ちよのほし
なにもなかったんだ、ほんとう
満員電車の中でもう合えない人の顔を重ねる
そらがぴかぴかして、ほら、ぴかぴかして、終わらない朝焼けに真冬なのにあせをぐっしょりかいてわたしの首は斜め45度になる。
カンパネラ、どこまでも一緒にいられればよかった。再建を壊し続けてひとはいつだって失ってしまう。喪失に慣れてさよならも亡霊もこわくない。どこにもいかないって約束したお母さんのゆりかごを壊されて床にどすりと転がったまま、失うくらいなら最初から求めなければいいと悟った。ぼくの名前を呼ぶ時はときはやさしく舌で包むように呼んで、魂を呼んで、どこへいたって届くように、貪欲に口先から足の指の隙間から空間というすきまを埋め尽くすように、そんなふうに約束したのに君は勝手にどこかへいなくなって手紙も電話も届かなくなって住んでいるところも逃げた先も勤め先も分からなくなって、ふとすると頭上で棺桶の中横たわっていて、さみしくなんてない、きみはたぶん朝焼けに負けない星になった。