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THE BIG GIG(KAI BAND at ZONE)

暑かった。とにかく暑かったという思い出しかない。
1983年8月7日、高校の同級生5人と、新宿西口に向かっていた。甲斐バンドのビックイベント”THE BIG GIG”に参戦するためだ。

会場は、都有5号地(通称”ゾーン(ZONE)”)。いまグロテスクな都庁が立っている場所は、当時、そう呼ばれていた。高層ビルに囲まれた”空き地”だったのである。

会場内にドリンク売り場はあった。が、すぐに売り切れた。一度入場したら外には出れないという規約は変更され、多くの人が飲み物を求めて西新宿の街に出た。僕らもそうだった。当時はいまほどコンビニがたくさんあったわけではない。セブンイレブンは本当にセブンイレブン(AM7:00オープン、PM11:00クローズ)という店舗が多かった時代である。西新宿にもそれほどコンビニはなかった。自動販売機を探してさまよい歩いた。新宿西口の自販機はすべて空になったという伝説が生まれた。(あながち伝説でもないらしい。補充がまったく追いつかなかったという話は後日聞いた。)

すべての曲に思い出はあるけれど、特に印象的だった曲がある。オープニングの『ブライトンロック』、中盤戦で突然演奏された(としか形容できない)『東京の一夜』、エンディングの『百万$ナイト』。

『東京の一夜』、このときがライブで聴くのは初めてだった。当時水戸に住んでいた僕らにとって、東京は手が届きそうで届かない、憧れの場所だった。出てこうよと思えばこれるはずなのになかなか機会はない。
♪東京の一夜は この街で過ごす1年のよう♪
僕らにとってこの日は本当に「東京の一夜」だった。

そして『百万$ナイト』。この曲では必ずミラーボールを使う。そしてこの日は甲斐バンド史上、最も美しいミラーボールだった。

ステージ越しに見えるのは新宿住友ビル(三角ビル)、右手は京王プラザホテル、背後に新宿NSビル、そのすべてにミラーボールが反射していた。大都会のど真ん中に突然浮かび上がったドリームランド。
この時に匹敵するミラーボールは、29年後の薬師寺まで待たなければならない。

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