自分の面白いを貫け!!!
どうも、同人音声で「ざぁ~こ❤」とか言われると普通にムカついてしまう男ゴリスナー・オルタです。
今回は7/30日に公開した話題のクレしん映画を観てきたのでその感想です。一応ジャンルとしてミステリーものなので、そのあたりに関するネタバレはなしで書いてますが、物語や作品のテーマといった部分にはゴリゴリ触れていきます。
オタクとして長いこと生活していると「他人の評判やオススメの映画」ってあまり手を出さなくなっていきますよね。自分が初めてアニメやVtuberにハマった時の事を思い返すと、まだ自分の中にその良し悪しを判断する基準が無いので、とにかく片っ端から深夜アニメを録画してみたり、YouTubeのオススメ動画を飛びまくって浴びるようにコンテンツを摂取したりしてました。
そうやって大量のコンテンツに浸かっている内に、だんだんと自分の価値基準が出来てきて「これは面白い」「これは面白くない」という判断が出来るようになり、やがて自分の中の価値観で「面白そう」だと思ったものだけを選んでいくようになります。
なんといっても世界はコンテンツ飽和時代。この世の創作物は人間が一生の内に鑑賞出来る量をとっくに超えていて、自らの人生をより充実したものにするためには、自分に合わないコンテンツに触れている時間がもったいないので、出来るだけ自分に合ったものだけを観たいという生存戦略はオタクとして当然のものでしょう。
ただ、僕はひねくれ人間なのでそうやって自分の好きなコンテンツだけを観ていると「この展開前のアニメでも見たな~」とか「あ~こういうタイプのキャラクターね」とか思ったりする瞬間が来ちゃって、結局その好きだったコンテンツにすら飽きてしまったりするんですよね。もちろんそういうメタ的な見方でコンテンツを楽しむっていうのも全然アリだと思うんですが、そういう作品に限って自分が観るより前に他人の評価がインターネットに出回っていると(例えそれが物語の核心的なネタバレを含んでいなかったとしても)、急に観る気がおきなくなったりして、オタクの面倒くさいところってこういうところですよね。
普段の食事と一緒で結局はバランスの問題なのですが、僕は「他人の評価より前に観たいと思う作品」と、「他人の評価を見てから観たい作品」というのを使い分けて生活しています。要は自分の好きなコンテンツに飽きないためにも「たまには他人のオススメに手を出してみてもイイじゃない」って事ですね。まあ僕は逆張りとカリギュラ効果のハーフなので、その他人の評価が「クソ面白かった」の時の観るモチベーションが50%くらいだとすると、「クソつまらなかった。映画館のトイレで90分うんこしてた方が楽しい」だと90%くらいになったりするのですが。クソ映画って突き抜けると逆に面白いですよね。
ということで今日も朝起きてからいつものようにダラダラとTwitterを眺めていたら「今年のクレしん映画が凄い!」というツイートを2件、それぞれ別の人が呟いているのを見かけました。
もともとクレしん映画は結構好きで、一昨年の新婚旅行ハリケーンなんかも映画館に観に行ってたりしたので、今回もちょくちょく気になってはいたのですが、わざわざ休日の貴重な行動力ゲージと2000円を消費してまで観に行くほどかと言われるとそうでもなくて、まあどうせ後からアマプラとかで観れるしな~とか考えながらスルーしかけていました。どうでもいいのですが日本は世界で一番「映画が高い国」だそうです。まあアメリカとかじゃ映画1本観るのに18ドルもかけないよなと思います。そのくせ映画館の主な収益ってポップコーンとかドリンクの飲食物だったり、物販コーナーで売ってるやけに高いペンやメモ帳なんかのグッズだったりするんだから日本は本当に映像コンテンツに厳しいですよね。
まあそんな話は置いといて、そのツイートを見かけてそんなおもろいんかと思ったのでクレしん映画でパブサを掛けてみると、「思ってたよりガチのミステリーで感心した」や「大人帝国越えの最高傑作」など、かなりの評判だったので、そんだけ言うなら観たろうやないかいと思い急遽映画館に。今回はもともと気になってたのもあって運良く50%のニブイチに勝てました。
このポスター、何回見てもパッと見「メスガキ」という文字列が並んでいるように見えるんですけど俺の目って異端ですか?
