは、釣果情報を含めた必要な情報がすぐ見つからないことです。ネットで調べると圧倒的に情報量が少なく、いくつものサイトを跨って調べないと、欲しい情報に中々たどり着けませんでした。
良い釣り体験するには「釣具」だけではだめで、有益な「情報」がないと上手くいきません。この有益な情報を数多く集め、釣り人に提供するための「情報基盤」が世の中に必要だと思い、アングラーズ事業を開始しました。その第一歩として立ち上げたのが釣果記録アプリです。
それが今でも会社の柱となっており、300万匹以上で35秒に1匹投稿されるまでになりました。もちろんその過程にはハードシングスなことが山ほどありましたが、国内最大の釣りSNSになれたのは、オンラインで釣果記録する人々が10倍以上になる世界を想像できたから。想像できるテーマに挑戦できたからだと思います。
もしあのとき5年後10年後を想像せず、当時の枠組みだけで思いつく目先の利益を追った小さな挑戦を選んでいたとしたら、今のアングラーズはなかったと思います。
Think Bigを念頭におきながらも、ユーザへの地道な観察や理解を蔑ろにせず、本質的課題を発見したこと、そこから泥臭く仮説検証を繰り返したからこそ成長したアプリだと感じています。
そしてここで重要なことが、今でこそ釣り業界や投資家の方々から温かいお言葉を頂きますが、当時は全く期待をされていませんでした。
先述したように、10年前はまだInstagramも流行っていない時代だったので、そんな状態で釣果の写真を撮って記録すると言っても、投資家の人も釣り業界の人も、釣り人でさえも「?」な状況でした。
ほんとごく一部の釣り人(アーリーアダプタ)と、唯一親しい起業家仲間がワクワクして応援したり手伝ってくれたくらいで、殆どの人からは
状態だったと思います。
その頃の利用データを見れば一目瞭然ですが、
こんな感じです笑。ごくわずかな使ってくださるユーザはいましたが、最初の6、7年はグラフでみると面白いくらい無風ですよね。
それくらい周りからは「そんなのやって上手くいくの?」という目で見られていたと思います。現に昔ある経営者から、アングラーズ事業をやめてみんなうちの会社に来ない?という誘いを受けたこともありました(もしそのとき辞めていたら、今のアングラーズは存在しなかった)。
最近巷でも、NFTやWeb3などが台頭する中で、「怪しい」「そんなの浸透するの?」「上手くいくわけないじゃん」ということがささやかれ、20年前のネット黎明期の頃もこんな感じだったとよく言われているかと思います。
アングラーズも同様で、当時は周りの反応が今と異なりました。
否定されたり誰にも認められないなか進むのは、勇気がいることかもしれません。とくに成果が出ない状態が続くと、終わりのない真っ暗闇のトンネルを進んでいるような気分になります。それでもユーザが抱えている本質的課題を解決することに集中し、世の中に必要なものだと信じて進んできて良かったと感じています。
スタートアップでは、
とよく言われますが、アングラーズも先にリスクをとったことにより、釣りアプリの第一想起をとることができました。仮にもし今から同じことを始めても、遅すぎて到底今の状態にはなれません。
今からやることは、今のタイミングで始めると良いThink Bigを仕掛ける必要があります。当時思い描いたように、これからのアングラーズも新しいThink Bigをさらに仕掛けていきます。
一方、よくあるこのマーケットはどれくらい大きくなるのか?に関しては、あまり良くない問いだと考えています。これはその瞬間で想定できる、すでに顕在化したマーケットサイズでしか表せません。
例えば創業事業の釣果記録アプリも、先述したように当時のマーケットで考えたら全然ありませんでした。上記の問いは、目先の利益やすでに有象無象に競合がいるテーマが出てくるだけです。
それよりも未来から逆算して、「この事業は10年後、世の中で当たり前に使われるものになっているのか?」のほうが良い問いです。
事業は短期的に儲かるものから、長期的に価値を育むものまで様々ですが、企業はリソースの関係で、ある程度の選択と集中を迫られます。顧客から少しだけニーズがあり目先の利益が生まれやすいものでも、本質的な価値をつくるためには、それをやらない決断が必要になります。
求める人たちが少しでもいると判断がブレやすいかもしれませんが、そんなときこそThink Bigが良い判断基準となってくれます。
自分たちが一体どこに進みたいのか。
釣り業界をさらに盛り上げるために、釣り人の人生をもっと心豊かにするために、自分たちができることは何なのか。センターピンをブラさず突き進むこと、ベースとなる仕組みを生み出すことの大切さに気づかせてくれます。
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