白鴉例会と松江と『吟醸掌篇』と『図書新聞』とクライストとハイムと文学フリマと学美と

 24日、白鴉例会。3作。オンライン。3作ともとくに言いたかったことはおなじであった。次号に作品を載せる人の確認。
 24日は松江から帰ったところだった。もうすこしゆっくりしたかったものの、前日、ちょうど歯医者の受付時間の終了後に歯の詰め物が取れるという。そして予約が24日の15時からしか取れず。数年ぶりの松江および宍道湖は最高であったが、体調のせいか、行きの特急列車で酔う。それが祟って翌日も体調不良。出かけるのは諦めて執筆に集中する。夕方ごろになんとか仕上げて松江城の松江水燈路へ。途中、冬營舎の前を通る。前に訪ねたとき、いい雰囲気だった。今回は寄れなくて残念。「冬營」は冬ごもりという意味だけれど、べつに冬も営業している。
 そしてチェックアウト直前に、捨てていい原稿と捨ててはいけない原稿とを一部取り違えるという惨劇に、例会終了後の何時間後かまで気づかずにいたのであった。恐ろしい。
 松江に移住とか気軽に言ってたけど、ふと映画館を検索したら、うん、まあ、旅行でいいかなってなった。

『図書新聞』2022年9月24日号の、岡和田晃氏による文芸時評「〈世界内戦〉下の文芸時評 第91回」に拙作「鳥の餌を盗む」が取りあげられました。限られた枠の中、2行ほどで『吟醸掌篇』を取りあげていただいているのですが、そのうちほぼ1行が私の作品であるという。米田綱路『脱ニッポン記――反照する精神のトポス』を読んで以来、『図書新聞』に取りあげられるのが目標のひとつにあって(米田氏は一時期『図書新聞』編集長を務め(2000-2003年)、現在はスタッフライター)、2011年2014年の同人誌評以来はいつか文芸時評にと考えていたのだが、8年目にしてそれが叶った。これはもう、私は作家デビューしたと言っても過言ではないはずなので、とくになにか目立った賞を獲ったという形跡もないのにそこそこ小説家として名をあげているという、個人的にかっこいと思う枠(例として山田稔)に私は近づきつつあるということになる、と言ってもこれまた過言ではあるまい。想像以上に苦労しそうな枠だけど。素人自認のままプロに混じって取りあげられるという点で、これは伝説の『文藝』2017年秋号の奇跡の再来と言っていいのでは。
 岡和田氏から、カフカとクライストも援用してもうちょっと書きたかったと言っていただいて光栄しきりでございます。そういえばクライスト全集はいくらだっけと思ったら、高え。また、書かれている中では、「『他者』への『距離』を批評的に担保し、あるいは詰めていく技巧」というあたり、近作で私が常に苦心しつづけているあたりなので、拾っていただいて感謝感謝です。
 ということで、まだこの「鳥の餌を盗む」を読んでいなくて気になっているかたは『吟醸掌篇』vol.4をぜひ。小説の書き手で私以外はみんなちゃんと新人文学賞なりを獲って、腕前は保証されておりますよ。アマゾンでご購入いただけます。アマゾンが苦手なかたも、一部書店で購入可能です。
 それにしてもこれで『白鴉』の次号、レビュー頁に『図書新聞』の同人誌評と文芸時評(「呪われて死ね」にちらっと触れられているので可能)、両方からの抜粋が載るという珍事が起きるということに。

 25日は大阪某所で文学フリマだった。行こうかどうかだいぶ迷っていたのだけれど、図書館の本を返しに行かねばならないことに気づいて、ならばということで、返しに行ったついでに向かった。と言ってもこのときだいぶ人避けモードに入っていたので、ベルンハルト作品紹介文を寄稿させていただいた『批評誌Silence』を販売しているアイスコーヒーと、『白鴉』の表紙でお世話になっている古井フラ氏のブースへ向かうことにだけ集中し、ほかの知人の皆さんにはたいへん失礼な態度をとってしまったかと思います。すみませんでした。蓋を開けてみれば『吟醸掌篇』で翻訳を載せられたまえだようこ氏がブースを出していたらしかったり、twitterつながりのかたが遠方から(なにかのついでではあるだろうけど)わざわざ来ていただいて『批評誌Silence』を買っていただいたりと、もうちょっと真剣に文フリに取り組むべきだったなと。森元暢之氏にも久しぶりにお会いして、はじめてスターバックスへ入ることに。私のごとき卑しい人間は入れさせてもらえないと聞いていたのでどうしようかと思ったが、無事に入れました。よかった。
 ちなみに『批評誌Silence』に寄稿した文章は、最初じつはハイムの「狂人」を紹介しようかと一瞬考えたのですが、さすがに毒が強すぎんなと思ってやめときました(ちゃんとやろうと思ったらそれこそ資料集めとか大変そうだし)。次のような一節が出てきます。

かれは一小節ずつを明瞭に大声で歌った。そのたびに、シンバルをうちならす奏者のように、この小さな頭(通りすがりの子供の頭:ブログ筆者注)をうちあわせた。
 讃美歌がおわったとき、かれはこのつぶれた二つの頭蓋を手からおとした。すっかり有頂天になって、ふたつの死体のまわりでおどりはねはじめた。するとそこについた血がまるで火の粉のようにまわりにとびちった。

川村二郎 編『ドイツ短篇24』(集英社)

 この前の場面でもうちょっとえげつない描写が入るのですが、自主規制しておきます。気になる人は図書館で探そう。ルリユール叢書で出てほしいですね、ゲオルク・ハイム

 ここまで書いてようやく、この記事が9月に入って初だと気づいた。まじか。ということはもちろん、10日に兵庫県立美術館 原田の森ギャラリーで行なわれた学美神戸展に行ったことは書いていないはずで、今年も行ってきました。毎年刺激をいただいてありがとうございます。こんどの白鴉33号には刺激を受けた産物のひとつが載るかと思います。今年の神戸展は抽象画に面白いものが多かった気がする。大阪展も楽しみ。


さいきん読み終えた本
中村光夫『風俗小説論』(講談社文芸文庫)
後藤明生『小説──いかに読み、いかに書くか』(講談社現代新書)

さいきん観た映画
『キングメーカー──大統領を作った男』(ビョン・ソンヒョン)シネマート心斎橋
『グリーンバレット』(阪元裕吾)シネマート心斎橋
『NOPE』(ジョーダン・ピール)MOVIX尼崎
『LOVE LIFE』(深田晃司)シネ・リーブル神戸
『3つの鍵』(ナンニ・モレッティ)シネ・リーブル梅田

さいきん行った展覧会
「在日朝鮮学生美術展 神戸展」(兵庫県立美術館 原田の森ギャラリー)


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