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『書くことについて』について。

 

noteを見ていると、若い世代を中心に「書くこと」に意欲を持っている人や作家志望の人が多いのに驚く。読書離れだのツイッター(X)等の影響で長文が読めないだの、AIにも小説が書ける等と言われる時代でも、書くこと・創作に魅力を感じている人が少なくないというのは、結構新鮮な驚きだ。

書くと言っても様々な目的があり、純粋に文芸創作をしたい、自己表現として書きたい人もいれば、自分のビジネスのブランディングの一環として書く人、仕事上の必要があって書く人、生活のために書く人…etc。今のように多くのプラットフォームがあり、クラウドソーシングもある時代は、書く目的も手段も発表する場も本当に多種多様だ。


ひと昔前なら作家になるには文学賞、新人賞を獲るしかなかったかもしれないけれど、今はマイナーなサイトから火がついて書籍化されてヒットする例も(海外を含めて)珍しくない。電子書籍を含め、誰にでも作家への道が開かれているという意味で面白い時代だと思う。


私は長年、仕事として書いてきたけれど、その大半がコピーライターというやや独特な仕事だったので、良くも悪くも " 省く美学 "というか、ギリギリまで余分なものを削ぎ落とす、なるべく簡潔に書く---が習い性になっている。そのため、(小説には大事な要素であり、読者にとっては読む楽しみでもある)綿密で細かい描写が苦手だ。


だから小説の書き方とか一般的な文章技法については、適任の方のアドバイスを聞いて下さいねとしか言えないのだけど、(ちなみに私は基本的に「こう書くといい」「こう書いてはいけない」的なことはどうでもいいと思っている。そんなのを律儀に守っていたら文章の勢いが無くなったり、借り物みたいな文章になる危険のほうが大きい) 書くこと、特に文芸創作や自己表現のために書きたい人におすすめしたいことは一つあるんですね。


それは、読むこと。メチャメチャ読むこと。自分の一部になるくらい読むこと。

読む力と書く力は繋がっているので、読まずに書きまくってもいずれ限界が来るし、スカスカの文章になってしまう気がする。アウトプットするためには同量か、それ以上のインプットが必要だ。何でもそうだけど「入れる」と「出す」のバランスが取れていないと、物事はうまく回らない。


とはいえ、どんな本でも数をこなせばいいというのでは読書が苦行になるか、単なるルーティンになってしまう。義務感で読んでもつまらないし、ハートに入ってこない。


幅広いジャンルから自分の興味や好奇心をくすぐる本を読めば、それだけ自分の世界が広がるし、一冊の本を繰り返し読み込めば、自分の世界が深まる。特に古今東西の名作と言われるような文学書は一度読んで真髄が掴めることは稀で、自分の経験からも、何度か読むうちに腑に落ちるように思う。

そして、読んだ感想を書き留めておくと良いと思う。どこに感動、共感したのか、どこがイマイチだったのか。できればnoteやブログ等のwebにアップするのをおすすめ。

というのは、PCやスマホの画面でなるべく第三者の目になって読んでみると、「この表現は分かりにくいな」「思った以上に繰り返しが多い」等々、自分の文章のクセや修正点が見えてくる。
アウトプットすることで、本について以上に自分についての発見が増える。

書くこと、中でも文芸創作を真剣に考えている人に私がおすすめしたいのが、スティーヴン・キングの名著『書くことについて』。この本に限ると、キング=ホラーという先入観は不要。「私が書くのは悦びのため」と断言する彼の、とても真摯で感動的な内容の本だ。


この本の愛読者は著述業の人に限らず、映画『カメラを止めるな』の監督さんも若い頃に何十回も読んだというし、作家志望だったけれど諦めた人が「もっと早くこれを読んでいたら...」と書いていた。私も何度も読んだ。

お断りしておくと長いし、ササッと読み流してポイントだけ掴むというタイプの本じゃない。少し前の作品なので今から見ればやや古臭く思える部分もあるだろうが、書かれている内容は普遍的なことだし、何より " 書く勇気 " が貰えるんじゃないだろうか。
 以下は本書からの一部抜粋。 

「作家になりたいのなら、絶対にしなければならないことがふたつある。
たくさん読み、たくさん書くことだ。私の知るかぎり、そのかわりになるものはないし、近道もない。

私は本を読むのがそんなに速いほうではない。それでも、一年に七十冊から八十冊は読む。…読みたいから読んでいるのであって、小説の技法やアイディアを学ぶためではない。それでも、読めば何かしら得られるものはある。手に取った本にはかならず何かを教えられる。」

「読むことが何より大事なのは、それによって書くことに親しみを覚え、書くことが楽になるということである。

読書の習慣は、我を忘れて書くことに没頭できる場所へ人をいざなう。同時に、それは知識を無限大に増加させる。これまで何がなされたか、何がなされていないか。何が陳腐で、何が新鮮か。ページの上で、何が生きていて、何が死んでいるか(あるいは死につつあるか)。本を読めば読むほど、ペンやワードプロセッサーで物笑いの種になるリスクは減る。」

         ☆     ☆     ☆ 

「ものを書くのは、金を稼ぐためでも、有名になるためでも、セックスの相手を見つけるためでも、友人をつくるためでもない。一言でいうなら、読む者の人生を豊かにし、同時に書く者の人生も豊かにするためだ。立ち上がり、力をつけ、乗り越えるためだ。幸せになるためだ。おわかりいただけるだろうか。幸せになるためなのだ。」

「あなたは書けるし、書くべきである。最初の一歩を踏みだす勇気があれば、書いていける。書くということは魔法であり、すべての創造的な芸術と同様、命の水である。」(『書くことについて』より。中略あり)

傑作かどうか、多くの人の目に留まるか、売れるかどうかは二の次で、自分にしか創れない作品を世界に向かって差し出すことに意味があると思う。

人それぞれ考え方も受け取り方も違うので、大勢にウケようなんて考えなくていい。少数でも共感してくれる人がいて、思いを共有できる…書く幸せってそういう所にある気がする。

「誰も見てくれない」と思っても、きっと誰かが見ていてくれるから (´ェ`)


お読み頂きありがとうございました
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ご一読頂ければ嬉しいです(´ω`)
こちらはフィクションですが、野生動物関係者の方からもご好評を頂いています。




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樹山 瞳
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