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(書評・番外編) ---追悼 楳図かずお『わたしは真悟』
追記:noteからこんなお知らせが。ご覧下さった方、スキを下さった方、
ありがとうございます。
![](https://assets.st-note.com/img/1731316092-zJWav2L30CU9FBKVERs6qwu5.png)
今回は先生の訃報を知り、以前別の所に書いた書評をnoteにも貼りますね。書いたのは8年位前で、まだAIはポピュラーではありませんでした。
★「わたしは真悟」 楳図かずお 全7巻(小学館文庫)
「『わたしは真悟』は楳図かずおの最高傑作である。それだけではない。現代日本マンガが到達しえた頂点の一つでもある。そして、マンガ以外にも、文学、映画、演劇、音楽などをひっくるめた1980年代の全文化のうちの最高ランクに位置づけてもいい。それほどの驚異的な傑作である」
(呉 智英/文庫版前書きから)
このセレクトは、意外に思う人が多いかも。
私自身、まさか自分が楳図漫画にハマるとは思わなかった。というのも子供の頃、少女漫画誌によく楳図かずおの怖い漫画が連載されていて、夜眠れなくなるほど怖く、ホラー嫌いの私はトラウマになってしまった。楳図漫画が出てくると、即スルーした。
大人になってからは「まことちゃん」ブーム。でも全く興味がなかったし、楳図漫画とは無縁で生きてきた。正直、絵のタッチも好みじゃなかったし、読みたいとも思わなかった。
それが最近、楳図作品をきちんと読み始めて、自分の認識不足を深~く恥じた。この漫画は、文学を超えている。
手塚治虫が天才なのは誰もが知っている。楳図かずおも、テイストは違うが天才だということに、私は今になって気がついた。手塚は早くから楳図かずおの才能を見抜いて、藤子不二雄に「天才が現れた!」と言っていたそう。やはり「天才は天才を知る」のだ。
『漂流教室』『イアラ』等、楳図漫画の傑作は沢山あるけど、私が180度認識を変えたのは、『わたしは真悟』を読んでから。これはもう、日本の漫画史上に輝く金字塔だと思う。
これは宇宙的で壮大なコンセプトの、物凄い漫画。しかも全編にみなぎる緊迫感と手に汗にぎる展開は比類がない。私は全7巻大人買いして夢中で読んでしまった。
今、ロボットの実用化が進み、人工知能が人類を滅ぼすとホーキング博士も危惧している。その問題提起の先駆け的な作品でもあると思う。
![](https://assets.st-note.com/img/1731050461-pG27u1grCQnvLYwJkM3t8Iha.jpg)
真悟はロボット。「悟」と「まりん」という少年少女が密かに工場に忍び込んで、プログラミングしたことにより「意識」を与えられた産業用ロボット。最近のロボットは、人間風のキュートなものが多いが、真悟は異形のエイリアン風外見で、親しみやすいキャラではない。
本来なら黙々と工場の仕事をこなして一生を終えるはずが、「意識」を与えられたために、「自分は何なのか」「何をすべきか」等を考え、苦悩して、壮絶な経験をすることになる。
工場から捨てられ、邪魔にされ、苛められながら、自分に意識を与えて遠くに行ってしまった「お父さんとお母さん」(悟とまりん)を探しに、日本だけでなく海外、いや宇宙まで旅をする。ボロボロになりながら必死に2人を探す真悟を助けてくれるのは、フリークの子供、野良犬、蛇、ハエといった社会の底辺の弱者たちだ。そして最後に....
![](https://assets.st-note.com/img/1731048987-G53zoc6aTVUurMx2yWRkihQE.jpg)
真悟のルックスは異形でも、その心は人間以上に純粋で一途だ。友達になったフリークの子供に「あなたも人間よ」と言われて「わたしも人間なのですね!」というシーン。
やっと再会できた「お父さん」に、最後の力を振り絞って「愛」という言葉を伝えて果てるシーンなどは、機械と人間の境を越えて、胸に沁みる。
軽く読めて楽しいという内容ではなく、残酷な描写も多いから、女性には敬遠されるタイプの漫画かもしれない。私も残酷な描写は苦手だから、辛いシーンもあるけれど、意味もなくそういうシーンが出てくるわけではないので、先入観から読まず嫌いでいると惜しいと思う。
現実の世界だって、毎日のように殺人事件だの、いじめ、虐待といった殺伐としたニュースで溢れている。誰もが世の中は綺麗ごとだけじゃないのは知っているけれど、心の平静を保つために、なるべく見ないようにして生きているのではないか。そして、悪意や汚さといった目を背けたくなる世の中でも、そこにほんの少しでも美しさや優しさ、愛といったものがあれば私たちは生きていけることを、誰もが本能的に知っている。だからこの漫画は琴線に触れるのだ。
ところで、全ての天才クリエイターがそうであるように、楳図かずおの凄さは、徹頭徹尾、オリジナルで勝負している所だ。執筆していた頃は(今は休筆中)、他から影響を受けたくないからと、他人の漫画もテレビも一切見なかったそうだ。奇抜な衣装や奇行で有名だけれど、創作に関してはストイックで真摯な方のように思う。
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私は東日本大震災で被災し、原発事故の恐怖も実感しました。震災後に楳図先生がインタビューで、原発事故等の問題について、私たちが自然に対する畏敬や謙虚さを忘れてしまったこと等への危惧を真面目に話されていて、「この人はものすごくマトモな人だ!(失礼な(;^ω^)」と、それまでのイメージが一変しました。実はとても聡明な方だったのだろうと思います。
noteにこんな記事も。 ご冥福をお祈りします。
人間のような表情を持つ最新のロボット。約40秒
Youtubeで見れる『漂流教室』のドラマもおすすめ。ハマります。
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![樹山 瞳](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/120276268/profile_1e3671c1af3f27886c384a36ad39936b.png?width=600&crop=1:1,smart)