【雑学】種なしスイカってどうしてできるの?
前回、自然界で交雑して種をつけるのが難しい品種が、生存戦略としてクローンをつくって生き延びている話をしました。
今回は人為的な育て方や品種改良によって種をつけなくなった植物の話です。
不稔性とは
種をつけられなくなる理由は色々あります。花が咲かないとか雄しべができないとか。また植えても育たない種ができる、なんてのもあります。こういうのを総称して不稔性といいます。「稔」って「実る」とも読みますよね。
単為結実
また種子が出来なくても実ができる現象を単為結実というそうです。まさに種なし果実のことですね。
バナナ
バナナはまさに品種改良で種が出来なくなっています。またバナナは草本性なので花が咲いて実をつけた後は枯れてしまいます。その時、親株の横に吸芽と呼ばれる子株が出てくるので、これを育てて増やします。なのでクローンになります。
パイナップル
同じ株もしくは同じ花の中の花粉と雌しべでは種ができないことを自家不和合性といいます。パイナップルの栽培では吸芽で増やすことが多く、周りがみんなクローンになってしまうため、結果的に自家不和合性により種ができにくくなり、食べやすい実がなります。
シシトウ・トウガラシ
辛いシシトウやトウガラシを作る方法も不稔性によるらしいです。シシトウは高温や乾燥などのストレスで種なしの実を作ることがあるそうです。辛み成分のカプサイシンは種を作るのに必要な養分であり、種ができると辛さはなくなってしまうそうです。
ちなみにトウガラシは日本から朝鮮半島に渡ってから辛い食べ物になったそうなので、異なった環境のストレスで良い調味料が発見されたんですね。
種なしブドウ
種なしブドウは、人力で子房にジベレリンという液体をつけることで稔性を強制的に抑えているそうです。ということは毎年、手間をかけて不稔性にしてるんですね。
これはその花だけに手を加えているので、それ以外の花でちゃんと種子が作れるのでクローンは必要ないですね。
種なしスイカと三倍体の話
以前、優性の法則の記事で遺伝子の話をしましたが、基本的に生物のDNAは2本の鎖でできていて、半分ずつを両親から受け継ぐと書きました。
2本の鎖を持つことを二倍体と呼びます。
スイカの場合、まず1手目の改良として、薬品を使ってこの鎖を倍の4本に品種改良します。つまり四倍体のスイカの誕生です。4本ならば次の世代も半分ずつを両親から受け継ぐことは可能ですよね。
そこで、2手目の改良として、二倍体のスイカと四倍体のスイカを交配させます。すると半分ずつ受け取った次の世代は三倍体のスイカになります。
この三倍体のスイカにいずれかの花粉を受粉させても3本の鎖が正常に減数分裂(半分に分かれることが)できないので種子を作ることができません。
ただ受粉の刺激で単位結実はできるので種なしスイカができます。
三倍体のスイカを親にした時だけ不稔性になるので、クローンで増やす必要はないですね。
ここで何となく危険な気がするのは四倍体のスイカですよね。自然界にはもともとなかったものなので、ちゃんと管理しないと知らないところで繁殖してしまうかもしれませんね。