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いま、そこにある危機 ~日中海上紛争へのシナリオ

前回の記事で、日本の防衛予算が増加している理由を考察した。

今回の記事は、その続きである。

前回の記事では、日本の補給線(シーレーン)を破壊する国があいまいであった。

今回は、日本の補給線破壊でもっとも利益を得るのは誰か、誰が日本を攻撃することになるかを、予想した。

結論は、
「アメリカの軍産複合体が、日本の軍事大国化により最も利益を得る」
ということになる。


日本国のステークホルダーたち


中国:


中国は、共産党の一党独裁である。人民の不満をそらすために、反日教育を行って、体制維持に日本へのヘイトを活用している。外敵を設定することで、国内の団結を強化している。

中国にとって、日本はとても邪魔な存在だ。中国側の視点からは、第一列島線、日本・台湾・フィリピンが中国と太平洋の間を遮断しているように見える。

中国は、第一列島線により封じ込められている。

https://www.nishinippon.co.jp/item/n/911294/  より

だから、中国にとって、台湾・沖縄を領有することができれば、太平洋へのアクセスが自由になる。安全保障上のメリットは、非常に大きい。日本が消えてくれれば、中国は万々歳だ。

だが、中国は、日本と同じように包囲された要塞だ。中国の大都市といえば、北京・上海・深圳(香港)・広州と、そのほとんどが沿岸部に集中している。台湾有事など、発生しようものなら、北京・上海・深圳・広州への海上物流がストップしてしまう。
  ・広州の人口は、5000万人
  ・上海の人口は、3000万人
  ・北京の人口は、2000万人
と、沿岸部の3都市だけで1億人が居住している。沿岸部にすむ住民は、なんと6億人だ。海上輸送なしにこれらの人間の生活物資を補給することは不可能だ。
(日本のほうが、はるかにましだ。マラッカ海峡からのルートが遮断されたとしても、アメリカやオーストラリアから、食料を補給できる。)

https://x.com/CasseCool/status/1253621846949257217  より

日本が戦うのは、1.2億人の補給戦だ。一方で、中国が戦うのは6億人の補給戦である。中国にとって、日本と戦争するなど冗談ではない。

日本の潜水艦が、中国沿岸部への輸送船を攻撃するだけで、中国は人民の補給はままならなくなり、沿岸部にすむ6億人の食料・エネルギー危機が発生する。

中国の国益を考慮すれば、中国が日本に攻撃を仕掛けることはあり得ない。(ただ、大日本帝国末期のように、国益を何も考えずに行動する連中も存在する。)


ロシア:

ロシアと日本は、歴史的に対立関係にある。

100年前の日ロ戦争では、日本が勝利し、樺太と満州地方の利権をロシアから獲得した。第二次世界大戦では、ソ連が日ソ中立条約を一方的に破棄し、瀕死の大日本帝国に襲いかかり、満州・千島列島・樺太を奪い取った。この結果、現在もなお日本とロシアは、領土問題を抱えており、平和条約を締結していない。

第二次世界大戦後、冷戦期においても、共産主義陣営のソ連と資本主義陣営の日本の対立関係は継続した。さらに、ロシア・ウクライナ戦争において、日本はウクライナ側に味方をしており、ロシアに対して経済制裁を実施している。

日本とロシアは、対立関係にある。

その一方、ロシアの人口は、西側に集中している。


ロシアの人口密度と ウクライナ、日本の位置

ロシアにとって重要なのは、明らかに西側の人口密集地帯であり、極東の日本の優先度は極めて低い。むしろ、ロシアにとって、ウクライナ側のEUと日本に挟み撃ちされるのが最悪のシナリオである。

ウクライナで火種を抱えている現状、ロシアが日本に何か仕掛けてくる可能性は極めて低い。



北朝鮮:

北朝鮮の脅威といえば、核開発とミサイル開発である。とはいえ、これらはあくまで、いざという時のための保険であり、脅しでしかない。散発的なミサイル攻撃では、日本の民間人が少し死ぬくらいだ。北朝鮮ができることは、テロの域をでない。

北朝鮮軍は、少なくとも海上戦闘において、日本の自衛隊に勝利することはできない。一方で、日本の自衛隊は北朝鮮をボコボコに空爆したり、沿岸都市を艦砲射撃で廃墟になるまで攻撃することができる。北朝鮮軍ができることといえば、日本の自衛隊が北朝鮮の領土に上陸したところで、陸上で反撃して追い返すくらいである。

