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母の教えと洗濯機の音:3分間の歯磨き物語

 僕は小学生のころ、仰天母から
「歯は3分間磨きなさい」
 
と言われました。
 どうやって3分間を計ったものか。

 福岡県大野城市曙町の県庁アパートに住んでいた我が家の洗面台の横にあった、二槽式洗濯機が目に留まりました。

 そこで、脱水機のタイマーを「3分」に合わせ、止まるまで磨き続けていました。

 しかしです。
 家族にしてみれば、使ってもいないのに毎朝毎晩のように、洗濯機が決まった時間にガラガラと音がする。
 それも僕が歯を磨いている時間に限って。

 気づいた母はある日「なんで洗濯機が回りようと?」と聞いてきました。

 そこで僕は堂々と
 「3分間を計っとる」
 と答えました。

 母はため息をつき
 「分かった。私が悪かった。これからは大体でいいけんね」
 とのたまいました。

 何から何まできちんとしていないと気が収まらない性分は、実は今でも変わっていません。
 還暦が見えてきた今になり、少しは融通の利く人間になるのもいいかなと思うのです。


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