怖い話⑥『ニュートロン』その① (アメリカ編)
30年ほど前、アメリカの工場に出張した時の話です。
出向者、現地のマネージャーと話していると、GE(ゼネラル・エレクトロニック)の話題になりました。
その当時、ジャックウェルチ氏が社長でした。
現地のマネージャーの言葉が、印象的でした。
「彼は、評判が悪い。ニュートロンだ」
ニュートロン?
私: 「ニュートロン?」
聞きなれない言葉に戸惑いました。
出向者: 「中性子爆弾のことだよ」
私: 「中性子爆弾て、どういう意味ですか?」
出向者: 「『建物を壊さず、人間だけ殺す』という意味だよ」
GE(ゼネラル・エレクトロニック)は、エジソンが設立したアメリカを代表する超一流企業。それがゆるぎない評価でした。
ニュートロンという言葉に驚きました。
しかし、『人だけ殺す』というところが、今ひとつピンときませんでした。
ジャックウェルチ氏の評価
当時は、「ジャックウェルチ氏は、20世紀最高の経営者」として賞賛されていました。MBAの授業で、必ず課題に出されるお手本の経営手法でした。
主な成果は、以下の通りです。
業績の向上
ウェルチがCEOを務めていた期間(1981年から2001年)、GEの株価は年間約21%上昇し、企業価値は140億ドルから6000億ドルに達し、GEは「世界で最も価値ある企業」と評価されました。
M&Aで製造業から金融業へ
約1000件の買収を行い、非関連事業を含む多様なポートフォリオを形成しました。この戦略により、GEはキャッシュフローを生み出す企業へと成長し、特に金融部門が利益の大部分を占めるようになりました。
選択と集中
全事業を各カテゴリーで1位か2位にすることを目指し、その達成が難しい場合には事業を売却するという厳しい方針を採用しました。このアプローチにより、GEは市場シェアを獲得し続けました。
人事制度
ウェルチは社員をトップ20%、ミドル70%、ボトム10%にランク付けしました。ボトム10%に入った社員は解雇されるため、常に高いパフォーマンスが求められました。
品質管理手法
シックスシグマを導入し、業務効率を大幅に改善しました。
最近の評価
ところが最近、GEの業績がパッとしません。
それに伴いジャックウェルチ氏の評価は、最近落ちる一方です。
30年前に聞いた、『ニュートロン』を改めて思い起こしました。
最近の評判を代表するのが、この書籍です。
内容をまとめると次のようになります。
評価が、こんなに変わるとは。。。思いもよりませんでした。
不正会計
ウェルチ氏の時代におけるGEの業績は、会計トリックに依存していたと指摘されています。これにより、短期的な利益を追求するあまり、長期的な持続可能性が犠牲になりました。
企業文化への影響
ウェルチ氏の厳格な業績評価システムは、従業員に過度のプレッシャーを与え、企業文化に悪影響を及ぼしたとされています。特に、異論を許さない独裁的な体制が問題視されています。
後継者への影響
ウェルチ氏からジェフ・イメルト氏へのCEO交代後、GEの企業価値が低下したことも批判されています。これは、ウェルチ氏の経営スタイルが後継者にとって負担となったことを示唆しています。
※ 後継者を選ぶのに、かなりの時間と労力をかけたと雑誌で読みました。
結果がこれでは、つらすぎます。
GEの家電部門への思い
家電会社に勤めていました。若い時は、正にGEの家電部門がお手本でした。
第二次世界大戦中に、既に洗濯機、エアコン、掃除機、冷蔵庫。。。を開発済でした。
GEのOEM(設計・生産は日本メーカGEブランドで売ってもらう)を担当したことがあります。
設計の基本、品質評価方法は、大変勉強になりました。
家電部門は、不採算部門ということで、多くの従業員がレイオフされました。正に、『ニュートロン』。
家電部門が、中国メーカーに売却される話を聞いたときには、本当に寂しい気持ちになりました。
続き
ジャックウェルチ氏の話は、実はこれで終わりません。
次回、『ニュートロン』その② (日本編)。
我が身に降りかかった体験をご紹介します。
参考
1)検索
検索に、Genspark AIとPerplexityを使いました。
2)デジタルな振る舞い株式会社
AIの勉強にお薦めです。