連作:その破壊的なつめたさ

腰骨のあたりをそっとつきぬけて夜が終わった音がしていた


指先に浚われ臍が泣く これは胎生の悲しさだねかあさん


僕を刺す君の突端、がさついた樹皮、琥珀、蝿、君を飲む僕


最中そのへそが波打つとき、きみの眼玉の中でぼくはくらげに


悔いているぼくの粘膜 夜は更けてゆく(その破壊的なつめたさ)


標本をつくっていますほらこれがぼくの愛したきみのまなざし


君と靴濡らしたことが悲しくて今日よ歴史に残るなかれと


書斎にてぼくをからかう微風、そのまだ寂しさを知らない温度

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