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「振り返るとマンガのキャラクターに支えられてばかりだった」7年目を迎えた25歳の彼を支えた3冊のマンガの話

新入社員になって、1ヶ月が過ぎた頃。ゴールデンウィークを過ごしたみなさんの「会社に行きたくない」という気持ちがSNSを通じて僕の目に飛び込んできました(僕も働きたくない)。

なんとかやる気を出したい。同時にそのような焦りを感じる人もいるのではないでしょうか。

今回お話を伺ったのは、とりごもくさん。25歳にして勤続7年目の会社員。みなさんの少し先輩です。彼も新入社員の頃は「無理かもしれない…」と悩んでいたうちの1人。そんな彼が初めて入った会社を辞めずに働き続けた背景には、癒やしマンガの存在がありました。

(取材・文:星月まふゆ)

インタビューを受けてくれた人:とりごもく
星月まふゆの高校時代の友人。初めて入った会社に勤め続けて、7年目。遊びに誘ったら「すまん、今仕事終わったわ」と、23時30分にメッセージが返ってくる時もあるほど過酷な環境で働いてる。

新入社員の頃はギャップに悩まされていた

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━━━━━今年で勤続7年目ということで、まずはおめでとうございます。

とりごもくさん(以下、とりごもく):ありがとうございます。最初の頃は大変だったので時間の進みが遅く感じたのですが、今となっては「もう7年目なのか」という気持ちです。あんまり自分では数えていないものですね。

━━━━━働きはじめた頃は声をかけることをためらうほど、忙しそうな様子でした。7年目の今だから思う、新入社員だったからこそ大変だったことはありますか?

とりごもく:一番苦労を感じた点は「ギャップ」でした。それまでに経験がある社会といえば学校かアルバイト先だけだったので、本格的なビジネスの現場に入るという実感がなかったんです。その時は趣味に全力だったこともあり、組織の一員として働く意味を理解できていませんでした。

━━━━━業種が接客業ということもあって、会社の人間としての自分と、お客さんの前に立つ自分、という切り替えも大変そうです。

とりごもく:そうですね。社会人としての報告・連絡・相談の大変さは身を以て実感しました。お客様とのコミュニケーションという面でも、アルバイトの時代とは異なりプロとしてこちらを見てくれている、という責任感がありますからね。会社にいる仲間に、そしてお客さんに対するコミュニケーション能力の向上には全力で臨むようになりました。

━━━━━苦しいながらも真剣に取り組んでいたのですね。その結果、変化はあったのでしょうか?

とりごもく:仕事として何人ものお客さんと接するうちに、自分のコミュニケーション能力を接客のスキルに変換する楽しさに気づきました。自分は不器用なので時間がかかった方だと思います。

ですが、最初は不慣れで辛いことが多かっただけの仕事の全貌が徐々に見えてきて、しっかりと会社を意識できるようになったんです。つらいだけではないな、と思えるようになりました。

めげずに社会人を続けられたのは3冊の癒やしマンガのおかげだった

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━━━━━つらさを強く感じていた新入社員時代を乗り越え、7年目の今はしっかりと仕事に向き合えているの素晴らしいことだと思います。途中でくじけなかった理由はあるのでしょうか?

とりごもく:僕はゲームやアニメ、マンガなどの娯楽に支えられてきました。インタビューの最初の方でも触れたのですが、それこそ新入社員の時代には趣味に全力だったので。会社で感じたつらい気持ちは、趣味の娯楽に癒やしてもらっていました。

━━━━━なかでも、本日はマンガについて聞きたいと思っています。ご紹介していただけるのは「癒やしマンガ」でよろしいですか?

とりごもく:はい。新入社員の時代はレベルアップさせてくれるマンガより、その日頑張った自分を包み込んでくれるような癒やしのマンガを中心に愛読していました。中でも今回ご紹介する3冊は思い入れの深い作品です。

━━━━━では、タイトルを教えてください。

とりごもく:『ハナヤマタ』『ゆるキャン△』『少女終末旅行』です。

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『ハナヤマタ』
何もかもが平均的で、ちょっとだけ臆病な女の子・なるが、「よさこい」という未知の世界に足を踏み入れて自分と向き合うお話。『まんがタイムきららフォワード』で連載されていた作品で、完結済み。

━━━━━『ハナヤマタ』は昔から好きだとおっしゃっていました。いつ頃に出会った作品なのでしょうか?

とりごもく:まさに入社してすぐの時期です。今から数えると『ハナヤマタ』は6年くらい前に出会いました。

━━━━━どのような点に魅力を感じたのでしょうか?

とりごもく:主人公のなるちゃんの前向きな性格です。当時の僕は新入社員ということもあり、右も左もわからないままガムシャラに仕事をしていました。先輩社員と比べた時に自分の実力不足を痛感させられ、落ち込むことも多かったんです。

そんな時になるちゃんと出会いました。

彼女は自分に自信がない女の子です。それでも「よさこい」という新しい世界に飛び込んで、理想とはほど遠い自分と向き合いながら夢に近づいていました。そんな前向きな姿に心を打たれたんです。全てが僕と一致するわけではありませんが、同じような環境で彼女が頑張っているなら僕も頑張ろう、と思った瞬間にのめり込みました。

━━━━━同じように頑張っている人がいると、1人じゃないんだ、と勇気づけられますよね。あとなるちゃんが可愛い。

とりごもく:(笑)。なるちゃんが可愛いというのは大切なポイントです。とりあえずなるちゃんの動きを目で追っているだけでも感覚的に癒される、というのも作品の魅力だと思います。


