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この世につまらない本など存在しない

先日、東工大教授の柳瀬博一さんと対談する機会に恵まれた。柳瀬さんは元日経BPの名編集者でもあり、『国道16号線』などのヒット作の著者でもある。

対談のテーマは、今度柳瀬さんにやってもらう「執筆企画講座」についてだ。

つまり、講座の受講者全員に、自分が書こうと思っている本の企画書を作ってもらい、磨き上げていくプログラムだ。

元敏腕編集者の柳瀬さんから直接フィードバックをもらえるという貴重な機会でもあるが、本質はそこではないと思っている。
大事なことは、受講者同士の相互フィードバックにある。

それは、他人が出してきたつまらん企画をどれだけ面白がることができるのかということだ。

そう、企画書の大半はつまらない。
そもそも何が伝えたいのかわからないような企画とは程遠いレベルだったり、どこかで聞いたことのある一般論の二番煎じしかないと言っても過言ではない。

その根本的な理由は、自分が「自分の面白さ」を全く認識していないことにある。
それを理解していないから、フォーカスポイントが定まらず、一般論に逃げてしまうのだ。

しかし、誰もが「自分の人生なんかに面白さはない」と思うだろう。
確かにキャリアをパッと聞いただけで「何それ、面白い!」と言える人は稀だ。
大抵の人は遠目に眺める限りは似たり寄ったりの平凡キャリアなのだ。

そんな平凡ピープルが無防備に自分語りの本の企画書を作れば、それは痛いものしか出てこないだろう。
繰り返すが、大事なのはここからだ。

他人が持ってきた凡百の企画書の中に面白さを見出すのだ。
それは、おそらく相手が認識していないところに眠っている。だから文字に表れてない可能性が高い。
しかし、相手が書き残したいくつかの断片から、「オモロ!」と思えるその人なりのユニークネスを探し出すのだ。

抽象化すれば全ての人はほとんど同じ。
しかし、具体化すれば全ての人は全く異なる。

だから、その人の話を過度に抽象化せず、具体的に掘っていくことが重要になる。具体化していけば必ず一つや二つ、「なんでそんなことしたの?オモロ!」という点が見つかるのが人間なのだ。

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