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2025-02-03 米国金融市場動向
「市場は短期的には人気投票機だが、長期的には計量機である。」
この日の市場は関税懸念で急落したものの、メキシコ関税の延期を受けて回復するなど、短期的なニュースに大きく反応しました。この格言は、市場が短期的には感情やニュースに振り回されるものの、長期的には企業の本質的な価値に収束することを表現しています。
総括
米国株式市場は3日、関税懸念による下落で始まったが、トランプ前大統領がメキシコへの関税発動を1か月延期すると発表したことで一部回復した。ダウ平均は0.27%安、S&P 500は0.75%安、ナスダックは1.2%安で引けた。IT・消費関連株が売られた一方、ヘルスケアや生活必需品セクターが堅調。米国債利回りは低下し、安全資産への資金流入が見られた。市場は今後も関税政策と景気指標に注目していく展開となりそうだ。
1. 株式市場
1.1 概況
ダウ平均: -0.27%(44,420.19)
S&P 500: -0.75%(5,995.01)
ナスダック: -1.2%(19,392.23)
米国市場は、関税引き上げを受けた売りで下落したものの、メキシコとの関税延期合意を受けて下げ幅を縮小した。防御的なヘルスケアや生活必需品セクターが比較的堅調だったが、半導体を中心としたハイテク株が売られた。
1.2 VIX指数の日中の動き
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VIX指数は取引序盤に上昇し、20台前半を維持していたが、関税延期発表を受けて急低下。その後は17台後半まで低下したものの、終盤にかけて再び上昇する動きが見られた。市場の不安定なセンチメントを反映している。
VIX® Index Charts & Data
1.3 株式市場変動要因
ポジティブな要因
メキシコへの関税発動延期により市場心理が改善
メキシコ政府が北部国境に1万の国家警備隊を配備することで合意し、貿易摩擦懸念が一時的に緩和
米製造業景況感指数(ISM)が50.9と2年ぶりに成長を示し、景気の底堅さが確認された
防御的なヘルスケアや生活必需品セクターが比較的堅調
タレン・エナジーがデータセンター向け電力需要の拡大期待で上昇
ネガティブな要因
トランプ政権の関税引き上げ発表により貿易摩擦懸念が高まる
Nvidiaなどの半導体株が、中国DeepSeek社のAI技術進展による競争激化懸念で下落
自動車メーカー(GM、フォード、ステランティス)が関税によるコスト増懸念で下落
米国の対中関税10%引き上げにより、アップルやテスラが大幅安
メキシコ関税の影響で、コンステレーション・ブランズ(「コロナ」ビールの販売元)が大幅に下落
PDDホールディングス(Temu運営)が、小口輸入品の関税対象化により下落
1.4 セクター動向
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ハイテク株:
Apple (-3.39%)、Nvidia (-2.84%)、Microsoft (-1.00%) が軟調。特に半導体関連は、中国DeepSeekのAI技術の影響もあり売られた。
消費関連:
Tesla (-5.17%) は大幅安。米国の対中関税10%引き上げが影響。
防御的セクター:
ABBV(+3.33%)、UNH(+1.05%)などヘルスケア株が堅調。
Walmart(+1.41%)、P&G(+1.67%)など生活必需品関連が上昇。
Stock Heatmap — TradingView
1.5 個別銘柄
NVDA: 中国DeepSeek社のAI技術進展を受けた半導体株売りが継続し下落。さらに、米国の対中関税10%引き上げにより、中国市場での影響懸念が強まり下落。
AAPL: 米国の対中関税10%引き上げを受け、中国販売や生産への影響懸念から大幅下落。
TSLA: 米国の対中関税10%引き上げにより、中国販売や生産への影響懸念で大幅安。
GM/F: 米国の関税引き上げ発表を受けて下落後、一部回復。
Tyson Foods: 好決算を発表し上昇。
IDEXX Laboratories: 予想を上回る決算を発表し、株価が上昇。
2. 米国債券・為替市場
2.1 概況
関税政策の影響を受け、安全資産としての米国債に買いが入った。10年債利回りは4.55%で終了し、短期債利回りは若干上昇。ISM製造業景況感指数の改善が景気の底堅さを示したものの、関税懸念が続き、安全資産の需要が強かった。
2.2 Fed Watchツール
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次回のFOMC会合は2025年3月19日に予定されている。現行の政策金利は425-450bps。市場では、
400-425bpsへの利下げ確率は 13.5%
据え置き(425-450bps)の確率は 86.5%
利下げの可能性は限定的で、当面の政策金利維持が予想される。CME FedWatch
2.3 債券利回り曲線(イールドカーブ)
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現在のイールドカーブ(青)は1か月前(オレンジ)と比較してほぼ同水準だが、短期債利回りがわずかに上昇し、長期債は横ばい。昨年(緑)と比べると、短期金利が高止まりし、依然として逆イールドが継続。これは市場が今後の景気減速を懸念し、長期金利が抑えられていることを示している。
US government bonds