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水野はつね
2019年9月24日 23:37
泳げもしないのに、海に行きたいと、そう彼にねだった。本当のところ、(なんて気障な物言いだと自分でも恥ずかしくなるけれど、)もうこの世界のどこにもいたくなかった。辛うじて、陸と海の境目になら居場所のようなものがあるような気がして、やっとのことでここまで逃げてきたのだ。夏になったって海水浴場になることもない、地味でさびれた砂浜は、なんだかすごく私にお似合いな気がした。もっとも、潮はすっかり満ち