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プリンスリーグ参入戦 ルーテル学院vsサガン鳥栖U18セカンド

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午前11時。

気温は7℃。

雨は傘を叩き降り続けている。

外でサッカーを見ている天気ではない。が、今から始まる試合はプリンスリーグ参入戦。各県のリーグ戦を勝利した8チームが4チームずつ2組のトーナメントに分かれ、勝ち抜いた2チームがプリンスリーグ昇格の権利を手にする。

長崎会場では国見が鹿児島城西を3-2で破り、古豪復活の狼煙を上げた。

福岡会場で残りひとつの椅子を争うのは、ルーテル学院高校とサガン鳥栖U18セカンド。

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ルーテル学院高校(熊本県熊本市)

熊本県リーグ1位 14勝0分4敗 勝点42得失+38 

参入戦1回戦 vs大分高校1-0

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選手権は準決勝で大津高校に敗退するも、熊本国府、秀岳館、大津高校セカンドとの四つ巴の優勝争いを制し、プリンスリーグ2部が廃止されて以来6年ぶりのプリンス復帰へ王手をかける。


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サガン鳥栖U18セカンド

佐賀県リーグ1位 17勝1分0敗 勝点52得失+92 

参入戦1回戦 vs東福岡セカンド 2-0

佐賀県リーグでは圧倒的な存在も、プリンス所属のAチームがプレミアリーグ昇格を2年連続で阻まれ、プリンス参入の挑戦権を得られなかったが、今年ついにAチームがプレミア昇格。セカンドチームにも昇格のチャンスが巡ってきた。

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Aチームのリーグ戦出場が多い選手はセカンドチームの試合には出場できない規定があるが、Aチームのリーグ戦の出場時間が少ない選手はセカンドチームの試合にも出場可能、ということで、1週間前のプレミアリーグ参入戦に続いて、J1リーグ戦で23試合に出場しているU22日本代表候補松岡大起とU17日本代表候補田中禅を起用。必勝態勢で決戦に臨む。

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両チームの登録外メンバーが声援を送る中、キックオフの笛が鳴る。

序盤にペースを掴んだのは鳥栖。最前線の田中がボールを収めて中央、サイドへとボールを回して優位に立ち、前半5分、右サイド深くからのグラウンダーのクロスを大外から走り込んだ選手がきっちりと合わせ、先制に成功する。

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出鼻を挫かれたルーテルだが、4-4-2のラインをコンパクトに保ち鳥栖のビルドアップに圧力をかける。雨に濡れたピッチでもGKからのビルドアップを進める鳥栖はボランチの松岡が降りてプレスを回避。松岡からサイドへ正確な配球を見せてボールを掌握するが、サイドからの攻撃はルーテルの粘り強い守備に遭い決定機を作れない。

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序盤こそ機能していた田中に入るボールには、ルーテルのCB梅木が激しいマークを披露してことごとく先に触り思うように起点を作らせず。主将の「絶対にやらせない」という気迫が伝わる守備で試合は拮抗した展開のまま経過していく。

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ボールを握られながらも粘り強く守るルーテルはチャンスと見るや左サイドMF興梠のドリブルやDFラインの裏を狙うボールでチャンスを狙う。1年生FW坂本、鳥栖U15出身の2年生坂口にチャンスが訪れるが決めきることはできず。強い雨でスリッピーなピッチでもつなぐサッカーを実行する鳥栖が主導権を保持しながらも前半は鳥栖の1点リードで終了。

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正午を回っても雨の止む気配もなく、体温を維持することだけでも厳しく感じる後半が始まる。

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前半同様、梅木と田中のバトルは激しく、鳥栖は中央からの攻め手に制限をかけられる。鳥栖は松岡を中心にルーテルのプレスを掻い潜るが決定機を生み出せず、奪ったボールを速攻につなげたいルーテルだが鳥栖のプレスの網にかかり地上戦ではなかなかチャンスを生み出せない時間が続く。

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自然と両チームの活路はロングスローとセットプレーに。ゴール前からカウンターを目指し、それを阻止するために選手たちは全速力で駆けていく。

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後半20分過ぎ。右サイドからのCKに頭を合わせたのは18番の後藤。しかしボールは真下に跳ねてしまいクロスバーの上に。ルーテルは大きなチャンスを逃す。

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時間が経過するごとに安全にクリアするボールが増えていく。鳥栖も必死のプレーでルーテルの攻撃の芽を摘み取っていく。

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ルーテルは3年生の瀬戸、堀田、星野と180cm級の選手を次々と投入して高さに活路を求める。雨は降り続けている。両チームの選手たちは懸命に走り、声を掛け合い、競り合い、ゴールを求めて戦う。選手たちの姿に引き込まれ、時間はあっという間に過ぎていった。

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ルーテルの右サイドバック谷口が何度ロングスローを放り込んでも、再三のセットプレーを獲得しても、昇格が目前に迫った鳥栖も必死のプレーで跳ね返す。3分のアディショナルタイムに入ると、敵陣でのボールキープに両チームの選手が入り乱れ、選手交代に時間をかけ、必死に勝利を目指す。

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終了の笛が鳴り、ピッチサイドでチャントを歌い続けていたメンバー外の選手たちがピッチになだれ込む。

ずっと見ていたい激戦はサガン鳥栖U18セカンドが1-0でルーテル学院高校を振り切り、プリンスリーグへの昇格を決めた。

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本当に寒かった。

でもこの試合を観戦できて本当に良かったと思う。

試合開始前は、「鳥栖は松岡と田中を出してきてズルい」という思いが正直あった。しかし梅木と田中のバトルはこの先何度でも見たくなるほどの見応えで、この試合においては明らかに格が違っていた松岡のプレーは、見れて良かったと素直に思えた。ルーテルのファンとして勝利を願いながら観戦していたが、両チームの戦いを見ていると試合前に考えていたことはどうでも良くなって、ただひたすら勝利を目指して戦う22人の選手たちを心から称えたいと感じた。

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高校生のサッカーは全国高校サッカー選手権がすべてではない。選手が成長していく過程に、リーグ戦という日常が大きく寄与しているのだな、と改めて感じた。もっと多くの人に注目してもらえれば、より選手たちは成長していくに違いない。





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