さて毎回前置きが長すぎて本題に入るまでに300年かかってますが、皆さんは魔法使いなのでその指先を下から上にスッ……とフリックするだけで以下の感想まで一気に辿り着くことが出来ます。
まず全体的な感想ですが「超面白かった」というのが正直な感想です。エンタメとしての楽しさやミステリーとして謎を解く快感、そして感動的なストーリーから得られる充実感、人が映画を観るときに面白いと感じる要素はいくつかあると思いますが、その全てが詰まっていて、なおかつそれらがバラバラにならずに「クレしん映画」として一つにまとまっている印象でした。
この予告編を見てもらえると分かりますが、今回は風間くんを中心としたカスカべ防衛隊のメンバーたちの「友情」をテーマにしています。クレヨンしんちゃんといえば物語内の時間がループするいわゆる「サザエさん方式」な世界観を採っている作品ですが、そんなしんちゃんたちが小学校に体験入学することで、しんちゃんたちにも小学生になったら別々の学校に進んだり、そこで新しい友達が出来たりというイベントが待ち受けていて、今のカスカベ防衛隊で生まれた友情は、長い人生の中でほんの一瞬しかない時間であり「この友情にもいつか終わりが来る」というクレしん作品の中でも割とセンシティブな題材が取り上げられています。
実際にカスカベ防衛隊のメンバーは学園の中でそれぞれ異なった「青春」を楽しんでいたりするんですが、このそれぞれの青春のカタチというのも今回の重要なテーマの一つでしたね。
「青春とは何か」という問いに対して、夢や恋愛や友情といったものだけでなく、失敗や後悔、コンプレックスといったネガティブな面も描き出して、その上で全てを肯定しているのがとてもよかったです。
青春に正しい”答え”なんてないという部分が今回の”謎解き”というテーマとのダブルミーニングになっていた、という意味で「青春(ミステリー)の答えは、ひとつじゃない」というこのポスターのコピーが、映画を見た後で分かる一番の種明かしだったことに驚きました。メスガキの空目も視線誘導だったんじゃないかと思えてきます。
そういう映画以外の部分で「なるほど!」と思える部分も含めて、今回一番の目玉要素であるミステリーの部分も、前評判通りかなり本格的な仕上がりになっていました。
物語の序盤で事件に関わる人物が提示され、かつ作品内で明かされた要素だけで事件の犯人を予測できる、というのが推理ものの基本かと思いますが、この映画はそれに加えて読者(この場合は視聴者)だけに仕掛けられたミスリードがいくつもあり、「ここでこういうシーンを挟むってことは……?」というメタ読みをすればするほど犯人を予測するのが難しく、大人でも楽しめる子ども向けというより、ミステリーの部分に関しては大人ほど楽しめる作品なんじゃないかなと思いました。むしろ子どもの方がシンプルに犯人を予測出来そうですね。そういう点では、作品内でしんちゃんが犯人を言い当てたのはむしろリアリティがあるんじゃないでしょうか。
そんな感じでミステリーとしても、青春映画としても、もちろんクレしんっぽくギャグ映画としても、すべての部分で大満足な内容でした。これが「大人帝国越え」かどうかは観る人によるかと思いますが、自分の中では間違いなく今まで観たクレしん映画の中で「一番レベルが高い」作品だと思いました。
というかそもそも大人帝国って確かにめちゃくちゃ感動するし面白いんですけど、ちょっと持ち上げられすぎじゃないですか?
さっきも言ったように人によってその映画を面白いと判断する基準って色々あると思ってて、笑えるから面白いのか、感動するから面白いのか、色んな基準から「面白い」が生まれていいと思うんですよね。
そういう意味でいったら大人帝国ってクレしん映画のメインターゲットである子どもじゃなくて、大人が感動するって基準だけで持ち上げられてる作品っぽさが強くて、僕としてはその一強感が何だかなぁ~という感情があります。インターネットでの発言力は大人の方が強いし、大人でクレしんのギャグを純粋に楽しめる人もあまりいないと思うのでそういう媒体のフィルターはあると思いますが。
ギャグが好きならヤキニクロードを挙げてもいいし、ヒロインの可愛さが全てなら夕日のカスカべボーイズを挙げてもいい、そういうインターネットでもいいじゃない。
そんな様々な角度からの「面白い」に全て高得点で総合1位を叩き出した作品「映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園」を皆さんも観に行ってみてはどうでしょうか。ちなみに僕としては普通に感動部門だけでも大人帝国を越えたと思いました。
おまけですが僕のオススメクレしん映画も一本載せておくのでよければどうぞ。クレしん映画の中で特殊なヒロインが敵キャラなのも良いのですが、何よりヒロインのサキがしんちゃんに心を開くきっかけになる「私たち、悪いコ仲間だね......」というセリフに、この映画の良さが詰まっています。
「こいつよりはマシだろう」とか、「あいつも自分と大して変わらないしな」みたいな、そういう人間のネガティブな部分で繋がり合う関係性の歪み、そして美しさ。オタクな皆さんほど面白い映画だと思うのでこちらも時間があれば観てみてください。たぶんネトフリとかで観れると思います。