古い10円玉と券売機の攻防!阪神の駅で起きた、昭和の硬貨が引き起こした一幕
あるとき阪神なんば線で西九条まで出た不肖は、JR環状線に乗り換えようと自動券売機に120円を入れました。
ところが。最後の10円玉を入れてもチャリーンと戻ってくる。何度やっても入らない。15時34分の外回りに乗らないといけないのに、32分ごろから10回くらい同じことを繰り返しました。
1000円札も使えたし、財布には100円玉もあった。時間もない。
なのにこういうとき変にムキになってしまうのは、我ながら偏屈だとは思います。
「悪いのは券売機か10円玉であって、僕ではない」
と考えながら、はた目には滑稽な行為を続けました。そう、「いつでも自分が正しい」と考えるのが僕なのです(笑)。結局は近づいてくる電車の音に負け、1000円札で福島までの切符を買いました。
「古い10円玉だったに違いない」と素早く知略を働かせた僕は(仕事では、なぜかこう速くは頭が回らない)車内でさっきの硬貨を財布から取り出しました。正解でした。「昭和二十九年」製でありました。
1954年。「五十五年体制」で知られる、保守合同の1年前。中日vs西鉄の日本シリーズで、日本一は中日。そこまでは知っているのですが、それ以上の詳しいことは分からない。そこで今、ウィキペディアで調べたところ
「第五福竜丸がビキニ環礁で死の灰を浴びる」
「映画『ゴジラ』『七人の侍』公開」
といった年であることが分かりました。
激動の戦後を駆け抜け、平成の御代までその任を果たしていた10円玉。
いったいどういった人たちの財布を渡り歩いたのでしょう。
そんなことを考えるうちに、電車に遅れそうになった怒りも薄れてゆくのでした。