特集「刑事司法によって傷つく人たち」法学セミナー838号が刊行されました

法学セミナー838号(2024年11月号)が刊行され、特集「刑事司法によって傷つく人たち」が刊行されました。刑事司法はその機能を全うすることによって犯罪現象による社会の歪みを是正することができますが、時としてそれが適切に機能しなかったり、また適切に機能した場合であっても他の様々な利益との間に緊張関係を引き起こしたりすることがあり、刑事司法によって傷つく人たちが生まれます。では、刑事司法によって傷つく人たちをどのようなしくみで救済すべきなのか。また、刑事司法に関わる人たちが刑事司法の作用によって傷けられることがにないようにするためには何が必要なのか。このような視点から、再審、国賠、上訴、被害者保護、加害者家族支援、報道の役割について、それぞれに論じる特集です。

私は、「刑事手続における被害者関連情報の保護」として、2023年の刑事訴訟法改正によって導入された個人特定事項の秘匿について、ここに至るまでの被害者情報保護の議論も踏まえつつ論じる小稿を寄稿しました。あらためて読み返すと、被害者保護の視点に立ちながらも、被疑者・被告人の防御への影響など新法の問題点を指摘するものとならざるをえず、やや立ち位置が不安定な印象があります。それ以外にも考察が不完全なところが多々ありますが、今の時点での考えをとりあえず公にすることにしました。ご批判などいただければ幸いです。

また、特集全体の「企画趣旨」も私が執筆しています。この企画は私が発案して編集部に持ちこんだわけではなく、編集者の方がお考えを整理していく過程での「話し相手」を私が務めたに過ぎません。ただ、そのような行きがかり上、私のほうで、私の視点から見たこの企画の目指すところを文章にしてみました。併せてご笑覧ください。

折しも袴田事件の再審無罪判決直後の刊行となり、タイムリーな企画となりました。特集の執筆者は、私以外はいずれも超一流の方々ばかりです。どうぞよろしくお願いいたします。


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