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鯨飲馬食~クジラにのみ込まれた船乗りの数奇な運命と、福岡県の学校給食~

 以前にご紹介した「世界の円盤ミステリー」のシリーズ「世界怪奇スリラー全集」(秋田書店)の4巻は
「世界の謎と恐怖」
であります。
 真樹日佐夫氏著。
 初版は1968年(昭43)4月15日で、手元にあるのは1973年(昭48)3月20日発行の16版です。

幼い不肖を震え上がらせた、恐怖の一冊

「円盤―」に負けず劣らず、目次には扇情的な見出しが並びます。 

 死を呼ぶ青いダイヤ 持ち主を殺しまくる恐怖のダイヤモンド。
 死に神の谷 ツタンカーメンの呪い。
 恐怖の透明怪盗 姿の見えない盗賊にロンドンは大騒ぎ。
 悪魔のおどる島 毛むくじゃらの魔人と探検家の対決。
 謎の人間火事 脱獄囚が突然、火だるまに。
 自殺ホテルの秘密 宿泊客が次々と自殺する、魔の3階14号室。
 アマゾンの魔王 巨大な蛇を焼き殺せ。
 奇跡の予言王 死んだはずの予言者が生き返って…。
 スポーツスリラー 運動に関する不思議な逸話集。
 テレビ人間クォーリー 遠く離れた殺人を見た男。
 夜あるく死体 古代ローマの殉教者の死体が歩く!
 おどる棺おけ 大西洋バルバドスの棺おけ島で何かが…?

 中身を確かめずに簡単に要約できます。不肖がこの半世紀以上、この本を繰り返し読んできたことの証拠です。
 どうです、読みたくなるような話ばかりでしょう!

さて、各章の合間には、うれしいことに短いコラムまであります。中でも不肖が好きなのはこの話です。

世界の怪事件(3)
マルセイユの白い怪人

 フランス・マルセイユの港に、船員相手の〝エトワール〟という酒場がある。
 その酒場に、ある夜、ひとりの怪人があらわれた。
 まさしく、それは怪人であった。横じまの半そでシャツに船員ズボンと、身なりはふつうのマドロス・スタイルなのだが、ぶきみなのは、その顔。そして、シャツからでた両うでだった。
 いったいどうしたわけなのか、その男の顔と手は、まるで透明人間のように白くすきとおっているのだ。ちょっと見ただけでは、首と胴体がなく、胴体と足だけがあるいているようで……。
 酒場にいあわせた客たちは、その男を見てふるえあがった。だれかが電話で知らせたらしく、まもなく警官がかけつけて、その男をつかまえた。
 警察の取り調べに、男は意外な事実を語った。それによると、男はジャン・フェローという捕鯨船の乗組員で、巨鯨の腹の中に生きたままのみこまれたという。そして、クジラの体内でとかされかかったとき、運よく潮ふきによって外にのがれることができたのだという。皮膚が透明にちかくなったのは、クジラの胃液に色素をとかされてしまったためなのだ。
 一九六二年七月のことだが、それより数年まえにも、バートレイという船乗りが一度クジラにのみこまれてたすかっている。 

(原文ママ)
なんで警察に捕まらないかんのか!

 以来、給食で「鯨の竜田揚げ」が出るたびに、顔が白くなるような気がしたものです。

 しかし、鯨に飲み込まれ真っ白にされた挙げ句、久々に陸に上がって一杯やっていただけなのに警察に捕まった、かわいそうなジャン・フェローさん。1962年7月というから、昭和37年の話。阪神vs.東映の日本シリーズの年(関係ないか)。
 ご存命なら、捕鯨反対の活動家を、どんな思いで見るのでしょう。

最近は見なくなりましたね

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