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そのとき、あなたは象牙を売りますか?
毎月、友人たちと4人で読書会を行っている。持ち回りで課題図書を定め、期日までに各々が読了し、その感想を1時間ほど語り合うスタイルだ。始まった当初は、友人が経営する会社のオフィスに集っていたが、コロナ禍ではオンラインでランチタイムに開催するのが定例となった。
この読書会が私にとって非常に貴重なのは、とても優秀でハートフルだけれども、それぞれ得意分野が異なる友人たちが同じ本を読んで、どんなことを感じ、どこに疑問を抱いたのかを知ることができるところにある。これぞ読書会の醍醐味だ。
もう1点は、選書の妙にある。自分自身で「読みたい本」を選んでしまうとどうしても偏りが出てきてしまう。これは誰だってそうだろう。けれども、先ほども書いたように読書会の課題図書は持ち回りで決めているから、結果として普段なら自分で選ばないような本を読む機会に恵まれる。そうした本がとても興味深く、示唆に富んでいることは非常に多いので、この読書会にはとても感謝している。
さて、今月の課題図書はこれだ。
ジャン・ティロールは、2014年にノーベル経済学賞を受賞したフランスの経済学者。「知の巨人」とも言われるティロールが初めて一般向けに書き下ろした経済書で、日経新聞の2018年「エコノミストが選ぶ経済図書ベスト10」で、見事に第1位に輝いている。
私自身は政治経済学部だったにもかかわらず、経済学はどうも苦手で勉強を後回しにしてきてしまった感がある。その上、全616ページもある大著ということでいささか気が引けていたが、意を決して読み始めてみると、これが面白い。訳者に依るところも大きいとは思うのだが、思っていた以上に平易な文章で書かれている上に、たとえが豊富なので、理論ばかりが続いて思わずページを閉じてしまいたくなるといった衝動に駆られることもない。
本書は「経済学」の本でありながら、かなり倫理にも踏み込んでいて、読者に何度も価値観を揺さぶるような問いかけを発している。なかでも考えさせられたのが、次の話だ。
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「乙武洋匡の七転び八起き」
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