「障害を乗り越えた」と言える日は来るのだろうか。
「乙武さんは障害を乗り越えて」とよく表現される。特に『五体不満足』が出版された直後は、判で押したようにこの書き方をされてきた。もちろん、悪気などないことはわかっているし、何なら好意的に書いてくれていることも理解している。だが、心のどこかで「乗り越えたかどうか、おまえが勝手に決めるなよ」と思っていたこともまた事実だ。
私は、障害を「乗り越えた」のだろうか。
物理的には、ちっとも乗り越えられていない。46歳になった今でも、ひとりでトイレには行けないし、風呂に入ることもできない