EU「グリーンウォッシング指令」と高まる水素の重要性
グリーンウォッシングとは
みなさんこんにちは。
今回は今話題のEUグリーンウォッシング指令を取り上げます。
「グリーンウォッシング」とは一般に実態を伴わない環境訴求のことです。例えば斎藤幸平さんは、季節ごとにデザインを変えて登場する「エコ」バックになんの環境的意味があるのか、と「エコ」の濫用に警句を発しています。実際、エコバッグを頻繁に買い替えるなら、レジ袋を使ったほうが環境に優しい可能性は十分あります。
「ウォッシング」という言葉。実態を隠蔽するという意味で様々な分野で使われるようになってきました。「スポーツウォッシング」という言葉もあります。ウィキペデイアによれば「個人、団体、国家がスポーツを利用して、自身のイメージの向上や問題の隠蔽を測る行為」とされています。
グリーンウォッシング指令
さて、ここまでは一般的なお話なのですが、法律でグリーンウォッシングを禁止してしまったのがEUです。「グリーンウォッシング指令」。実はこの呼称は通称で、かつ新しい法律でもありません、EUには商品の不当表示から消費者を守る法律が既にあり、今回の「グリーンウォッシング指令」はその不当表示規制法の改正法の通称です。法改正による「不当表示」の範囲が広がりに環境アピールが含まれたというわけです。
なお、あくまで消費者を欺くような商品表示に関する規制ですから、組織としての企業が環境努力を語る際には適用されません。ただ、安心してよいかというと、実はもう一つ”Green Claim Directive“というグリーンウォッシング指令と双子の指令案が議会と理事会で審議されています。この「グリーンクレイム指令」は完全な新法で対象として商品だけではなく組織も入っておりますので、こちらの指令にも注意を要します。
さて、「グリーンウォッシング指令」に戻りましょう。禁止される「グリーンウォッシング」は広範囲ですが、中でも最大の注目点は二酸化炭素排出量を「計算上」減らす工夫である「オフセット」をしている企業は自社の商品やサービスにカーボンフリーその他のグリーンアピールをしてはいけないという規定です。
多くの会社で自社のエネルギー消費構造には大きく手をつけず、例えば海外植林してその分増える二酸化炭素吸収量を自社の排出量から差し引く、また遠く離れた再エネ発電から再エネ証書を買ってきて排出量と相殺するということが行われています。これらが典型的な「オフセット」です。
オフセットを行うこと自体が禁止されたわけではありません。しかし、EU内ではこれを製品のアピールに使うことが禁止されました。ちなみに「オフセット」への風当たりは近年非常に強まりつつあり、GHGプロトコールという国際ルールの変更も検討されています。またの機会に最新情報をお届けします
水素は二酸化炭素排出量を削減する切り札
さて、ここで水素です。自前の太陽光発電や風力発電で自社のエネルギー需要をまかなうには限りがあります。一方、どの会社の排出量削減にコミットしている。結果、「オフセット」に頼ることになります。
そこで水素です。水素は「オフセット」に頼らず二酸化炭素排出量を削減する切り札となります。今回の改正EU指令はそのことが商品の宣伝広告にまでプラスの影響を及ぼすことを明確にした点で画期的です。来たるオフセットルールの厳格化もあいまって水素利用を大いに促進させると考えられます。
グローバルなルールメーキングのトレンドを読み、その中に自社の水素戦略を位置付けてみることを強くお勧めしたいと思います。世の中は急速に変化しています。
それではまた来月。
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