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この絵はこの詩から生まれました ──詩はアートの起爆剤 [第97回]
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うつくしき
川は流れり
そのほとりに
私は住みぬ
この詩は室生犀星の「犀川」という詩の冒頭部分です。
これだけではなく、このあと続きがあります。
どうしてこの冒頭部分だけ書いたかというと、理由があります。
第74回毎日書道展という動画を見ていて、たまたまこの詩の冒頭部分の書に遭遇したのです。
書の公募展のたくさんの展示作品を見るのが趣味で、いろいろ見ているのですが、80~90%の書は読めません。
しかし、パズルに挑戦するように、あれやこれや推理を働かして判読するのが楽しいのです。
この詩はたまたま読むことができました。犀星のこの詩、初めて見た詩でした。
これがその書です。書家は判別できませんでした。
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この冒頭部分だけで、美しい詩となっています。
逆に、後半を知らない方がイメージが広がり、絵画創作のインスピレーションを与えてもらえます。
そのようなわけで、出来上がった絵は犀星の詩とは離れ、別の世界となっています。
川のほとりの詩では、漢詩の人「高啓」に、すてきなものが何点かあります。
以前ご紹介した作品ですが、
一川の流水 半村の花
旧屋の南隣は是釣家なりき
長に記す 帰篷 春酔を載せ
雲は残照を籠め 雨は沙に鳴りしを
など、好きな詩です。