短歌連作: 返す光に
木苺の種がぴったり歯につまりそれを奇跡と呼べないでいる
真夜中の川は見えないけど見える町の明かりを背景として
黒板の数式ずらりとのびてゆく窓の向こうの夕闇のなか
包丁を洗った水が包丁の返す光に洗われている
「包丁を洗った水が包丁の返す光に洗われている」 この歌は、2018年9月28日付けの北日本新聞「北日本文芸」の歌壇で「天」に選んでいただいたものです。選者は佐佐木幸綱先生。「天」は初めてだったのでとても嬉しかったのを覚えています。
水や光など、きらきらしたものが好きなのです。よく短歌の題材になります。包丁を水で洗うという何気ない日常のひとコマを切り取った、自分でも好きな歌のひとつです。