見出し画像

【文アル】タイアップ・『文豪・谷崎潤一郎―美を求めて』

 今年の10月19日から群馬県の土屋文明記念文学館で行われている企画展示『文豪・谷崎潤一郎―美を求めて』に行ってきました。
 この企画展示でも『文豪とアルケミスト』とタイアップして、文豪たちのパネルが飾られています。

記念館・正面入り口。

 こちらの記念館には一度行ったことがありますが、記念館に保管されている魅力的な展示の品々はもちろん、県境をまたぐ広大な山々を眺められる上に、隣接しているカフェのご飯が実に美味しい場所です。 
 今回は、記念館と企画展示の内容を小話程度に記事にまとめました。

 なお、土屋文明記念館は前橋駅から車で30分かかります。自家用車や免許証をお持ちの人は車で行くことを激しく推奨します。
 もしバスで来館される際は、前橋駅から土屋文明記念館行きのバスがありますので、そちらを利用してください。



そもそも土屋文明ってだれ?

 今回文アルとタイアップしてくださった記念館の名前になっている土屋文明とは一体だれでしょう。

 土屋文明(つちや・ぶんめい)は、アララギ派歌人として活躍していた文学者です。
 彼は学生の頃、第三次新思潮の作家のひとりとして活動していました。当時共に活動していた作家は、文アルでおなじみの芥川龍之介・菊池寛などです。

 そして、文明は伊藤左千夫に師事し、短歌結社「アララギ」に参加後、昭和初期には斎藤茂吉の後継者として雑誌『アララギ』を任されました。
 文明は、茂吉と同じく『万葉集』を研究していました。彼は短歌を後世にも受け継がれるように短歌の価値を守った文学者としての功績を残し、96歳の時に文化勲章を受章しました。
 この短歌の守り人を、彼の出身地である群馬県の人々は称えて、前橋市に土屋文明記念館を建てました。

 土屋文明記念館には、彼の遺愛品や著作の展示は勿論、様々な歌人たちの展示品も飾られています。上記に書かれた文豪たちはもちろん、文明は正岡子規を慕っていたので、子規に関わる展示品もあります。

 中には大衆小説家として名をはせた菊池寛や直樹三十五など、短歌の印象があまりない文豪の歌も飾られています。

 また記念館のオリジナル展示「短歌の世界」コーナーは、『万葉集』から近代以降までの36名の歌人の人形がならんでいます。個人的に、こちらの展示が記念館の中で一番魅力がありましたので、紹介させていただきました。

 文明さんがアララギ派の歌人と知って、もしまた文アルとタイアップすることがあったら、是非とも伊藤左千夫のことサッチーと茂吉さん、そして(折口)信夫さんたちに来てほしいですね。

記念館オリジナルグッズが、たくさんあって目移りしちゃいます。

『文豪・谷崎潤一郎―美を求めて』

 こちらの展示は、今回文アルとタイアップで選ばれた文豪4名と谷崎潤一郎にまつわるエピソードや著作を展示してあります。

 他にも潤一郎が訳した『源氏物語』や晩年の作品『鍵』など、とことん美に追求した彼の文学作品が並べられています。

 個人的に、潤一郎の手紙が芸術品と言えるほどに美しかったので、もしこの企画展示を観に行くようであれば、是非とも彼の手紙も見て欲しいです。松子夫人宛ての手紙が印象的でした。(文アルの谷崎が、潜書から帰還した際に言う「御寮人様」とは彼女の呼び名です。)

企画展示室前の垂れ幕。
こちらは撮影・SNS投稿の許可をいただきました。
企画展示室で谷崎が特務司書の皆さんをお待ちしています。
私は初めて買った彼の本とツーショットしました。

 ちなみにタイアップ期間中にもらえるしおりですが、こちらは配布式ではなく、以下の記念館のイベントに参加すると入手できます。

 ・企画展示の文豪クイズ
 ・等身大パネルを使ったクイズ
 ・記念館のX(旧Twitter)アカウントに
投稿されたポストをリスポスする

 文アルのイラストを使ったしおりは全2種類です。
 また、記念館オリジナルの源氏かるたの絵はがきも上記のイベントに参加するともらえます。

しおりの台詞は、企画展示で紹介された内容の一部です。
記念館側が用意してくださったクイズシート。
こちらにも『刺青』にいた胡蝶が舞っています。

企画展示に行く前に

 今回の企画展示は、平凡社の『別冊太陽 谷崎潤一郎 私はきつと、えらい芸術を作つてみせる』を事前に読んでおくと、展示の品々や内容をより楽しめます。
 こちらの書籍と展示の内容がほぼ同じだったので、潤一郎について一通り本を読んで知ってから、展示を観ますと本とはまた違い、実物を観た時の印象が全く違います。是非とも、こちらの本を読んでみてください。

 書籍の監修をされた千葉俊二さんは、田端書店の『新美南吉アンソロジー』や『谷崎潤一郎アンソロジー』の編集者で、近代日本文学を中心に文学研究されています。文学に慣れていない人にも分かりやすく説明しているので、彼の名前が載っている近代日本文学の文学研究書は安心して読めますよ。

 こちらの本は企画展示期間中、記念館内で販売されていますので、展示の内容を気に入ったのであれば、思い出の品として持ち帰ってみるのも良いでしょう。

企画展示用の書籍コーナー。

おまけ・BROWN WORKS COFFEE

 こちらはおまけです。

 BROWN WORKS COFFEEは、土屋文明記念館に隣接しているレストランです。
 こちらのレストランは、挽きたてのコーヒーを味わえますし、オムライスが美味しいところです。
 どこを食べてもふわふわ触感の卵を味わえるオムライスは、季節によって種類が変わるようです。私はクリスマス限定のものをいただきました。卵に包まれた濃厚なチーズと肉厚なホウレンソウに、やや甘みのあるミニトマト、そしてハンバーグのような噛み応えのあるひき肉の入ったケチャップライスが、実に美味しかったです。

 他にも、個人的に谷崎カラーっぽいケーキ、レッドベルベットケーキもいただきました。見た目の華やかな赤い色とは対称に味は素朴で、ケーキの背に付けられたアイシングのバタークリームをつけて甘みを楽しむデザートでした。
 
 なおこちらのカフェは、今年の10月から土日祝だけの営業となりました。利用されたい人は、是非とも土日祝に行ってカフェでくつろいでください。

クリスマス限定のオムライス。
自分で卵の包みを割って食べたので、
とても至高なひと時をすごせました。
コーヒーとベルベットケーキ。
お皿も良い感じに谷崎の髪色のような灰色で、
谷崎イメージのデザートを頂いた気分を味わえました。

更におまけ・胡蝶本

 今回の企画展示のモチーフとして蝶が至るところに舞っていますが、こちらは潤一郎の作品『刺青』の表紙が元になっています。

 この『刺青』は籾山書店から発行された本で、橋口五葉が装丁を担当しました。橋口五葉は森鴎外や泉鏡花など、文アルにも登場している文豪たちの本の装丁をしました。『刺青』を含めた、蝶が特徴的な装丁本は愛読家からは「胡蝶本」と呼ばれています。

 この「胡蝶本」についてまとめてくださったブログがありましたので、他の「胡蝶本」が気になる人は、是非リンク先のブログを見てください。


 ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

いいなと思ったら応援しよう!