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神戸市がやるべきは、子育て支援なのか?

神戸市が、高校生の定期券を無料化するらしい。

神戸市は新年度から、市内在住で市内の公私立高校に通う生徒の通学定期券代を無料化する。市によると、高校生の定期代無料化は全国初。人口が150万人を割り込んだ神戸市には、私立高校を含む授業料の完全無償化を進める大阪府に子育て世帯が流出するのを防ぐ狙いがある。

出生数の低下で全国的に人口が減少する中、子供の医療・保育費の無償化や出産に関する給付金など、子育て世帯を呼び込む施策を導入する自治体は増えている。

神戸市と隣接する兵庫県明石市では、泉房穂前市長が23年の就任後、子育てに関する「5つの無料化」をアピール。子育て世帯などの転入が相次ぎ、人口が10年で1万人以上増えた。福岡市も再開発事業の促進や子育て支援の充実もあり、若い世代が流入。人口増加数は全国首位となっている。


ため息が出る。

大阪、明石、神戸と、みなどれだけ子育て世帯が好きなんだ・・・・

神戸市では、人口流出が続いている。
人口減少率ワースト1など、Youtube でも取り上げられているくらい有名な話である。


だが、少し待ってほしい。
人口が減ったから、高校生の定期券に補助金を出すというのは、正しい政策なんだろうか?

神戸市に住むと子育ての補助金があるから、神戸に引っ越そう!
とはならんやろ。

そもそも、子育て世帯は、自治体からの補助金を当てにして、引っ越しをするほど、そこまで困窮しているのだろうか?

そして、子育て補助金のばらまき合戦は、結局のところふるさと納税のような、非効率な制度につながるのではないか?

(たくさんのカネが動くから、新たな利権を生み出すことにはなるかもしれないが…)


子育て世帯を大量に集めたニュータウン事業

神戸には、大量の子育て世帯を誘致した歴史がある。
山を削って、海を埋め立てて街を作った。神戸が輝いていた時代の、新しい街である。


1980年から1990年にかけて、作られたニュータウンは、2020年になると当たり前だが、40年前に作られたオールドダウンになった。いまは、高齢化した街になっている。

子育て世帯を誘致するのは、その時はいい。
若くて活気あふれる夫婦と、その子供が来るのだ。
素晴らしい、テレビでみるような、理想的な光景を得ることができる。

でも、子育て世帯も30年もたてば、子育て世帯でなくなる。

今の、ニュータウンの問題は、急速な高齢化による空き家の増加とコミュニティの弱体化である。

子育て世帯の誘致で発生した問題は、子育て世帯の誘致で解決できるのか?

ニュータウン事業の問題点

ニュータウンの問題は、
その街が最初から、捨てられることが前提になっているという点
ある種、使い捨ての街になっている。

イメージとしては、こうだ。

子育て世帯を入居させる。
子供たちは、大学や就職を機に、親元を離れて独立する。

子供が独立した後の両親は、老後をニュータウンの家で過ごして、、、、いずれ死ぬ。

そして空き家だけが残る。

子供たちが都会に行って戻ってこない、
立ち位置が、田舎の農村地帯と同じになっている。

これでは、せっかく新しい街を作っても1世代しか使えない。

この問題に対して、発生した空き家に新たな子育て世帯を入居させようと、神戸市はがんばっているのである。


子育て世帯の誘致は未来の爆弾?

子供にお金をぶちこむ明石市の政策が、ポジティブに評価されている。

明石には、新快速で大阪まで直通で40分という神戸のニュータウンにはない強みがあるにしても、子育支援により、人口増加率日本一を達成したと、やたらめったら褒められている。

