冬を感じたい夜
仕事で久々にてんてこまいになり、珍しくちょっとだけいらいらしながら退勤。
乗りたかったバスはバス停にたどり着く前に通りすぎてしまったし、コンビニで唐揚げでも買ってやろうかとおもったけどその気持ちはねじ伏せて、次のバスを待つ。今日の札幌はなんだかちゃんと冬で、携帯をいじる指先がかじかむ。いつもの倍速で冷えていく。バス時刻を4分程経過したところでようやく見えたバス。知ってるんだ、この時間のこのバスは大体混み合ってること。そして今日も例外なく、やっぱり。
バスに揺られ40分、降りた先の空気はじわじわと冬。乾燥してぴかぴかして、きりっとする。足元の雪はさらさらで、歩くのには困らない高さの積もりかた。
ふわふわと雪を蹴りながら帰路をゆく。
再び仕事のことを考えていたけれど、風のない冬の空気の中ではさっきのいらいらなんてどこかにいってしまって、イヤホンからはいつも通りにフィッシュマンズが流れてくるし、いっぱいいっぱいで沸いていたあたまはすっかり跡形もなくなっていた。そうなんだよね。冬の帰り道はだいたいそう。つめたい空気が全部どこかへ連れていく。そんなことを思っているうちにあと5分くらいで家、というところ、このあたりからなんだよな、顔がぴりぴりしてくるのは。いたくてさむくてぴりぴりして、ああ冬、これが冬、と何度経験してもおもうこの冬。冷たい空気が肺と肌をさしてくる。ほっぺたがぴりぴりするその冬がわたしのすきな冬なんだよな。そんなことをひたすら考えているうちに家について、そうしたら洗面所の電気がついていて、ああ誰かが風呂に入ってるな、と思いながら玄関を開ける。はあ、と思わずため息がもれる。ほっぺたを真っ赤にして、今日もいちにちの終わり。冬はもうすこし、まだかなり、続いていく。