9/20 トークイベント 木須菜々美×林美月
はじめに
以下の文章は9月20日から9月24日まで京都造形芸術大学NC棟3F Painting Laboratory303にて行われた木須菜々美と林美月の二人展「こぼさないように、笑った」のオープニングトークのレポートである。
(撮影 トモサカアキノリ)
・自己紹介 自分の作品について
木須:金沢美大(以下、金美)は学部1〜2年から写実の先生が多くて写実をやる
自主制作で学部2年の5月くらいからエスキースをせずに手遊びで制作して
コラージュ的に普段使ってる油画以外にガーゼ使ったりペン使ったり
即興的な制作を始めた。
今の制作のテーマ
絵を描くときにテーマやモチーフはない 白いキャンバスに手遊び的に探りながら線を引く。
見える形を見つけて画面に揺らぎのある作品を作りたい。
できた作品を見て、具体的な形が見えたり次に見たときに形がわからない 不安定な画面を目指す。
林:テーマはあって感覚的に描いて入るけど女性とか母性について考えている。
抽象的だけど比較的形がわかる感じで描く。
表面的な部分では木須ちゃんと被ってて、揺らぎが欲しいなど。
宗教とかそういうことについて考えることが多くて 母親、女という記号を使って描いている。
絵画以外のこともまた違った表現の仕方になる。
木須:私たちの作品は、具体性が違う。自分は具体的なモチーフに突き放されている。
自分がやりたいことと突き放されている感覚があって具体的なことをしない。
林:木須ちゃんのツイッター見たら高校の時に始めた油画をやっているのがある。
古典技法の基礎がすごいできてる上で崩して今の作品、というのが信頼できる絵画。
上手い人が描いている線というのが見てすぐわかるからそこが好き。
・出会った経緯
木須:2017年金沢のルンパルンパで初めて会って仲良くなってツイッターで繋がってお互いの作品見たりしてて2週間後とかに今から遊びましょうってDMきて、その時金沢に林さんが来てて。
(私の)家でエビチリ作ったり作品の話したりして、
そこから2ヶ月に一回に金沢きて喋ったり通話したり…。
美大祭(金美の学祭)、芸宿での個展に来てくれた。
林:芸宿…、アーティストランスペースね。
木須:京都にはそういう場所ある?
林:ないと思うなぁ…、私が知らないだけかもだけど。
木須私は8月に京都であった展示・恐慌前夜も行って、そこで(展示の)誘いを受けてすることになった。
・金沢にたくさん行く林
林:ルンパルンパというギャラリーに足を運んだのが初めて。
石川の、金沢のアートシーンってだいたい決まっていて、石川県立美術館、21世紀美術館の中間みたいなギャラリーなんですけど。
油画のイメージなかったけどルンパルンパのツイッターで流れて来て、現代美術系のギャラリーがあるんだぁ、と。 それで高校三年生の時に初めて行ったんですよ、そこから流れで金沢美大に遊びに行きました。
京都造形は基礎もするけど、最初から自主制作が多くてコンセプトに重きを置いている。
金美に行くと1、2年で良くも悪くも古典的な絵画を描いている。
私は高校は普通科で(美術は)画塾で習ったけど深く古典を学んでいなくて、そこが不安だったから(金美に)行くのが楽しかった。
木須:金沢には油画と彫刻、現代美術の人の溜まり場がなかったから芸宿ができた。みんなで一緒にご飯食べたり、長谷川新さんの蔵書が置いてあったり、星野太さんが本を置くために場所を借りている。
・展示のコンセプトについて
林:展示コンセプトは太宰治の小説のそれぞれ読んだものを使っていて「女生徒」と「斜陽」。
木須:お互い勧めあって読んだ。
太宰治の文章を参考にした今回の展覧会。
共通のイメージとしてお互いのイメージを話して林さんは母性、ドロドロした怖い、とか。
私も怖いと思われることが多いなんでだろう。
林:なんでだろう。
でも太宰治ってめっちゃくらいイメージあるのにそんなに暗くなくて…。
センスがあって普段冗談とか言ってたんだろうなあって感じで。そこも近くて選んだな。
・お互いの作品を並べて観る
木須:作品並べてみてどうだろう
林:作品張りがあるねと言われて、張り合ってるってなんなんだろうなと思って。
それは喧嘩してるって意味なのかと最初捉えてしまって。
