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新竹客運が公路客運路線から完全撤退へ

今回は台湾のバス事業者「新竹客運」に関する話題をお届けしたいと思う。


・新竹客運の置かれる厳しい路線概況

新竹客運は台湾の北西部~中部の地域、桃園市、新竹市、新竹縣、苗栗縣といった地域に路線網を展開しているバス事業者である。
広域を運行する路線が比較的多く、主に縣市を跨ぐ「公路客運」と呼ばれる立ち位置の路線が多いのが同社の特徴と言える。
公路客運路線は交通部公路總局が管轄し、民間の事業者が路線の運営許可を受けて運行するもので、国による多少の補填を受けることはできるが、自治体等による満足な補助が受けられない路線がほとんどである。
桃園市内で完結する路線も長らく公路客運路線として扱われていたが、桃園市が全面的に運行に関与し、十分な補助を行うことを目的に2016年12月1日付で全ての路線が桃園市管轄の桃園市公車路線へ編入されている。
一方、新竹地域の路線については、新竹市と新竹縣を跨ぐ路線がほとんどであり、公路客運路線と位置づけられている路線ばかりである。

上記のような状況から、新竹客運では多くの路線が公路客運路線として運行をされてきており、長年に渡り経営を圧迫する状況が続いていたようだ。

新竹客運 新竹總站に掲示された路線図
新竹から關西、龍潭、楊梅等、縣市をまたぐルートが多く見受けられる
竹東地域にある新竹客運の下公館站(竹東總站)。
ここと新竹駅前を結ぶ公路客運路線は同社の主力路線のひとつだ。

・2023年末には桃園市公車路線から全面撤退

厳しい経営状況に置かれていた新竹客運は広域路線を中心に徐々に合理化を進めていたが、2023年にとても大きな出来事があった。
2023年12月31日をもって新竹客運は全ての桃園市公車路線から撤退し、亞通客運へ路線を移管することを発表したのだ。
桃園市公車路線は桃園市が十分な支援を行って運行している路線であり、安定した路線運営が約束されているはずだが、これらの安定した路線から撤退するというのだから、新竹客運の体力が衰えていることを感じざるを得ない出来事だったと思う。

2023年12月にこれらの路線を実際に視察してきたが、2019年の新型コロナウイルス流行前と比較して本数が大幅に減らされており、桃園市内の運行拠点のひとつであった中壢南站は無人化されているなど、大幅な合理化が行われていることを見ることができ、その厳しい状況を目の当たりにした。

2023年12月に訪問した際の新竹客運中壢南站。
バスの運行は行われていたものの、停まっている車両は少なく係員の配置もなくなった。
この場所は亞通客運への移管後に駐車場にされており、バスの発着はなくなっている。
中壢南站発の時刻表は1枚にまとめられるほどに本数が激減。
以前は10分ヘッドくらいで走る時間も多かった楊梅行きは1時間運行がない時間帯もあった。

・2024年10月をもって全ての公路客運路線から撤退へ

その後も新竹客運の路線撤退は続いた。
2024年8月末には竹東站が運行する公路客運路線7路線から新竹客運が撤退し、別の2事業者(亦捷科際、捷乘客運)へ運行が移管された。
この際に竹東站が新竹客運の手を離れ、他の事業者の管理に変わっている。
続いて9月16日には苗栗地区の全ての路線から撤退。こちらも亦捷科際へ路線が引き継がれている。

そして新竹客運のホームページに2024年11月から、残す新竹、竹東(下公館站)、關西地区の路線運営を他の事業者へ移管する旨の発表が掲載された。

新竹客運発表のニュースリリースへはこちらからリンクしています

これによって2024年10月末をもって、新竹客運は全ての公路客運路線から撤退することになった。
新竹客運の発表によると、少子化や感染症の影響、自家用車などの増加といった環境の変化によって長期的な損失に直面していたこと、営業許可の期限が切れた後も路線の運行が途切れないように努力を続けたが、経営環境が厳しさを増していたことを公表しており、同社の公路客運路線の維持がとても厳しいものになっていたことが感じられる文面になっている。

新竹市、新竹縣で最も大きなバス事業者がこのような形で地域の足である公路客運の維持が困難となり、撤退するという出来事は、重く受け止めなければならないだろう。

主力路線であった下公館站~新竹間の路線からも撤退。
新竹總站に掲示された時刻表(2023年12月現在)。
ほとんどの路線で減便が進み、時刻表はスカスカになってしまった。
一部路線はオレンジ色の紙に暫定時刻表を掲示する形へ変更している。

・11月以降の新竹縣市の路線運行はどうなる?

気になる2024年11月1日以降の新竹縣市の路線運行であるが、こちらも苗栗縣の路線を引き受けた亦捷科際などが路線を引き継ぐ予定となっており、各地の地域の足は今後も維持される。
また、新竹客運も公路客運路線からは手を引く一方、新竹市内を運行する新竹市公車の13路線、そして新竹と台北、台中を結ぶ國道客運(高速バス)路線については運行を継続することを発表しており、これらの路線は今後も変わりなく運行が続けられるものと思われる。

新竹縣市や苗栗縣の路線運営は今後も厳しい状況が続くと推測されるが、学生やお年寄りなどにとってはとても大切な足となっている。
特に新竹地区は大学がとても多く、どの路線も学生にとっては欠かすことのできない存在だ。今後も政府や自治体、事業者などが一丸となって安定した運営環境を実現することを切に願いたい。

新竹駅~竹中間を運行する藍1路は引き続き新竹客運が運行を続ける。
苗栗地区の路線を長年運行し、新竹にも乗り入れてくる苗栗客運のバス。
苗栗客運の路線は変わりなく運行されるが、厳しい環境には変わりないと思われる。


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