北朝鮮の目標は、キム王朝の存続である。

北朝鮮が核兵器を手放さないのは、アメリカが怖いからだ。イラクのサダム・フセインやリビアのカダフィ大佐などは、核兵器を持たなかったが故に、殺害されてしまった。このような事例を目の前で見せつけられた、キム将軍と、その取り巻きたちは、アメリカ(とその同盟国)に対する恐怖に震えながら、必死に威嚇をしているのだ。

保身に汲汲とするキム王朝にとって、日本を本気で怒らせかねない補給戦を仕掛けるなど、言語道断である。


アメリカ:

アメリカは、日本の同盟国である。日本が戦争に巻き込まれたら、参戦の義務を負う。日本で生まれ育つと、アメリカは、好戦的な大日本帝国を倒し、日本に平和憲法を与えてくれた、平和を愛する国、のようなイメージを植え付けられる。

だが、実態は違う。アメリカは戦争中毒だ。実際に、アメリカは、第二次世界大戦後も定期的に戦争を引き起こしている。

 1950年代:朝鮮戦争(冷戦)
 1960年代~70年代:ベトナム戦争(冷戦)
 1980年代:グレナダ侵攻、パナマ侵攻 (中南米の反抗的な国をしばく)
 1990年代:湾岸戦争、ユーゴ・コソボ紛争 (世界の警察としての戦争)
 2000年代:アフガニスタン戦争、イラク戦争(テロとの戦い)
 2010年代:ISIS戦争(2000年代の続き)
 2020年代:ロシア・ウクライナ戦争、パレスチナ・イスラエル戦争(アメリカの代理戦争?)

アメリカが戦争を途切れさせない理由は、軍産複合体が政治に介入しているからだ。軍事産業がアメリカ経済を支えているからだ。

アメリカ軍の総本山は「国防総省」、通称ペンタゴンだが、このペンタゴンが直接的に契約している軍事企業「プライム・コンストラクター」と呼ばれる企業群は約2万社ある。そして、この軍事企業がさらに下請け企業や孫請け企業を使っているのだが、それが1万2,000社近くあるのだ。それだけではない。アメリカの国防総省には他にも多くの民間組織、たとえばグーグル、マイクロソフト、アマゾン、オラクルのようなIT企業、さらに石油企業、各大学、シンクタンク、銀行がかかわっている。アメリカの軍事関連のビジネスは広く、深く、民間と協力関係を持っており、切り離すことができない。こうした軍事関連の企業集団をすべて合わせたものを「軍産複合体」と呼ぶ。

アメリカの軍産複合体が戦争を必要としており、アメリカ政府は戦争を厭わない │ ブラックアジア:鈴木傾城 (blackasia.net)

軍産複合体は、巨大産業である。もし、戦争がなくなって平和な世の中になってしまえば、軍産複合体で働く人たちは失業してしまう。彼らの雇用と生活を守るため、軍産複合体は、営業活動を頑張らねばならない。その不断の努力の結果、アメリカは常にどこかで戦争をしている状態になった。

実際のところ、アメリカにとって、戦争は悪い話ではない。

戦争は、儲かる。
とても儲かる。

日本は、第一次世界大戦により、日露戦争の借金を返済し、債務国から債権国となり、重化学工業を発展させ、農業国から工業国へと転身することができた。第一次世界大戦により、日本は列強国に飛躍したのだ。

敗戦後の日本は、朝鮮特需により経済復興を果たすことができた。
その後、ベトナム戦争の特需により、日本は1960年代から1970年代の高度経済成長を達成することができた。日本の高度経済成長期は、1955年から1972年までであり、ベトナム戦争の1955から1975年と、みごとなまでに一致している。

ベトナム戦争以降、アメリカの主戦場は、アジアから南米・中東・東欧に移動した。その結果、日本への経済的恩恵は少なくなった。だが、戦争を仕掛ける側のアメリカ自身は、依然として戦争による恩恵をたくさん享受してきた。

常に戦争をすることで、アメリカ経済は常に成長をすることができた。

Youtubeのお金に関する知識動画では、アメリカのインデックス投資信託をおすすめしてくる。アメリカは、過去○○年間、経済成長期を続けてきました。だから、これからも成長を継続していくはずです。少なくとも僕はそう考えています!と。