木須:前に芸宿で個展したから一人だと作品置くだけで強度が出るけど、隣り合ってる作品でノイズができる、でもそれが心地よかった。
林:搬入もサイズほとんど言ってなくて、業務的に一応大体のは送ってたけど。
最初こんな絵なんだねーと初めて知って、感覚で、絵を描くように絵の位置を決めた。
それが楽しかった。こういうタイプの作品の人はどういう感じで置いているんだろうか。
2人展が初めてなので、こういう置き方が初めて。
(撮影 大西晃生)
木須:線の話をしたい。私は結構線を重視していて、うまくいかなかった線も可能性とか、絵の中の線は失敗と意図が区別できない状態であってほしい。
うまくいかなかった線、強くなり損ねた線の持つ可能性に敏感に反応していきたい。
ゆらぎを画面に残したいと思って線を引いている。
林:線があるから木須さんのは揺らぎみたいなものが表現しやすいね。
自分の絵は重複させているけど大体一発で描いている。書道している感覚に似ている。
木須ちゃんのは縫い物みたいだなあと。繊維を縫っているような絵。
木須:画面を埋めるような。
林:私の絵って輪郭が強いんですよ。だから大学受験の時の予備校時代本当に大変で、輪郭を濃く描いてしまうんですよ。手前の輪郭を濃くすると前に出て後ろのものを薄くかくと遠近感がでる(みたいな定式をとっていなかった)。みたものをそのまま描いてしまって、全部均等に濃く描きたいみたいなところがあった。
木須:色はどんな感じで?
林:かなり感覚よりで、イメージがもともとあってそれに近いやつとたまたまできたやつを使っている。混色もしている。
木須:色はそこにあった色を使っている。線が重要だと思っていてこの色がこういう意味でというより線を見えにくくさせるために使っている。
林:画面の不安定さのためになのかな。
木須:どういう感じにも取れる色を使っている。
林:こういう色だからこれだ!みたいなのが後付けだろと思ってしまう。
林:絵具と戯れている私、みたいな絵好きじゃなくて。
綺麗だしわかるけど、苦手だ。
木須:マテリアルとして使っているような?
林:うん。でもコンセプトが欲しくなる。
木須ちゃんの絵は 私絵画鑑賞者 より 私絵画 だけど好き。
基礎がしっかりしてるからかな?作品が視覚的に優れていて観れる。
木須:鑑賞者のことは考えていなくて、単純に線を引くこととかを考えてるよ。
・場所、コミュニティについて
林:美術があるのが当たり前みたいな場所が、”大学”
大学はいろんな美術の捉え方があって、でもそれが専門的すぎて繋がりにくいみたいに自分は感じていて…、学祭とか見てても。
芸宿もそういうところもあるけど、専門性を出しすぎないなあと。
共通の美術の土台のところで話をしている。
踏み込んで、例えば1対1で話した時とかに専門性の話が出てくる。それがすごく楽しいよ〜。
木須 :金沢は交通の便が悪いから、誰かに車を出してもらって展示に行ったりするから話に慣れているのかも。
林:批評性のある空間場所だなと思う。あと、学部生だけじゃなくて院生の上下が交流あるのが羨ましい(笑)
木須:仲良くならざるをえないところもあるけどね(笑)
金美は、人数が少ないし。先輩が車持ってたりすると…。(手をすり合わせる)
林:芸宿で前に展示をしていた大野陽生さんと高橋直弘さんもツイッターで繋がって展示をすることになったみたいで、私たちの今回の展示もその流れです。
SNSとかで繋がってからの流れで展示はどんどん起きていく。
今、私は場所とSNSとの解離に興味がある。
大学以外で批評ができるコミュニティとかも今後どんどんできて行く。どのプラットフォームかもわからないけど…。
一方でSNSがあることを知りながらも足を運んで観にいくことが重要だとも思う。
・来場者からの質問
Q.今回の展示の題名は
木須:お互いに制作の話とかしてて、今が終わることに意味があると私は思っていて。
今ちょっと思ったことがしばらくしたら忘れてなかったことになることについてすごい焦燥感があってそれで絵を描いている。
何かを残して置きたいという気持ちで、形になって残っている。
ちょっとどうしようみたいな不安定な部分があって、林さんもなんかそれがあると聞いて
そこからテーマを決める時小説とかの話になって、最初は引用することにしていたけど最終的には自分たちで言葉を書いた。
(撮影 大西晃生)