その子育て世帯の誘致は、神戸の西神ニュータウン事業と同じことをやってるだけである。

補助金をぶち込んで、周辺自治体から子育て世帯を奪っても、子育て世帯の数自体が減っているし、明石だって大都市ではない。

あくまで、大阪に近いベッドタウン、住宅地としての役割しかない。

今の、誘致した子育て世帯は、
子育て世帯の子供たちは、都会、東京や大阪や名古屋に出ていって戻ってこない。

無限に駅周辺にマンションを建てられるわけでもなし、いいところの土地には、すでに高齢者となった、もと子育て世帯の方たちが居座っている。

強制的に立ち退かせるわけにもいくまい。

神戸市のニュータウンが、高齢化に苦しむ”もとニュータウン”でしかなくなったように、30年後、40年後に、明石市は高齢化したマンション群を抱えることになる。

子育て世帯の誘致が引き起こす深刻な問題

子育て世帯を誘致すると、街が浄化されてしまう。
夜遅くまで営業する飲食店やHなお店など、子供に悪影響を及ぼすとされる設備が、軒並み消される。

学校と病院とスーパーと、そしておびただしい数の住宅。

子育て世帯に最適化してしまうがゆえに、
子育て世帯以外が住めなくなってしまう。

神戸市が子育て世帯を誘致したがるのも、納得である。
神戸市が開発したニュータウンは、子育て世帯以外の人間が住めない街になってしまっているのだから。

ニュータウンは、子育て世帯に最適化したがために、街の多様性を失うのだ。

そりゃ、
会社に行って帰ってくる。
学校に行って帰ってくる。
休みの日は、子供と遊ぶだけなら問題ない。

その代わり、子育て世帯以外には、正直、住みづらい街ができあがる。

倫理的な正しさが優先されることで、多様性が失われ、最終的に、街の魅力が低下してしまう。



西神ニュータウンに存在する1万人の不可視化された住民たち

西神ニュータウンの人口は10万人もいる。
その人口の大半は1980年から1990年に子育て世帯として、ニュータウンに誘致されてきた人たちだろう。

少し古い記事だが、ざっくり15~20%が親と同居する未婚者、いわゆる子供部屋おじさん、子供部屋おばさんであるらしい。

西神ニュータウンは、人口10万人
子育て世帯を集めた街なのだから、その半分の5万人が、かつての親世代と仮定しよう。
子供世代は5万人だ。
その子供世代の15%~20%が子供部屋おじさん、おばさんになったとしたら?
西神ニュータウンには、ざっと1万人の子供部屋おじさんと子供部屋おばさんが存在することになる。

ちょっとした田舎町の人口くらいは、不可視化された存在がいるのである。

子供部屋おじさんは、倫理的には”悪”とされ、存在しないかのように扱われている。

明文化した法律では、あきらかに何も悪いことをしていないのに、なぜか”悪” ”忌むべき存在” とされてしまっている。

当然のことながら、神戸市や神戸市と仲良しの団体からは無視されている。

だがしかし、彼らも立派な神戸市民である。
かつては、かわいい子供だったのだ。
神戸の街に賑わいをもたらしてくれた、正しく歓迎される存在だった。

年を取って、かわいくなくなったら ”いないもの”扱いするのは、いかがなものか?

神戸市がやるべきは、
独身の子供部屋おじさん、子供部屋おばさんのためのコミュニティづくりである。

結婚できなくても安心して住み続けられる街づくりを


理想的には、子育て世帯がかかえる、子供たちは、新たな親になって、新しい子育て世帯になることが期待される。

ところがどっこい、この国の生涯未婚率は右肩上がりだ。
生涯未婚率の推移から、3人に1人は生涯未婚
1/3という離婚率も考慮すれば、この国の独身率は50%という結果になる。

ざっくり、今の子育て世帯の子供が将来の子育て世帯になれる確率は、なんと50%程度しかない。

いまの、子育て世帯が抱えるかわいい子供も、未来の子供部屋おじさん、子供部屋おばさんになる可能性は、高い。

どうせなら、独身子供部屋おじさん、おばさんにやさしい街を作ってほしい。

子供部屋おじさん、おばさんをはじめとした独身者にやさしい街は、倫理的に正しい立場の子育て世帯のご両親には不愉快かもしれない。
あいつらは、われわれの目の届かない、どこか遠くに追いやるべきだと。

とはいえ、現実問題、子供部屋おじさん、おばさんに優しい街は、子育て世帯の利益にもなるのだ。

今の子育て世帯の、子供たちの50%は独身者になる。

家は、安い買い物ではない。
郊外のベッドタウンといえども、高い買い物である。
一生に一度の買い物だ。

自分たちの子供が、一生独身で過ごすならば、その子供たちの資産になるような家を購入することは、大きなメリットになる。

自分の子供が、一生独身なのだったら、高価な家をそのまま引き継いであげたら、子供の立場としては大いに助かる。

もちろん、子供たちは成功して次の子育て世帯になることが望ましい。
それでも、統計的にその確率は思っているほど高くない。

独身者にやさしい街づくりは、最終的には子育て世帯のメリットにもつながる。




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