アメリカが経済成長期をずっと続けることができたのは、軍産複合体が定期的に戦争を引き起こしてくれたからだ。

2000年代のテロとの戦争までは、アメリカ軍が直接介入することが多かった。だが、テロとの戦争では、占領したイラクやアフガニスタンでの統治がうまくいかなかった。アメリカ軍は、敵の軍事拠点を潰すのは得意だが、ゲリラ戦は苦手である。イラク・アフガニスタンで、懲りたアメリカ軍は、戦争への直接介入から手を引くようになった。

それでも、アメリカの軍産複合体は、仕事を確保する必要がある。

ロシア・ウクライナ戦争や、イスラエル・パレスチナ紛争を、誰がどうやって仕掛けたかわからない。だが、アメリカの軍産複合体の売り上げが急上昇したことは間違いない。
アメリカ軍産複合体にとって、アメリカが直接戦争しなくても、戦争をしている第三者に武器を売ることができれば、十分儲かるのである。

だから、アメリカの軍産複合体にとって、日本の防衛予算の急拡大は大きなチャンスである。

もし仮に、日本のタンカーが謎の武装組織に攻撃され、日本の食料・エネルギー供給が脅かされ、日本国民がパニックに陥ったとしたら、日本は軍事予算を一気に増加させるだろう。

もちろん、日本政府はアメリカ軍に、日本のサプライチェーンを守るように要請するだろう。

だが、アメリカは焦らす。アメリカからしてみれば、日米同盟により日本の領海・領土・領空を守る義務はあっても、日本のサプライチェーンすべてを守る義務はないと。
日本の補給線は、日本の自衛隊が責任をもって守るべきだ、と正論を言ってくるだろう。ただし、自衛隊が補給線を守るために必要な武器は、アメリカが提供してさしあげますよ。と

アメリカの利益から考えて、最良のシナリオは、補給線が脅かされた日本国民が、パニックに陥って防衛予算の急拡大させ、アメリカの武器を大量に購入してくれることだ。

アメリカの軍産複合体は、ニッコリ笑顔である。

想定されるシナリオ

2030年、日本のタンカーが中国の工作員とみられる武装集団から攻撃され、相次いで撃沈された。ホルムズ海峡で、インド洋で、そして、日本の港で、携帯ミサイルにより数隻のタンカーが沈められた。

中国当局は、知らぬ・存ぜぬを貫いたものの、SNSに目撃者による動画が投稿され、中国人民解放軍の工作であることが、公然の秘密となった。

タンカーの保険料が高騰し、一時的に石油の輸入がストップしてしまった。日本政府による石油備蓄は存在したものの、輸入停止により、直ちにガソリン価格は1l 400円まで高騰し、地方にすむ住民の生活を圧迫した。また、物流コストが上昇したことにより、インフレが進行し、イオンの値札は毎日のように改訂される状態となった。

この状況に対して、日本の自衛隊は、アメリカ軍と協力して、すべての輸送船に護衛をつけることを決定した。また、日本の船会社も日本政府の保証のもと、平常通りの運航を再開することを決定した。輸送船の船員はヒーローとして、称えられることになった。

生活が苦しくなった日本人のヘイトは、中国人に向かい、日本にすむ中国の富裕層が襲撃される事件が相次いで発生した。

自衛隊の防衛予算は、激増し、航空母艦やイージス艦、F35B 戦闘機、トマホーク巡航ミサイルなどが新たに配備された。

中国海軍と日本の海上自衛隊のにらみ合いは激しさを増した。自衛隊は、これまで中国漁船に対して放水や警告を行っていたが、問答無用で撃沈するようになった。自衛隊が中国の漁船を沈める事件が何件も発生した。

中国側は、口では猛抗議するものの、大日本帝国の再来におびえきっていた。現場には、日本との衝突は絶対に避けるように厳命が通達されていた。だが、反日教育を受けて育った現場の将校たちは、調子に乗っている自衛隊へのヘイトと、衝突回避を厳命する上層部への不信感を強めていた。

あとは、アメリカ軍産複合体がどこまで空腹か次第である。


まとめ


日本の軍事大国化により利益を得るのは、アメリカの軍産複合体。

ロシア・ウクライナ戦争、イスラエル・パレスチナ紛争に加えて、中国・日本 海上紛争を、軍産複合体が引き起こすシナリオが想定される。

日本は、軍事大国化するまでは、アメリカ軍産複合体のシナリオ通り動くしかない。そもそも、自分たちの食料とエネルギーをアメリカに全依存していたこれまでの状態が異常だったのだ。

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