小田倉弘典

予測誤差最小化中。ネコがその一番の助け。医者。ブログ「心房細動な日々」 ツイッター@h_odakura

小田倉弘典

予測誤差最小化中。ネコがその一番の助け。医者。ブログ「心房細動な日々」 ツイッター@h_odakura

最近の記事

病気になるとはどのようなことか〜<医>の概念工学(5):病気の「分断」モデル〜

これまでの議論と病い体験を踏まえて,「病気」というものを私なりに(削ぎ落とされるものの多きことは重々覚悟しつつも)図式化してみたいと思います。 1.病気の分断/不連続モデル 病気の「不自由感」  まず病気になったとき,当然「めまい」「抑うつ」など症状そのもの,つまり「苦痛」が自分の中に新たに立ち現れるわけですが,それとほぼ同時に感じるのは,「今までできてきたことができなくなる」という機能不全でありそれに伴う「不自由感」です。ここで強調したいのは,この機能不全はさまざまな

    • 病気になるとはどのようなことか〜<医>の概念工学〜(4):患者の言葉は果たして伝わるのか?   ーNHKあさイチに出演して考えたことー

      8月31日,NHK総合テレビ「あさイチ」の特集「医師が患者になって初めてわかった 実際に役立つ“患者術”」に録画出演させていただきました。短時間でしたが,患者さんや知り合いからの反響が大きく大変嬉しく思いました。その際,多くの方々から,先生が患者になって感じたことはその後どうなって行ったのかと聞かれました。今回の経験を通じて,改めて考えたことを書きたいと思います。 患者の言葉は伝わらない 取材ではいろいろなことを話しましたが,番組の中では,私が8年前椎骨動脈解離からの小脳

      • 脱構築者としてのシン・ウルトラマン ーシン・ウルトラマン覚書ー

        今年のエンタメ系最大の楽しみはなんと言ってもシン・ウルトラマンです。封切り初日も含め,すでに2回見ました。各種グッズやガリガリ君シン・ウルトラマンバージョンまで買う始末です笑。 その感想文ですが、盛大にネタバレしておりますので、ご注意くださいますようお願いいたします。 初代ウルトラマンのコンセプト 初代ウルトラマンの放送開始となった1966年当時,私は幼稚園生でしたが,リアルでしっかり見ていた記憶があります。それ以後夏休み等にある再放送も欠かさず見ており。これまで数限り

        • 病気になるとはどのようなことか〜<医>の概念工学〜(3):意思決定をとらえ直す

          【必然だろうが偶然だろうが】 さて、前回までの議論を改めて見渡してみると、私たちが治療法を選ぶこと、あるいは広い意味で意志を決定するとはどのようなことか、考えさせられてしまいます。 なにか重大なことを選ぶというとき,私たちがはよく図1のような「決定木」を思いうかべます。 第1回(病気になるとはどのようなことか〜<医>の概念工学〜(1))でみたように,この世の全てのできごとは決められたことと考える決定論に従えば、この決定木は図のようには分岐せず,一本の木として過去から未来

        • 病気になるとはどのようなことか〜<医>の概念工学(5):病気の「分断」モデル〜

        • 病気になるとはどのようなことか〜<医>の概念工学〜(4):患者の言葉は果たして伝わるのか?   ーNHKあさイチに出演して考えたことー

        • 脱構築者としてのシン・ウルトラマン ーシン・ウルトラマン覚書ー

        • 病気になるとはどのようなことか〜<医>の概念工学〜(3):意思決定をとらえ直す

          病気になるとはどのようなことか〜<医>の概念工学〜(2):確率とリスクをどうとらえるか

          【がん治療選択の旅】 「がんと言われたとき何を考えるか」(前回note)について思いを巡らせていると、次にやってくることは「そのがんをどうするか」ということです。がんの宣告を受けたのと同時に治療法についての探索の旅が始まりました。 胸腺がんの病期分類は,通常の悪性腫瘍とやや違う正岡分類というのものです。私の場合はいちおうII期(周囲の脂肪組織浸潤まで)とされました。しかし病理医のコメント欄に「悪性細胞は,限りなく切除された脂肪組織の断端まで認められている」とありました。断

          病気になるとはどのようなことか〜<医>の概念工学〜(2):確率とリスクをどうとらえるか

          病気になるとはどのようなことか〜<医>の概念工学〜(1):がんと言われたとき何を考えるか

          【noteを始めるにあたって】 こんにちは 仙台市で内科開業医をしています小田倉と申します。 医者になって35年目になります。これまで自分の専門知識の向上を兼ねて「心房細動な日々」という私的ブログを10年以上ほそぼそと書いてきました。 さて,そろそろ医師人生の終盤に入り,また私自身もやや大きな病気を経験し,病気とは,健康とは,医療とは,などということを根源から考えたいと思うようになりました。 そうこうしているうちに,印象的な2冊の本に出会いました。一冊目は哲学者・戸田山和

          病気になるとはどのようなことか〜<医>の概念工学〜(1):がんと言われたとき何を考えるか