『ゆるキャン△』
ソロキャンプ好きの女の子・リンと出会って、キャンプに目覚めるなでしこのお話。2022年には映画化が決定しているほどの人気作。芳文社の公式コミックアプリ・Webサイト『COMIC FUZ』にて連載中。

━━━━━『ゆるキャン△』も、主人公のなでしこに共感したのでしょうか。

とりごもく:そうですね。なでしこもキャンプという新しい世界に飛び込んだ女の子です。ただ『ゆるキャン△』に出会ったのは働きはじめて3年ほどたった頃なので、新入社員時代に感じていたつらさはありませんでした。それでも社会人として働いているとつらいことは1つや2つではないので、そうやって消耗した心を癒されたい時に手に取ったんです。

━━━━━『ゆるキャン△』を手に取った時は、社会人として少しゆとりがあったということでしょうか?

とりごもく:そうですね。これまでは大きなダメージを受けては、それをゼロに戻すために癒やしマンガを読んでいました。しかし『ゆるキャン△』を手に取った時には、私生活のレベルを+1、+2と良質な方向に持っていけるような癒やしがあるマンガをチョイスしていた意識があります。

━━━━━キャンプがテーマということで、癒やしは身近にあるんだということを気づかせてくれるような作品ですよね。

とりごもく:自然、というだけでも癒やされますからね。キャンプに行ってみたいな、キャンプ飯を作ってみたいな、と思わせてくれたのも作品に熱中した大きな理由です。金銭的な余裕も出てきた頃だったので、キャンプグッズを購入してみたこともありました。

━━━━━現在、まんがタイムきららで連載中の『しあわせ鳥見んぐ』という、自然の中でバードウォッチングをする作品があるのですが…。

とりごもく:(笑)。僕が好きそうな作品ですね。読みます。

腕を組む拓巳


『少女終末旅行』
チトとユーリが終わってしまった世界を旅するファンタジー作品。くらげバンチにて連載されてた作品であり、現在は完結済み。

━━━━━『ハナヤマタ』『ゆるキャン△』の主人公たちに自分を重ね合わせ、感じた魅力が伝わってきました。前述の2作品と比べると『少女終末旅行』は少し毛色が違うのかな、と感じます。

とりごもく:『少女終末旅行』は「週末」ではなく「終末」ということで、主人公の2人以外はほとんど生き物が登場しません。しかしサバイバルの壮絶さが強調されているのではなく、どちらかというと緩やかに過ごす日常がメインに描かれています。感覚的には『ゆるキャン△』に近いかな、と。

━━━━━なるほど、絶望的な展開が広がるというわけではないのですね。

とりごもく:そうです。基本的に登場人物は2人なのですが、その2人の関係性が心地よくて癒やされます。『ハナヤマタ』『ゆるキャン△』と比べるとワチャワチャしているわけではないけど、それでも彼女たちなりの楽しさを見つけている、そんなささやかな幸せが好きなんです。

━━━━━仲間が少ないから不幸だとは限らない。むしろたった2人だからこそお互いを理解し合える喜びが大きかった。数少ない親密な友達の大切さが身に染みてくる社会人には、よく伝わりそうな癒やしですね。

とりごもく:まさに。学生というワイワイした癒しから、少なくても親密な友達と過ごすかけがえのない癒やしへ。どちらの癒やしも大好きですが、学生気分から社会人の責任へと気持ちが切り替えられたように、好みも少しずつ変化しているのかもしれません。

━━━━━マンガは人生と言えるかもしれませんね。

とりごもく:(笑)。言い過ぎな気がするものの、社会人生活を支えてくれたのは間違いありません。


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━━━━━今回はとりごもくさんの社会人生活を支えてくれたマンガを紹介してもらいました。ご紹介いただいた3冊は、新社会人のみなさんが読んでも、同じように救われる部分があるのではないかと思います。

とりごもく:そうですね、僕が選んだマンガは癒やし要素と「自分ごと」が掛け合わされています。『ハナヤマタ』のなるちゃんや『ゆるキャン△』のなでしこには、新しい環境に挑戦する姿に自分を重ねました。『少女終末旅行』は、かけがえのない友人との間に生まれる関係性に自分を重ねています。

━━━━━作品に没入するためにも、自分の境遇や性格と重ねられる要素があると、癒やし効果が高められるということでしょうか?

とりごもく:そうですね。登場人物に共感できる、という要素は癒やしマンガを選ぶ上で大切だと考えています。もし癒やしマンガを選ぶ上で判断に迷ったら、「自分ごと」として本気で共感できるキャラクターがいるかどうか、という点を考えてみていただければと。

マンガで心を休ませながら、いつか前へと進んでほしい

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━━━━━今日は癒やしマンガをご紹介いただいただけでなく、選び方まで伝授していただきありがとうございます。最後にこの記事を読んでくれてるであろう頑張る新入社員のみなさんにメッセージをお願いします!

とりごもく:癒やしマンガを読んで、適度にリフレッシュしながら頑張って欲しいなと思います。これまで6年間働いてきて、時には後輩を育てたこともあるわけですが、世の中頑張りすぎて疲れちゃう人が多いなと感じました。

自分を奮起させる努力はと ても良いことです。しかし長く勤めていると、力を抜かなければいけないタイミングも訪れます。その時には、思いっきり休んで欲しい。そして心が癒やされるマンガもあることを思い出していただきたいです。そして落ち着いたら、また頑張ってみる。そうやって上手に前に進んでみてください。

━━━━━本日はありがとうございました!

とりごもく:ありがとうございました。

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